学食にてランチ③
「あたしが遅くなって言うのもなんだけど、早いとこ食べて図書館に行かないとまさみを待たせちゃうからね。あんまり待たせるとまたくっそ可愛い舌っ足らずな喋りで嬉しそうにからかってくるから、少し急がないとね、待ってて・・」
そう言い終わると、一息もついたかつかぬかという間に足早に談話室を出て、何十枚も重ねてあるお盆を一枚手に取り、昼食の注文に向かった。
引き戸のショーケースの前に立ち止まり、その中に並んでいる数十種類のおかずを眺める。千切りのキャベツとコーンを亜麻仁油で作ったマヨネーズであえたコールスローサラダと、ひじきと切り干し大根の煮物を一つずつさっと取り出しお盆に載せて注文カウンターに移動した。
注文カウンターの上に張り出されているメニューを見比べながらメインを何にするか考えた。
「・・そうだな~、何にしようかな~? ・・う~ん、暑いから冷やし中華 [全粒粉入り麺]にしようかな・・。・・玲にも野菜と一緒に食べさせて・・。・・よし、今日は冷やし中華だ!」
学食までこれでもかという勢いで走ってきたおかげか、甘く冷たいソフトクリームの糖分が脳に回ったおかげか、頭のぼーっとした症状がかなり取れてきているようだ。頭が平常時の回転を始めていたので、ほぼ迷うことなくメニューを決めて注文カウンターの前に進み出た。
「・・すみませ~ん! ・・冷やし中華一つ! ・・お願いしま~す!」
いつもよりも心なしか注文の声が大きくなってしまったような気がして、ちょっと恥ずかしくなり、周囲を見回したが周りは混雑して賑わっていたので、何人かは威勢の良い声に反応して新地結菜の方を見たが、それほど目立たなかったようで安心した。
「・・は~い、出来上がりまで3、4分ですね~・・ちょっとお待ちくださ~い!」
厨房の暑さに汗をかきながら働いている学食のおばちゃんが笑顔でそう言うと、麺を一つ取り出してきてすでに沸騰しているお湯にそれをぽちゃっと入れた。
新地結菜は、はいっ、と頷くとおばちゃんが冷やし中華を作っている一挙手一投足を食い入るように見つめた。
皿、野菜類、錦糸卵、チャーシューが用意され、麺が茹で上がるのをひたすら待つだけの状態となった。
さすがに手際が良いな、麺ももうそろそろ茹で上がりそうだ、早く、早く・・とうずうずしながらじっと待つ。




