炎天下のダッシュ②
来た道を走って戻って角の横断歩道を渡り、大学の「南門」から学内に入った。
盛夏の木々がキラキラと光っている遊歩道的な学内の道をひたすら走る。木漏れ日の差す緑道はとても綺麗で、涼しげで暑さを疎ましく思う感情をなだめてくれる。
(うぉおー・・!!)
と歩いている学生に聞こえない程度に叫びながら、今になって暴れだした心の赴くまま走った。
自分がした自分らしいとは到底思えない決断と、その決断の気恥ずかしさを吹き飛ばすかのようにがむしゃらにスピードを上げる。なんだかんだでお得だったな・・とか思ったりもしテンションがさらに上がる。
「・・はぁ・・はぁ・・あとは・・あいつに・・メールしてやるだけだ・・! ・・5年間も音信不通だったものの・・アドレスも番号も・・実は知っている・・。・・こんなこともあろうかと、相沢先輩に一応聞いておいて良かったな・・1回だ・・1回だけメールする・・それくらいなら簡単なことだ・・。・・はぁ・・はぁ・・。・・それでオッケーだ・・」
学食の前まで走り切り、膝に両手をついて、ひどい暑さのせいもありゼイゼイと肩で息をしながら携帯を見た。
12時39分だった。よかった、間に合った。新地結菜はそう思い安心すると、額の汗を拭った。膝に手をつきながら学食の数段の階段をふうふう言いながら上り中に入って行った。
学食の中は外よりはずっと涼しく感じられたが、『プレリュード』に比べると室温も湿度も高いように思えた。何より全力ダッシュのために全身が熱くなっている。




