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再びの葛藤③

 新地結菜は道ですれ違って行く人たちのことはまったく目に入らずにひたすら、約束をどうやったらきちんと果たしたことになるのか空を仰いだり、足元を見つめたりしながら足取りは遅々として進まずに頭をひねって考えていた。


 「・・これは避けたかったものの、やっぱりメールを一回だけ打つ必要がありそうだな、5年も会っていないっていうのに。・・誕生日のケーキを予約してあげて、いきなりメールでお誕生日のお祝いメールだと?


 ・・こんなどんな反応をされるかわからないような、場合によっては“え? 何なの?”とドン引きされる可能性もあるような痛々しい、恥ずかしいことをしなければならないのか・・。・・やっぱりこれは・・やめたほうが・・。・・なんであたしがこんな目に・・。・・あ~・・」


 新地結菜は恥ずかしそうに顔を赤らめながら憤慨した。しかし、桐野玲との約束の時間が迫っている。今日解決してしまおうと思えばそれほどだらだらと思い悩んでいる時間は残されていない。


 今それをやめてしまえば、また約束の日までの残りの1週間、夜中に思い悩み、色々と生活に支障が出るかもしれないと思うと、やはり今日、今決着をつけなければならないと思った。


 「・・そうだっ・・うだうだするのはもうこれで終わりにするんだ! ・・あいつがどんな反応をしようと関係ないじゃないか! あたしは不幸にも一言一句完全に覚えていてしまった約束を果たすだけだ!! ・・それでこっちが勝手にスッキリすればいいんだ!!


 ・・相手がどんな態度を取るかなんて相手の問題だ!! ・・よしっ、そうだ、さっさとケーキの予約をして、あいつに当日に取りに行くようにメールしてそれで終了だ。・・そこまでやってしまえば、約束は果たしたことになるんだから、そこまでは・・そこまでやってあとは放っておけばいいんだ!! ・・よしっ!!」


 そう自分に言い聞かせると歩く速度を急速に早めてためらう心が出ないうちに急いで『プレリュード』に向かった。


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