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あの頃に戻れたなら  作者: 達也
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エピローグ~高1の冬~

 あの頃に戻れたならやり直したいと思う出来事は誰にでもある。俺の場合はまだスマホが世の中に存在していない頃の話。その頃の俺は不器用で小さな恋をしていた。


 200X年冬

 俺が通っていた高校は2年生に進学するときに1度だけクラス替えが行われる。文系と理系を分けるため、そして就職か大学進学かによって授業内容を変えるため。もちろん入学時点である程度学力ごとに分けられているのだが、このクラス替えが最終決定ということになる。将来を決める大事な次期に俺は酷く悩んでいた。

 得意科目は大雑把に言うと社会と理科、それ以外がまったくダメ。ただ暗記だけが得意だったから進路に悩んでいたというのもある。しかしそれ以外にもっと強く悩ませていたことがあった。クラスメイトの好きな女子(仮名:智子としておこう)が文系を選ぼうとしている。が、よく話す男子グループは理系に行こうとしており、智子と一緒の文系に行くと茶化される。俺には自分がない。ただただ回りに流される典型的な日本人。そして、よくある異性と話すことに過剰に意識しまっている男子高校生の集まり。今でこそ笑ってしまうような話だが、当時としてはこの男子グループから距離をとられてしまうのではないかと不安がココロを苦しめた。

 智子のことは普通に話ができる数少ない女子の一人だと思っていた。実際会話と呼べるレベルのことをした女友達は、智子を含めて3人だけである。40人クラスでほとんど男女比は同じの中、この数はよくある美味しい話からは程遠い。智子はポニーテールで少し背の低い女の子。校則が厳しいから肩よりも頭髪の長い子は全員結ぶため、ポニーテールとおさげがかなり多い。しかし、その中でもひときわ綺麗な形のポニーテールに俺は魅かれた。声が若干低いのをコンプレックスとしていたが、これも金切り声のようにキンキンとうるさい他の女子に比べたら好意的な印象を受けた。あまりクラスの中では目立つようなことはしないが、話しているうちに男兄弟の影響からか冗談の通じる男勝りな性格ということも分かった。智子自身色々な女子とはそれなりに話すがあまり男子とは話さない。そのため俺の周りのグループとは接点がないから少し優越感に浸っていたところもある。”俺は女友達がいるんだぞ”というステータスみたいなもの。そのことで茶化されることもあったが、友達としてしか見ていなかったからか、あまり気にはしていなかった。

 智子から”部活で副部長やることになった。部活を掛け持ちすることになった。文系と理系で悩んでる”などとメールで色々な相談交じりのやり取りをしているうちに妙に意識をし始めた。特に智子から”彼氏と別れた”とメールが来たときに意識が強くなった。智子の顔を見るだけで胸が苦しくなり、また意識をしてしまってからは男子グループの茶化されることが怖くなり、結局学校では挨拶程度の軽い話しかできない。当時流行っていたJPOPの恋愛系を無秩序に聴きながら、夜は布団で悶える日々が続いた。ほぼ毎日メールをしていたが、最終的に智子から文系を選ぶ気持ちのほうが大きいと言われたときからほとんどメールをしなくなった。


 冬休み前2年時クラスの最終希望調査が行われた。担任から理系を薦められる。テストの点数だけで見ると理科と社会はほぼ一緒なのだが、平均点と比べると理科はずば抜けてよかったからということ。理科社会に次いで得意だったのが数学ということ。英語を不得意としていたため文系の授業についていけないと諭された。グループの男子にも理系が多い。自分の意志で決めたわけではなく結局周りの雰囲気に流されて理系に進路を決めた。その日の夜久しぶりに智子にメールをした

「色々悩んでたけど理系にすることにしたよ、智子はやっぱり文系?」

こんな感じのメールだったと思う。

 しばらくして携帯の着信音が部屋に響いた。智子からだ。俺は最近メールしていなかったし智子の考えが変わっているかなと、少し期待しながらメールの画面を開いた。

「うん、私も悩んでいたけど文系かな。達也(俺の仮名を達也とする)はやっぱ理系のほうがあってると思うよ!理科がずば抜けていいし!」

もう少し女の子らしい絵文字や顔文字、昔流行った若干の小文字があったはずだが割愛する。そんなメールを見て文系だったか、とうなだれた。同じ学校とはいえクラスが違うと遠い存在に感じてしまう。

 俺はそれほど初対面の人と話すのは得意ではない。冬になろうとしているのに隣のクラスの面識なんて皆無だ。同じグループで馬鹿やって、笑いあう。それ以上を求めることなど必要ないと思っていた。そんな俺がクラス分けされた後に智子と接点をもてるかといわれたら無理だ。どうすればいい。俺が気がついたときにはメールで告白していた。

 1時間たっても返信はなかった。俺は酷く後悔をした。巷でよく言われている、”メールで告白する男は最低”という言葉が頭によぎったからだ。慌てて取り繕ったかのように

「さっきのメールごめんね LOVEじゃなくてLIKEだよ!また明日ね。おやすみ」

と智子に送った。

 メールを送って間もないうちに智子の友達の春香から電話がかかってきた。慌てて家を飛び出し電話をつないだ。

「あんた何考えてるの? 智子は今一生懸命悩んでいるんだよ?」

急な罵倒に驚くと同時に怒りがこみ上げてきた。

「何勝手に俺がメール送ったこと知っているんだよ?」

俺はこのときなんていったか詳しく覚えていないが、怒りに任せてこのように言ったと思う。何故分かるか。それは次に春香から言われた言葉が衝撃過ぎたからだ。

「智子はね。あんたをどう傷つけないように断わるか悩んで私に相談してきたの。あんただって知っているでしょ智子の元彼との名前も達也って言うことを。あんたと話すと時々思い出してつらいって言っていた。でも友達としていい人だとも言っていた。だから一生懸命悩んでいたのに何ソレ? 馬鹿にしてるの? 今智子は隣で泣いているんだよ」

散々罵倒された俺は何も言い返せなかった。

 元彼の名前が一緒なのは知っていた。別れた話の過程で軽く名前を聞いていたし、黙って愚痴を聞いていたからだ。そんなフラッシュバックが脳裏を焼き、罪悪感がピークに達して、ただただ「ごめん」と何度も言うことしかできなかった。

「もういいから」

と、春香から吐き捨てられ俺はそっと通話を切った。とぼとぼと力なく家に帰る。そのまま布団に入って念仏のように長々とつぶやき続けた。枕を濡らした初めての夜だった。


 それから冬休みに入るまで学校でも目を合わせなくなった。いたずらに時間が過ぎていく。やっと俺の口から智子に直接謝ることができたのはクラス替えが行われる直前、もうすぐ春休みになろうかとしている頃だった。

 智子は快く許してくれた。時間が解決してくれたのかもしれない。だが、それは遅すぎた。もうすぐ春休み。これが過ぎてしまったらクラスは変わってしまう。許してくれたとは言ってもぎこちなさがまだ残っていた。春休みにデートに誘う? いや、前に智子からショッピングに誘われたとき、”遠いから”と謎な理由をこじつけて断わったのは俺だ。詳しく智子の家がある方向に行ったことはあまりなかったが、確か電車で1時間半ぐらい。当時の心境はめんどくさがったんだろうか、それとも恥ずかしかったのだろうか。兎に角断わったのは俺でそれ以来春香にカラオケに誘われたことが1度だけあったが、俺から学校外で会うようなイベントを設けることはなかった。そんな今までの関係にぎこちなさが加わってどうしてもデートに誘うなんてことはできなかった。

まずはここまで読んでくださりありがとうございます。

初めての小説投稿となりますので、誤字脱字にものすごく不安があります(汗)


この表現のが読みづらいなどありましたら是非教えてください!

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