表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

婚約していました

 渡された書類をそのまま床に叩きつけ、わたしはヒステリック気味に怒鳴りつけた。

「勝手に婚約だなんて有り得ないわ! わたし、絶対に認めません!」




「アリシアは本当にいい子なんだから、いつかきっと素敵な人が現れるよ」

 わたしの初恋は、その言葉とともに見事に崩れ去った。そしてそれと同時に、もう二度と恋なんてするものかと心に誓った。いい子だの、素敵な人が現れるだの、自分が十歳以上年下の子供と一緒にいて好きな相手に変な勘違いをされたくないからと、てきとうに嘘を言って逃げられた。好きな人がいるから無理なんだと本当のことを言えばいいのに。幼いながらにそう思った。それ以来、わたしからしてみれば他人なんて自分勝手で、都合のいい道だけを選び続ける、取るに足らないものにしか思えなくなった。無論、わたし自身もそういう振る舞いをして、自分にとって楽なように生きてきた。だから毎日楽しくて、悩みなんてものも全くなかった。

 なのに、それなのに。

 父はまた余計なことをしてくれたものだ。わたしは勝手に婚約させられていて、数日後にパーティーで顔を合わせるから準備しろだなんて言い出した。多分土壇場になってわたしが破談にできないように、たくさんの偉い人の前で婚約発表をするつもりだろう。なんて意地の悪い。

 でもわたしにだって自分というものがある。たとえ偉い人がいようと、わたしの気持ちを殺してまで望まない婚約発表を迎える義理はない。どうにかして破談にしてやろう。そうしたら父もきっと諦めてくれるはずだ。

 わたしはそれからパーティーまでの数日間、部屋にこもって破談にする方法を出来うる限り考え続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ