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学食にてランチ⑤

 新地結菜はどんどんスピードを増し、まるで運動会のスプーンレースのようにお盆のバランスを保ちながら通り過ぎる人たちを巧みに避けつつ加速した。


 桐野玲はソフトクリームのコーンの最後尾を人差し指で口に押し込みながら新地結菜がもうそろそろ戻ってくるかとふと学食内を一望できる大きな窓に目をやった。すると談話室に昼食の載ったお盆を傾けないようにバランスを取りながらスピードに乗って向かってくる新地結菜の姿が視界に入り二度見した。

                                    

 「・・なんだ!? ・・結菜、・・速い! そんなに急がなくても!! そんなに急いだらこぼれちゃう!! ちょっと、ちょっと!!」


 桐野玲は新地結菜の談話室に向かってくるスピードに驚きながらも、“気をつけて!!” と立ち上がって声を上げた。


 その声が聞こえたのか聞こえていないのか、新地結菜はスピードを緩めることなくさらにペースを上げている。最終的にはもう走っていると言って良い勢いで談話室に入ってきた。こぼさないかと気が気ではない桐野玲の方を見ながら、“うわー、ああーっ”と今にもこぼしてしまいそうだ的なリアクションを楽しそうに取りながら、カウンターに見事に無事に昼食を運んできた。


 運び終えると、薄目を瞑って額の汗を拭くような素振りをし、ふ~っと息を吐いて一仕事ひとしごと終えた的なリアクションを取った後、どうなることかと肝を冷やしていた桐野玲を嬉しそうに見た。


 「・・ちょっと~・・。・・びっくりさせないでよ~お盆に食事を載せてそんなに走っちゃダメでしょうが~・・。・・いくら急いでいるからといって~・・あ~ドキドキした・・」


 桐野玲が胸をなでおろしながら椅子に座り不満そうにしている。


 「大丈夫だよ~、ちゃんと事故らないように細心の注意で運んできたよ。・・朝食をろくに取れもせずにバタバタしていたからもうお腹ペコペコみたいで・・。思った以上に食事が待ち遠しくてスピードが速くなっちゃったね」


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