レジお願いします①
「・・すみませ~ん、レジお願いします!」
女の子の会計をしていた店員が横のレジをチラっと見て、もう一人の雑誌の入れ替えをしていた店員に声をかけると、雑誌の入れ替えをしていた店員は立ち上がり、姿を隠していた商品の陳列棚の上から頭をひょっこり出し、急ぎ歩きでレジに入ってきて“お待たせしました”というと男の客の会計を始めた。
「・・よろしいですか? ・・250円になりま~す」
隣のレジを横目に見ながら財布を開けていた女の子がやっと会計を始めてもらえたなよなよした男を良かったな、と思いながら少しの間見ていると、店員はすでに牛乳2本を袋に入れ終え、カウンターに置いて待っており、女の子に会計額を告げた。
「・・えっ? ・・250円ですか? ・・1本150円(税込)だから・・2本で300円じゃないですか?」
「いえっ、セール中で1本だと150円ですが、2本だと250円ですね・・」
「そうなんですか! それはラッキーだ~♪」
女の子は牛乳がセール中で2本買うと安くなる、と聞いてお得だなと思い、目を丸くして喜んだ。しかし、すぐに表情を曇らせた。
「・・いやっ、待てよ、これはラッキーなのか? ・・そもそも、こんなに牛乳を買い込まなければならないのは・・。・・ああっ、やっぱりこれはラッキーとは言えないか・・せいぜい“不幸中の幸い”・・と言ったところか・・。・・くそっ、あの“ぽっちゃりとんぼメガネ”が・・」
女の子は連日、夜中に思い悩まされているので、相当にイライラしている。
「・・え~と、ですので・・250円となります・・」
店員は、女の子の愚痴が終わるのを待ち、再び会計額を告げた。