仲間入り
すっごく間が空いてごめんなさい……オリジナル難しくて二次創作で気晴らしやってるとか言えない!
「えぇと……そろそろお話聞いてくれるかなぁー?」
長髪の美人さんが恐る恐るといった具合に尋ねる。
ひと段落ついた四人がようやくそちらへ意識を向けた。
「あぁそういえばいたね。忘れてたぜ、勿論態とな!」
「影というか実態が薄いからホログラム的な何かかと思ってたが、意思があるのか」
「……お、お化けじゃないんだよね?」
「ミゾレ、貴女それでずっと直視しないようにしてたのね」
「だ、だってぇー」
和気藹々とした雰囲気のメンバーだったが、部長であるマコトがコホンと咳払いをしたとたんに静まる。
何時までもこうしているわけにもいかないのだ。事情を知っているなら教えてもらわないといけない。
「で、お前が俺達を喚んだのか?」
「そうだよ。私はオルンという。キミたちの素質を見込んで、この世界に召喚させてもらった」
「素質、ねぇ。オレっちたちは極々普通の高校生だぜ? あ、こっちには学校とかないとわかんねぇかな」
「こちらの世界にも学校はあるよ。ミリアニアという場所に初等部、大体10歳辺りから入れる学園がね。キミたちだと、中等部の高学年か、高等部の入学生あたりかな?」
「ふーん。つまり私たちが教わる側だって分かってて喚んだわけね」
素質があるだけで、何もわからない只の一般人を召喚したという自覚があると明言してしまった美人さんに冷たい視線が刺さる。思わず萎縮しつつも、否定はしなかった。
「まぁ、話を聞いて欲しい。この世界の現状と、これから訪れるであろう終末に関して」
そう言って、美人さんはこの世界について語りだした。
○
「ん……?」
後頭部が柔らかく暖かなモノを感じたミマは、ゆっくり目を覚ました。
目を開くと何やらご立派な二つのお山が光景を阻んで……。
「ふぁ!?」
「あ、起きましたか?」
「え、あ、ご、ごめんなさい」
「?」
自分が蒼い髪の女性に膝枕をされていると気付き、思わず飛び起きてしまったミマ。
起きた際にお山を触れてしまったことを謝るが、なにやら疑問顔されてしまう。
「……あ、そっか」
今女?だったと思い出し、同性なら多少触られても気にしなくても可笑しくない。というか、慌ててる自分がおかしい。
「えっと、ありがとうございます」
「いえいえ」
取りあえず何やら気を失っていた自分を解放してくれたその人に感謝を述べつつ、辺りを見渡す。
ミマがいたのは森だったが、今は平原にいた。遠くに森林が見えるから、きっとあそこがさっきまでいた場所だろう。
ミマたちから少し離れた場所には、二人の男女がキャンプのように簡易テントを張っている最中だった。
男の方には見覚えがある。確か力加減を間違えて突進してしまった人だ。
「……あれ」
ふと、そこら辺の石ころをにぎにぎしてみるが、さっきまでと違い形を保っている。
力を込めていくと、パキパキと音がして最後には砕け散った。
(か、加減が出来てる?! なんで!?)
さっき飛び起きた時に彼女を吹き飛ばさなかったのを思い出したからやってみたのだが、何故かさっきまで出来なかった力加減が出来ていた。
『それは私が説明してあげよう!』
(あ、アルマ。なにかしたの?)
『その通り。ミマが寝てる間に、無意識と意識の融合である「夢」に干渉してね。間接的に脳に働きかけて、ある程度自制できるようにしてみたんだよ』
「そっか、ありがと」
「え?」
「あ、いやなんでもないです!」
アルマに対して呟いたが、聞こえてしまったらしく急いで取り繕った。
傍からすると独り言多発になってしまうから、彼女と話すときは注意しなければと言い聞かせた。
「お、目が覚めたんだな」
「気分はどうですか?」
「……悪い様ならこの男を殴るのがお勧め。スカッとしますよ?」
「おいちみっこ、お前いい加減にしろよ」
「なんですか、やるんなら相手になりますよ変態」
なにやら金髪のイケメンと紫の髪にエルフ耳という珍しい外見の幼女が喧嘩をしだした。
金、蒼、紫と何やら色とりどりだ。
「こらこら二人とも?この子が驚いてます、止めなさい」
蒼い髪の女性のおっとりとした静止の言葉を素直に聞いたあたり、どうやらただのじゃれ合いだったようだ。
彼らの空気に乗れずに只見ているのが驚いたと思われたらしいが、ミマにとって周りの空気を気にせずマイペースに行動するのは当たり前のことなのだが、今は置いておこう。
「とりあえず、自己紹介しましょうか。私はラスア・ミトレス。治癒術師をやっているの、よろしくね」
膝枕をしてくれた女性がそう言って杖を見せてくれた。
幼女さんも持っているが、あれほど大きくはなく少し長めの指さし棒程度の物だ。
「俺はアシュリ・ヴィジュン。剣士だ。魔法も多少使える、よろしくな」
金髪イケメンことアシュリが持っているのは華やかさ皆無の無骨な剣だが、柄辺りに丸い水晶が付けられていた。綺麗なものだが、無骨な分些か違和感がある。
「アタシはリリーン・ロシアス。見ての通り魔導師よ」
確かに、とんがり帽子に大きな杖。何かの紋章が縫い付けられた長いローブ、まさに魔法使いという感じだ。
杖ではなく胸を張ってローブを見せたあたり、あの紋章は何かしらの意味があるのかもしれない。勿論、ミマに分かるはずもなく取りあえず頷いておく。
「えっと……ミマ・ディラ・ククリです」
「ディラ?」
「ミドルネームですかね、古い家柄の者とかが使っています」
「別に家柄とかではないんですけど、まぁ、そんな感じです」
ミマが名でククリが前世の家名、ディラは現世で転生した際に受け継いだ繋がりというか、名残のような物なのだが、反応から察するにミドルネームが普及していないのだろう。
あの山に居たような危なっかしい猛獣?が居るような世界だし、人の命も軽そうだから名前被りとかあまり気にしないのかもしれない。
「みどるねーむ、ねぇ。貴女何処から来たの?あの山辺りから吹き飛んできたみたいだけど」
「それは、すいません力加減を間違えてしまって……どこからと言われると、うーん」
元々と言えば異世界、とはいえこの世界からと考えると山頂からなのだが、如何せんこの世界の常識が分からない今あの山がどんなところなのか把握できていない。
もし、「山頂から来ましたー」とぶっちゃけて変な誤解が生まれるのは厄介だ。
あの化物の仲間とか思われて戦闘とか、ミマにはハードルが高かった。
「えっと、転移に巻き込まれたみたいで……此処がどこなのかも」
「なるほど」
「……嘘はついてないようですね」
パーティメンバー二人の視線を受けたリリーンがそう言った。どうやら嘘発見器的な何かの魔法を発動されていたらしい。よく見れば杖の先についている大きな水晶が薄く光を帯びている。
「此処は五大国の中心に位置するドラニア森林よ。私たちは此処から一番近い都市国家ドラゴギニアから依頼を受けて来た冒険者なの」
「どらにあ森林……」
五大国の中心にある、ということは此処は少なくとも五大国とやらに住んでいる者は知らないわけがないわけで……かといってここで知ったかをしても無駄なようで。
「すいません、しらないです」
ミマは大人しく白旗上げることにしたのだった。
「ドラニア森林を知らない?都市国家ドラゴギニアも?」
「はい。五大国もよく分からないです」
「……マジ?」
「……マジみたい」
リリーンに視線が集まり、そのリリーンも杖の水晶を凝視した後頷いた。
やはり異常なことらしく、皆の真剣な眼差しがミマに集中した。
「貴女一体何処から来たの?五大国の外から転移されたってこと?」
「いやいやいや、ありえねぇだろ」
「? えっと、どうしてありえないんですか?」
五大国家がどの程度の規模かは知らないが、世界を支配しているわけでもあるまいしあり得ないなんてことは無いと思い訊くと、ピンと指を指されて説明された。
「いいか、まず五大国。都市国家ドラゴニア、魔法帝国ミリアニア、商業大国グルレニア、武装国家ミンニア、そしてフェリアニアがあってだな」
そう言って丁寧にもアシュリは地面に図を描きだしてくれた。
若干のずれはあるが、ほぼほぼ五芒星状に国がある場所、丸が描かれ、中心部はドラニア森林という文字が大きな丸で囲まれる。
商業大国と呼ばれた場所は海に面しており、他は周辺陸地だ。
「んで、グルレニアはずーっと海が続いてる。孤島がチラホラあるが、今のところ人が住んでるって話は聞いたことが無い。で、他の国周辺にだって村があるはずない」
「どうして……?」
「どうしてって、んなの魔物がうろついてっからだよ。村なんてあっという間に潰されちまう」
当たり前のように告げられた言葉に思わず絶句する。
どうやら思っていた以上にこの世界は危ないらしい。
「だから大概の人間は五大国に住んでるし、五大国から先を探索しても大きな都市すら聞いたことが無い。それどころか、一番内陸側にある武装国家ミンニアから先にいっても、魔物の巣窟ばかりだ。そっから先にあるっていうデカい廃城には魔王が居るっていう噂付だな」
「ま、魔王?物語みたいな?」
「あーどっちかというと魔物の親玉っていうのが常識だが、一部信仰では君臨者とか制定者とかって言われてるな。居るかどうかは分からん。そこに棲み付いてるモンスターがやたら強いせいで、どの国の連中もそこから先に行けたことが無いからな」
「へ、へぇー……」
絶句二度目、魔王とかなにそれ。
頭が真っ白になるミマだが、視線を受けて意識を戻す。
「ちなみに、その通称魔王城の向こう側は遠視の魔法で確認できるだけだが、人の住める状態じゃないらしい。……長距離転移できる限界はそんなに長くない、お前本当何処から来たんだ?」
「そう言われても……」
何を言っていいのか言わないでいいのか分からずに口ごもるミマ。
そんな様子を見かねたのか、リリーンが口を挟んだ。
「まぁ、誤転移らしいですし、仕方ないでしょう。それよりこれからどうするんです?」
「これから……」
勿論、何も考えていなかった。只世界を周るだけを目標にしていたが、この分だと世界を周るのはかなり危険が伴う。この身体のスペックなら色々便利だろうが、考えていた以上に現状はヤバいのだ。
「とりあえず……街に行って、仕事探す、かな?」
「仕事って、ミマって何歳だ?」
「え、んっと、16?」
さっき転生したばかりなので、もしかしたら0歳かもしれないが、ミマ個人で言えば16歳である。
「マジで!?」
「アタシ、12くらいかと思ってたわ……アタシと同い年なのね」
「あらあら。一応ギリギリ成人に達しているんですね」
まぁこの外見では仕方ないことだが、えらい驚かれようである。
「つっても、そのナリだとどこも受け入れちゃくれねぇと思うぞ。身分証明できる物もないんだろ?」
「うっ」
「となると、冒険者くらいか……冒険者……ねぇ」
三人の視線がミマに集中した。
濃黒の長髪に金に輝く瞳、細い腕、脚に小さな手、図星を突かれ俯く表情。
なにやら隠し事はあるようだが、さっきから素直にポンポン応えていくこの目の前の幼女を三人は正しく評価できていた。
(((ダメだ、絶対碌なことにならない……!!)))
路頭に迷うくらいならまだ何とかなるかもしれないが、この子一人荒くれ者が多い冒険者なんてやらせたら……どんな目に遭うか。
「「「……」」」
簡単なアイコンタクトを交わし、それぞれの意思をそれとなく確認する。
そしてパーティリーダーでもあるアシュリがぺたんと座り込んでいるミマに目線を合わせるように屈んだ。
「なぁ、もしよかったら俺らと来ないか?」
「え」
「まだ登録して半年のCランカーなんだけど、そんな俺等で良かったら冒険の仲間入りしないか?」
「えっと、いいんですか?」
「あぁ。……何か放っておくと悲惨そうだし」
「??」
今の自分の外見と世界の状況を軽くしか分かっていないミマは首をかしげる。
あぁその姿からして既に無防備の極地なのだが、この外見美少女に自覚なんぞない。
「で、どうだ?」
「……よろしく、お願いします」
「よっし、んじゃまずは……あー、服、は合うのが無いし取りあえずマント羽織っててくれ」
「アシュリのマントは臭いでしょうから、アタシのを貸したげます」
「おいこら別に臭かねぇよ、一々喧嘩売って来てんじゃねぇぞロリっ子」
「ふっふっふ、この子が仲間入りしたのですよ?あたし以上のロリっ子が居る時点でその言葉の威力は半減してるのです!!」
「無効化出来てないのかよ!?」
なんやかんやと騒ぎ出す二人を置いてラスアがマントを貸してくれた。
こうしてアシュリ率いる、未だ無名のギルド登録パーティにミマは仲間入りすることとなった。
『よかったね、ミマ』
(うん、まぁどうにかなりそうだよアルマ)
喧しいがどこか温かい空気を感じ少しだけ、微笑んだ。