13組は、鼻フック組
<桜井ミチル>
私、
桜井ミチルは、高校1年生。
この春から、
美麗女子高校に進学しているわ。
美麗女子高校は、毎年、T大やW大、医学部など、
難関大学・学部に300人以上が合格しているという、
日本でも有数の進学校。
私も中学時代、頑張って、この憧れの学校に入ることができたわ。
そして、この学校で頑張って、
T大一直線・・・・のつもりだったけど、
1学期の中間試験の順位は、
学年390人中386位。
テストでは常にトップだった輝かしい中学時代を思い返しては、
なにくそ!と期末試験で挽回を誓うも、
1学期の期末試験の順位は、
学年390人中384位。
2人は抜いたけど、
大して変わりないわね(^-^;
ま、この秀才集団の中に入っているんだから、
この順位でも全国ではソコソコでしょ。
と、不安に思いながらも、余裕ぶる。
<美麗女子高校・理事会>
「え~、過去10年間のデータにより、
390人中、上位100人はT大、K大、W大、医学部などの難関に合格。
その次の200人は旧帝大、難関私大に合格。
その次の50人は、地方国立に合格。
その次の20人は、中堅私大に合格。
そして、残りの20人は・・・・大学進学せずか、進学できても、聞いたことのないような大学です。」
「そして、この最後の20人は、
1年1学期の時点でワースト30に入っている割合が90%を超えているようです。」
「なるほど、落ちこぼれは、そのまま落ちこぼれのままでいるってことか。」
「一定数の落ちこぼれがいるのは仕方ないにせよ、
その結果が問題だな。」
「美麗女子高校は私立だ。全国有数の進学校ではあるけど、
もっと評判をよくするためには、下位の生徒の進路はもうちょっと上げないとな。
仮に、美麗女子高校で学年ビリでも、旧帝大に合格できるっていうレベルが理想なんだよな。」
「理事長。夏休みには1か月の勉強合宿がありますし、
そこで成績下位者にハッパをかけましょう。」
「ふむ、そうするか。」
<桜井ミチル>
390人中384位という結果で、悲嘆にくれながらも、
私は夏休みの勉強合宿の準備をしていた。
入学してから詳しく知ったことだけど、
美麗女子高校は日本有数の進学校であるため、
なんと、夏休みなのに勉強合宿がある。
しかも、期間は1か月だ。
学校が持つ、山奥の大きなホテルのような建物で勉強合宿を行うらしい。
夏休みが全部で5週間で、うち1か月が勉強合宿だから、
やれやれ大変な高校に入学してしまったんだな・・と今更ながら思ったが、
ま、仕方ない。1学期のことは忘れて、開き直って頑張るべきよね。
そうして、当日を迎え、
私達はバスで山奥の建物につく。
体育館のようなところでは、この勉強合宿限定らしいクラス分けが行われた。
1学期の成績順に。
というわけで、私は390人中384位なので、
30人クラスの一番最後のクラスである、
13組に所属することとなった。
もう、この時点で、周りからの視線がキツイ。
自意識過剰なのかもしれないが、
「落ちこぼれ」というレッテルを周りの生徒や先生から貼られているような気がしてならなかった。
13組の教室に着いて、席に座ると、
先生が、こんなことを言った。
「みなさんには、今から、これをつけてもらいます。」
と、先生が取り出していたのは、
何だっけ? あぁ、テレビで見たことあるような・・・鼻フックって奴だったっけ!?
そして全員に鼻フックが配られるが、
当然のごとく、
誰もつけない。
何なのこれ、バッカみたい
という生徒の声で教室が埋まる中、
先生は鬼のような形相に変わり、
「はっきり言おう、お前らは落ちこぼれだ。
このままの成績でいけば、落ちこぼれた高校生活を送ることになる。
そんなことにならないためにも、鼻フックをつけるのだ。
成績が下位になれば鼻フックをつけられる。
こんなもん、つけたくないっていう気持ちが、
お前らの勉強のモチベーションになるのだ!!」
それを聞いても、私達は、ポカーンとしていた。
「もういい、分かった。
ではお願いします。入ってください。」
先生がそう言うと、
教室の後ろの方から30人ほど男達が入ってきた。
それぞれ生徒の後ろに1人ずつ、つく。
こんな男達に何をされるんだと怖がっている瞬間に、
後ろから、顔を手で押さえつけられ、鼻に何かを通された。
気がついて目を開けると、そこには鏡があり、豚面の私がうつっていた。
正確に言うならば、鼻フックつけられて鼻の穴を曝け出して、
豚みたいな顔になっている私がいた。
気がつくと、男達はいなくなっているが、
クラス全員が鼻フックをつけられて豚面になっていることに気がついた。
「外れろ!
いやーん!
とれない。」
鼻フックを取り外そうと、
私やクラスメイトが四苦八苦する中、
冷静に先生が言う。
「その鼻フックは鍵付きだから。
だから鍵を使わないと、外れない仕様になっているよ。」
「は、外してくださいよ~」
「ダメだ。君たちには成績下位の罰として、
夏合宿中は、ずっと鼻フックをしてもらう。
鼻フックを外してもらいたきゃ、勉強に励むしかないのさ。」
どんな罰だよ・・・と自分の醜い豚面を見ながら思う。
あれ、ということは、
「ということは、勉強を頑張れば、外せるんですか?」
私は状況に戸惑いながらも、質問していた。
「うん、外れるよ。
1週間ごとにテストを行うから、
そのテストでワースト30(370位以下)に入らなければ、
鼻フック外せるよ。
さぁさ、皆もいつまでもこんな豚面でいたくないだろ!!
そのためには、勉強を頑張ればいいのさ!!
では、楽しく授業していこう!!」
と、いうことで唐突に授業が始まる。
私含めクラス全員が鼻フックされて鼻の穴が丸見えの豚面になっている以外は、
いつもの授業風景。
この状態は異常なんだろうけど、
5時間目ぐらいには、もう、慣れたわ。
よし、開き直って勉強して、この鼻フックなクラスから抜け出そう!!