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#1 プロローグ
閑静な町並みに吹き抜けて行く風。既に太陽は地平線を通り抜け、冴えざえとした満月が頭上にある。都会の空気は全てを飲み込んでしまうかのようで、息苦しく感じられ、ビルの屋上に素足で立っている一人の女性はまるで何かに誘われるかのように足を踏み出していた。
一歩一歩踏み出して行くその足取りは、ふらついてはいるものの、しっかり意識はあった。 右手に持った、一枚の紙切れは風に煽られ『カサカサ』と音を立てる。そして右手には今風のサンダル。それからその紙をサンダルで押さえるかのように、ビルの縁に添えると、引き込まれるかのように、その一歩を踏み出した。まるで背中に羽根が生えているかのごとく。
天使は全てを知っている
最後に残された言葉は、何かを暗示するかのように、ただその場所に残されたのである。
前編と後編に分けております。
占夢者人シリーズ。壱と番外編を先に読まれておりますと、よりキャラ配置はわかりやすいと思われます。
もし宜しければそちらもご覧下さいませ。




