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あの頃に戻れたなら  作者: 達也
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2年進級

 200X年 春

 俺の高校は駅から徒歩2分で校門につけるという非常に近い立地、そして就職か進学か入学前から決めている生徒や悩める生徒を幅広く受け入れる。そんなこともあってか地元でも有数のマンモス校だった。俺の学年は過去一番少ない学年だったらしいが500人以上いる。クラスにして15クラス、全員を把握するなんて無理。ましてや、人見知りの性格なので隣のクラスですら中学のときの知り合い以外にまともな知り合いはいない。クラス替えが億劫だった。

 クラス換えはS・A・B・Cと学力に合わせたコースと、そこからさらに理系・文系と分けるというシステムだ。細かく言うと他にも学科があるし、スポーツ特待生クラスもある。そこの部分はクラスは3年間固定なので2年次のクラス替えには関与しない。Sとは便宜上で言っているだけで実際には特進クラスというのだが、アルファベットで統一したほうが分かりやすいと思うのでこれから先もSとしておく。とはいっても進学に関しては中堅校クラスなので、Sクラスは原則国立大の入試を受けるがそこまで合格率はよくないらしい。Aクラスは基本私立大、Bは私立と一部就職、Cは基本的に就職という感じだ。

 クラス替えの結果、当初の予定通りのクラスだった。俺はAの理系。Sに行くには英語の力が足りないと言われていたから納得の結果。まぁ1年生の頃からSクラスだった人たちについていける自信もないし不満はない。それに見知らぬ人ばかりだと不安になる。

 SとAには部活が原則として認められていないため、智子はBの文系に進んだ。男子グループの中でも部活をしていた何人かはBへ行った。

 教室に入ると初めて会う人ばかりで困った。みんな同じことを思っていたらしい。俺が知らない人同士で気さくな感じに集まっていく。俺もそれに習って結局1年生のとき同じクラスだった奈川と石松とつるんで着席の時間までを潰した。

 奈川は成績が良く少し体格の良いため、それなりに何でもできますといった友達だ。石松は基本的に落ち着いているのだが、一度エンジンが掛かると暴走が止まらないお調子者。それに奈川と俺がツッコミを入れる。石松はかなり強めの天パなのだが、茶化すとその日の調子が分かるので面白い。ナイーブになったり怒ったり、自分でネタにしたり。そんな1年生のときと変わらない。いや、しいて言えば文系や他のBコースに行った友達数人が今はいないが、また楽しい時間を過ごせると思うと少しも気にならなくなった。

 当時の俺は智子と春香以外の全ての人を苗字で呼んでいた。下の名前で呼ぶのには抵抗があったからだが、智子と春香はそれを許さなかったから仕方なくといった感じだ。一応茶化されないように学校では苗字で呼んでいたがそれも少し不満だったらしい。


 チャイムが鳴り響き、みんな雑談を名残惜しむようにざわざわと音を立てながら着席する。奈川と俺(西岡)は苗字的に近く、席は奈川の後ろに俺。石松はかなり離れるから最後までぶつぶつ文句を言っていた。教室に担任が入るとざわつきもおさまった。中年といった感じの背の高い男性教師だった。白髪交じりというより若干白が多めだが、背筋は良くあまり老けている印象を受けなかった。担任が言葉を発する。

「ホームルームの時間を使って簡単な自己紹介を出席番号順でやりなさい。俺はやらん。メンドクサイ。しいて言えば女子テニス部の顧問で数学担当の松原だ」と言った。しっかり自己紹介してしまっているこの先生にみんな唖然としながらも、すぐに自己紹介が始まる。男女別苗字のあいうえお順だ。石松は最初のほう、俺は”な”行とはいっても後ろに6人しかいない。このクラスはなぜか”あ”行の男子が固まっていた。そして俺の番が回ると無難に自己紹介をした。ちょっと遠いところから通っていると言ったぐらいか。そんなに特徴的な自己紹介をしてはいない。次の番。

「西中勝也です、西岡君とは似ているけど違います」

こんな自己紹介聞いたら気になって振り向きたくなる。ちょっとぽっちゃり系の男、見た目はあまり似てはいないが確かに名前だけ聞くと”西岡達也”にすごく似てる。名前を覚えることが苦手な俺でも瞬時に覚えることができた。それから残りの男子、女子と続くがほとんど耳に入っていない。どうせ覚えられないし。

 名前が似ているというのがきっかけでホームルームが終わった後、奈川と石松と話をしているときに声をかけられた。西中の周りには 2人集まっていた。背の低い男子、にきびがちょっと人より多いメガネをかけた男子、こちら側には奈川と石川の2人が合わさってそれぞれ自己紹介をした。背の低い男子は体もかなり細い。まずは自分からと前に少し出る。

「はじめまして信田裕次郎です。よろしくね。1年のとき同じクラスだった人がこの中にいないからちょっと緊張しちゃうね」

気弱な感じの声で少し聞き取りにくかったが、名前に聞き覚えがあった。奈川も聞いたことがあったようで反応した。

「あぁ、1年のときいつも成績がトップだった!」

成績がトップとは言っても別カリキュラムで勉強の進んでいるSクラスを除いた期末試験である。それでも十分にすごいことだ。奈川は信田に興味津々に近寄る。

「い、いや、いつもじゃないよ」

信田は謙遜した。この謙遜するときの動きが挙動不審にしか見えず、初めて見た俺と奈川と石松は少し笑ってしまった。石松は奈川に

「いくら女の子みたいだからってそんなまじまじと……もしかして好きになったの?」

と茶化す。

「そ、それは僕……困っちゃうなぁ」

信田も手を頭の後ろに持っていき撫でながら答える姿はかなりノリノリに見えた。そんな空気を断ち切りたかったから奈川が言葉を発する。

「じゃあ俺も自己紹介。奈川貴則です。さっき自己紹介したと思うけど野球を昔やっていました。改めてよろしく」

先ほどホームルームで自己紹介をしたばかりだし、分かっているよと思いながら聞いていると

「俺サッカーやってた! 石松佳樹!」

エンジンがかかった石松が割り込む。こうなったら止められない。と思ったが以外とすぐに落ち着いた。まぁ初めての印象は大事だし無理したのかな、といった感じで俺の番。

「西岡達也です、西中と間違えないでね!」

先ほどネタにされたので俺も返してみた。すると西中がツッコミを入れる。

「おい! 真似するなし、あ、俺は西中だよ。西岡と似ていて覚えにくいかもしれないけどよろしく」

一同声をそろえたように

「逆に覚えやすい」

これには俺も笑った。

「まぁ名前は覚えても、どっちがどっちだか分からなくなってしまうかもしれないけどね。ところでそちらは?」

と奈川が俺に軽い毒を吐きながら、にきび跡の多いメガネ男子を指した。そこは俺(西岡)、奈川、石松グループだから俺のことは分かるだろと言いたくなったが話の腰を折っても仕方ないしスルーした。

「俺、忘れられてるかと思ったよ……」

あまり元気のない声。西中が厳しい目を送る。

「わかったよ! 西中と同じクラスだった八谷です。よろしく」

ちょっと声が大きくなった。

「ブラ○ヨの吉○って言えよ! つかみ最高じゃん」

西中が八谷のにきびをいじる。大丈夫なのか?と思ったのもつかの間

「にきびのことはやめろよ! いい化粧品で改善されているんだぞ!」

っと西中に軽くパンチをしていた。いつものことらしい。俺たち3人も知り合ったばかりだがいじることにした。


 そんな感じで2年最初の1日が始まった。

最初だしそれなりの頻度で書いて行きたいです。

頑張ります。

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