深夜のコンビニ②
するとそこには男の店員がもう一人いた。どうやらパックジュースなど飲み物の補充をしているようだ。
「・・いらっしゃいませ~・・」
店員はチラっと女の子の方を見て小さく会釈しながらそう言ったきり、新しく入荷した飲み物を黙々と棚に入れ続けている。
(・・やっぱり品出しか・・。忙しいんだろうけど、もう少しお客さんの様子も見ないと・・お客さんがあれ? 別の仕事中かと戸惑うだろ・・人の良い人だったら、ああいう風に買うものが決まって手に持っていても、遠慮してレジに行けないだろうが・・)
女の子はコーナーに近づいても品出しの手を休めるどころか避けようとすらしない店員をよそ目に一番前に陳列されていた『低脂肪乳』を手に取りじっと見つめた。賞味期限は7月23日と書いてある。
手に取った牛乳を棚に戻すと、今度は後ろの方に陳列されている牛乳に目をやり日付を確認した。7月25日と書いてある。
他にも何本か目を皿のようにして賞味期限を調べたが、どうやら7月25日のものが最長の賞味期限のようだったので、それを1本手に取ってパッケージを眺めた。そして棚に陳列されている牛乳と自分の手に持っている牛乳を交互に見た。
(・・くそっ、あの“ぼちゃとんメガ野郎”・・)
と近くにいた店員には聞こえないくらいの小さな声で悪態をつき、棚からもう1本賞味期限が7月25日の牛乳を引っ張り出すと、レジに向かって行き牛乳2本をカウンターに音を立てて置いた。
パックジュースを補充していた店員はその音に気づきレジに入ってきて、少し頭を下げると、会計を始めた。
「・・い、いらっしゃいませ・・。・・ピッ、ピッ・・2本で250円です・・」
その女の子の“壁ドン”ならぬ“牛乳ドン”に勇気づけられたのか、レジに店員が来てくれるのを遠慮して待っていた、なよなよした細身の男の客が、もう片方のレジに向かい、申し訳なさそうに少しガサガサっと音を立ててパンと緑茶とカップラーメンを置いた。