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炎天下のダッシュ①

 店の外に出てドアの横の方に背をもたれかけると胸を押さえながらふ~っと一息ついた。心臓がドキドキしている。外はさっきよりもかなり暑く感じる。店内が快適だったために尚更に暑く感じるのだろうが、それを差し引いてもやはり先程よりも気温が上昇しているのだろう。


 「・・ふ~っ、外は暑いな・・。・・まさか今年の“ぽっちゃりとんぼメガネ野郎”の誕生日が月1半額セールの日と重なっていたなんて・・。


 ・・まぁ私にしてみれば半額で済んだんだから幸運だったのかもだけど・・お店の人はこっちがケーキを予約しに来ていながら予約の時間指定ができなかったり、“もしかしたらキャンセルもあるかもしれない”とか煮え切らない態度を取ってしまったっていうのに、あたしの緊張した心、葛藤する心、諸事情さえまるで分かってくれているかのような優しい笑顔と対応だ・・やっぱりこのお店は最高だな。


 ・・こんなに苦労して注文しに来たからそれが何となく伝わって、あたしのこの1週間の苦闘に免じて色々と許してもらえたのかもな・・」


 ひとまず予期せぬ事態にはなったものの、何とかケーキの注文をし終えて新地結菜はほっとした。しかし、携帯で時間を確認すると、すでに12時36分だった。


 「・・いけない! もう約束の時間まで4分切ってる! あ~っ、この炎天下を走ることになるのか・・。もうこの1週間はペース乱されまくりだ! しょうがない、それもたった今終わった! あたしは勝ったんだ! ・・ついにケーキを買ったんだ・・! ・・おやじギャグだ・・。


 ・・と、ともかく、さっさと1週間前に約束のケーキを予約してしまったことでうだうだ悩まなければならない生活を乗り越えた、そういう意味では勝ったんだ・・。・・よしっ、それを考えれば、今日からゆっくり眠りにつけることを考えれば少し、今更数分炎天下を走って消耗することくらいは何のこともない!!」


 そう気合を入れると、『プレリュード』の建物が作っていた日陰から飛び出して、勢いよく走り出した。


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