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ケーキの予約①

 角を曲がると『プレリュード』がすぐに視界に入った。店の外には何人かの女子学生たちがいて楽しそうに話している。やはりもう混雑しているような雰囲気だ。


 「やっぱりか~、開店後すぐに来れば、すぐに予約できたものを・・。寝坊してしまったために余計な混雑に巻き込まれるのか。はぁ、まぁ、でもしょうがない、ここに来るまでにそれだけのことが必要だった、と思うしかない・・」


 新地結菜は自分にそう言い聞かせながら、そのままスピードを緩めずに『プレリュード』へと足早に歩いた。


 そして、とうとう『プレリュード』の前にたどり着いて立ち止まると、ほとんど仁王立ちで店と対峙した。急いで結構息が上がっていたのもあるが、気温が相当に上がってきているらしくやっぱりもう30℃を超えているな、と確信した。早速汗ばんできている。


 新地結菜は店をじっと見つめながらゴクリと息を飲むと、店の階段を上がり、ドアの前で少しの間、躊躇ちゅうちょして立ち止まった。


 その間に店内から何人かの女子学生が外に出るためにドアを開けたので、ここにいてぐずぐずして邪魔になってはいけないと思い慌てて横の方に避けた。


 女子学生が店外に出て、ドアが閉まると再びその前に立ち、素早く呼吸を整えると意を決して『プレリュード』のドアを開いた。


 [カランカラン♪]


 ドアについていたベルが鳴り、その音とほとんど重なるように“いらっしゃいませー♪”と店員の活気のある声が耳に入ってくる。いつもと同じ『プレリュード』だ。


 店内を一通り見渡すと思ったとおり女子学生で窓際のカウンター席もテーブル席も賑わっている。


 ケーキの入ったショーケースの前にもかなりの行列ができており、“大混雑”という言葉そのものの状況だ。


 新地結菜は店内を見回しながらゆっくりと中に入っていき、躊躇いながらもショーケースの前に列をなしている女子学生たちの後ろに並んだ。


 並ぶとすぐに自分の後ろに女子学生が並び始めてしまい、もう後には引けないような落ち着かない気分になった。


 バッグに入れてきたハンカチを取り出して汗を拭ったものの、何だか自分がここに並んでいるのが場違いで恥ずかしいような気がする。


 今までに何度もこの店で並んでケーキを買ったことがあるのに今日はいつもとは全く違う感覚になっている。


 ここに並んで良い人たちとは一体どんな人たちなんだろう・・自分は本当にここに並んでいて良いのか・・とか考え出してしまい、列をなしている一人ひとりの顔をさりげなく覗き込んでみたりした。


 見たところ皆普通の女子学生だ。そして自分も普通の女子学生だ。自分の服装に間違いがないか確認したが、特におかしなところはないようだ。


 それでもなかなか落ち着かず、ハンカチを顔に当てながら自分の並んでいる前方にどのくらいの人が並んでいるか数え、後ろを振り返って何人くらい並んだのかとキョロキョロと確認した。 


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