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ウンディーネシリーズ

異世界転移したルーがパラレル時空の神父様のセデュと邂逅する話

作者: 咲佐きさ
掲載日:2026/06/01

ムーンライトノベルズ(BL)に掲載している神父×サキュバス時空のセデュと本編ルーが邂逅するエロコメです。※パロディ時空のサキュバスのルーは合意の上で神父様のセデュの性奴隷をやっています。サキュバスは食事が必要なく、精液が食事の代わりです。

 …さい、起きなさい、ルーシュミネ、目を開けるのです…

 ぱちりと僕は目を開く。僕はベッドの上に寝ていて、目の前になんか、ぐるぐるした宇宙みたいなものが広がっている。そこに一人ぽつんと立つのは、ロングドレスを着た、ダイアナだ。でかいおっぱいが盛り上がっててとても魅惑的だ。なぜか頭に後光が差してる。神々しいとはまさにこういうことだ。跪いてお祈りを捧げたくなるくらいだね。

「ダイアナ、なんでそんなカッコしてんの? ここ何?」

「女神を軽々しく呼び捨てするものではありません…ここは閉鎖空間、あなたは一時的にこちらに避難しているのです…」

 しずしずと目を閉じたままのダイアナが言う。声もいつもより神々しい。女神を自称するだけはある。

「へいさくうかん?」

「そうです…現在、あなたのいる時空は枝分かれした無数の可能性の世界、並行世界、パラレルワールドと混戦してにっちもさっちもいかない状況になっているのです…これは神々の力でもどうしようもありません…」

「ぱら?」

「そういうわけで、これからあなたはパラレルワールドのひとつに飛ばされます…どうぞご武運をお祈りいたします…」

「へあ? ちょっと待ってちょっと待って、パラレルワールドって何? 戦争時代にでも飛ばされるっての!? 待ってダイアナ、よくわからない、説明してよ、ちょっと…」

「では参ります、3、2、1…」

「わー! まだ納得してない! 何もわかんないんだけど!?」

「ゼロ」


 ぱっと僕は目を開ける。粗末な木組みの天井が見える。僕はベッドに寝ていたようだ。ぐるりと部屋をみまわす。質素な椅子とテーブル、シンプルなチェスト。時代がかったようにも感じる、素朴な一部屋だ。

 物音は何もしない。いまのところ。

 戦場の真っ只中とかに飛ばされるかもって覚悟していた僕はほっと胸をなでおろす。

 とりあえず、平和な農村っぽい一軒家で目が醒めたみたいだ。ああよかった。ベッドから降りようとして、裸の脚が目に入る。むくりと起き上がって身体を見下ろす。脚どころじゃない、全身真っ裸だ。全裸で寝てたってことか。外気はそう寒くないから夏なんだろうけど、セデュに知られたらだらしないって叱られちゃうだろうなア。

 …ここにセデュはいるのかな。どうなんだろう。

 まあいいや、とりあえず家を出て、その辺をぶらぶらして回ろう。何事も、楽しんだ者勝ちだ。この異常事態を遊びつくして、それから元の世界に帰ればいい! どうやって帰るのかはさっぱりわかんないけど、まあなんとかなるだろ、うん!

 裸足の脚を床に着けたとき、じゃらじゃらという耳障りな金属音(?)がして、僕は不審に思って振り返る。

 ――鎖だ。鉄の鎖が、ベッドの桟に絡んで、僕の方まで伸びている。思わず首元に手をあてると、しっかりとした感触の首輪が、嵌められていることに気付く。

「――まじか」

 これは、あれか。僕はこの部屋に、監禁されてるってことか。

 しかも全裸でベッドに寝てた、ってことは、そのう、いわゆる、性暴力? を受けてた的な?

 ――いやいやいや! 並行世界の僕の人生、ハードモードすぎるだろ!! どういうことなんだ、ダイアナももうちょっとまともな世界を選別してくれよなア!!

 と、とにかく、なんとかしないと…鍵とか落ちてないかな? …ないか。監禁してるのはどんなやつなんだろう。サイコパス殺人鬼とかだったらどうしよう。拷問が趣味のサディストだったら…僕の身体に傷はないみたいだから、とりあえず差し迫った心配はなさそう、だけど…

 トントンと階段を軽やかに上がってくる足音がして僕はぎくりと固まる。

 とりあえず足元のシーツを掻き台わせてそれに包まる。身体を隠すと少し安心する。さあどんなヤツが飛び出すか、見てやろうじゃないか。僕は負けないぞ、拷問されたって泣かないぞ。僕は元の世界に戻るんだ。セデュのところに戻るんだ。…

「ルー? 起きたのか?」

「…えっ」

 トントンと階段を上がってきたのは、セデュだった。

 首元まできっちり閉めた黒服…神父様みたいな服を着て、装飾の類は一切ないのに、それが華やかな美貌を際立ていて、綺麗だ。

 しかもなんか、若々しい。重めの前髪とか、長めの襟足を後ろでハーフアップにしてるとことか、全部可愛い。年はたぶん…え、もしかして、僕より年下の頃のセデュじゃないか?

「お、おはよう、うん、今起きたとこ…」

「おはよう。朝食を準備してきた。飲みなさい」

「あ、ありがとー…」

 セデュが差し出すコップを受け取る。ミルク一杯が朝食って、ずいぶん質素なんだなア。この世界のセデュはたぶん、神父様なんだ。だからこんな清貧生活してるんだろうな。…神父様のセデュかア。ふふ、神父服似合っててカッコいいなア。あの美声で説教壇に立たれたら、みんな聞き惚れちゃうな。いやその前に、見惚れちゃうだろうな…。

 傾けようとしたミルクからツンと鼻に突くにおいがして僕は眉を顰める。…なんかこれ、腐ってないか?

「どうした? 飲まないのか?」

「えー…えと、これって、いつ淹れたの?」

「……」

 セデュは途端に耳朶を染めて黙り込む。視線をうろうろ彷徨わせて、なんかモジモジしてる。え何? どういうこと?

「つ、ついさっき…おまえが、寝ている間に…」

「あ、そうなの? それにしては…なんか…」

 恥じらいながら(なんで?)赤い頬でぽそぽそ呟くセデュを、かわいーなーって思いながらコップを口元にもっていく。においは抵抗あるけど、潤んだ目でこちらを窺うセデュを見てたら可哀想になってきちゃって、僕はコップを傾けて、…。

「うえっ、げほ、ごほ、こ、こここれ、せーえきじゃないか!?」

「…そうだが」

「そうだが!???」

「何かおかしいか」

「おかしいおかしい!! おかしいことしかない!! えどういうこと!? なんで君そんな平然としてるのさ!??」 

「……」

 セデュは呆気にとられたようにぽかんと僕を見てくる。まるで僕のほうが間違っていて、おかしなことを言っているみたいに。

…この世界のセデュはあれかな。変態さんなのかな。だってコップに精液入れて飲まそうとしてくるってさ。それもう、いわゆる、性犯罪だよね。あーいくら顔と声と身体が良くても性犯罪者はなアー。きょとんと見てくる顔はめちゃくちゃ可愛いけどー。同意のないプレイを平然と仕掛けてくるセデュも新鮮でちょっと面白いけどー。

「あのさ、こういうことは、ちゃんと確認をとってくれる? 不意打ちはね、よくない。確認さえとってくれたら、結構オーケーだったりするから」

 年下のセデュに、僕はお説教する。セデュは困ったような顔で、お行儀よくベッドに腰かける。叱られた犬みたいな風情だ。可愛い。やっぱり可愛いぞう、年下のセデュ!

「きちんと言ってくれたら、ナマで飲んであげたりとかだって、吝かではないというか…」

 ついでにもごもご口の中でデレる僕である。セデュには聞こえていなかったみたいで、ふと彼は真剣な表情になって、それからまじまじと僕を見る。

「え何? どうしたの?」

「……お前はもう、私では、満足できなくなったのか」

「は?」

 なんか絶望、って感じで呟かれて僕は唖然とする。

 いや、変態プレイを拒否られただけで、そんな発想になる!? ちょっと繊細すぎない!? 若いってそーゆーもんだっけ!? …。そーゆーもんだったかもな。うん…。

「ちょっと、君はなにか勘違いを、…」

「他に好きな男ができたのか…教会の信徒か。私のいない間に、また男を呼び寄せたんだな…」

「……」

 また、ときたか。この世界の僕はどうやら浮気性なんだな。ひょっとしてそれでトチ狂ったセデュが僕を監禁しちゃったってこと、なのかもだ。だとしたらセデュを犯罪者呼ばわりはカワイソウかもなア。僕にも原因の一端があるとしたら。うーん。浮気、浮気ねエ…。…。やるかもな、僕なら。うん。貞操観念とか、いまいちないのが僕だから。

「君を傷つけたみたいだから、僕から謝っておくね、ごめん…」

「……」

 セデュは唇を噛み締めて、潤んだ瞳で俯いて、ふるふると首を横に振る。

 そのまま手を伸ばして、セデュはかちりと首輪を外す。身軽になった首元を摩る僕を見ていられないみたいにセデュは目を逸らして、腰かけていたベッドから立ち上がる。

「……今のうちに逃げなさい。私がまだ正気でいられるうちに…」

「正気で僕を捕まえてたのか君…」

「お前を捕らえておけるなどと、思った私が愚かだった。お前を閉じ込めて、自分だけのものにしようなどと…性奴隷に貶めようなどと…」

「ぶはっ」

 僕は思わず噴き出す。性奴隷!? いま性奴隷って言った!? ものすごいワードセンスだ。元の世界のセデュに教えてあげたい。しかも君の声で言われると、破壊力が物凄いぞ。いやあ、変態さんのセデュもなかなかいいもんだなア。

「も、もっかい、言って? …くふ、」

「…私は愚かだった」

「それじゃなくて、その、せー、何とかっての…」

「性奴隷?」

「そそ、それそれ! あはは、おっかしいなア、まじめな顔で言うことかよ、…」

 堪えきれず足をパタパタさせて爆笑する僕を、セデュはなんか泣きそうな顔で見てる。あ、やば、繊細な変態さんのセデュを、もっと傷つけちゃったかな? どうしようか、なんて慰めようか…。

「はやく去ってくれ、悪魔よ…私の魂は地獄に堕ちるだろう、お前の望み通り…」

 ぽつりとそう零して、セデュは足早に部屋を出ていく。失恋でめちゃめちゃになった男の子って感じだ。さんざん笑って笑い疲れた僕は、とりあえず彼を追うことに決める。

 このまま放置したら、さすがにこの世界の僕に申し訳が立たない。ふたりは合意の上で変態プレイしてたって可能性も、じゅうぶんあるわけだしね!

 

 とりあえず全裸の僕は着替えを探す。きょろきょろ見回しても脱ぎ捨てられた衣服みたいなものは見つからない。裸足でクローゼットのところまで行って開けると、セデュのものらしい白いシャツが見つかった。あと、私服らしいジャケットにスラックスも。黒いカソックの替えに、ミサのときに身に着ける白いストラなんかも入ってる。

 この世界のセデュは香水をつけてないみたいで、いつものセデュのにおいはしない。防虫剤か何かのにおいだけがある。ひとまず白シャツを手に取り袖を通す。きちんとアイロンがあてられたみたいにかっちりしてる。ちょいと袖は長いけど問題ない。腰回りはだぶつくからスラックスの中に入れてしまう。スラックスもそのままだとずり落ちるから、ベルトかサスペンダーを探す。引き出しにサスペンダーを見つけた僕は長さを調節して、それを身に着けた。

 ちょいと長い袖は折りたたんで腕まくりして、出て行ってしまったセデュを追いかける。

 馬の蹄の音とかしなかったから、徒歩だろう。たぶんその辺にいるはずだ。

 階段を下りた階下にはキッチンがある。鍋も窓もぴかぴかに磨かれているのは、セデュが自分で掃除しているからなんだろうな。くるりと見回しても埃一つ落ちていない。セデュは綺麗好きだから、けっこう神経質に毎日掃除してるのかもだ。僕はベッドに鎖で繋がれて、家事の類は一切していなそうだし。この家には使用人もいないし。

 え、てことは、料理とかも自分でするのかな? セデュの手料理、食べてみたいかも。毎日セデュにお世話されて、手料理も食べられるなんて、いいなあ、うらやましいぞう、この世界の僕!

 浮ついた気持ちでお庭に行こうとした僕は、ばっと慌てて扉の陰に隠れる。お庭にはまだセデュがいた。ただ、彼はひとりじゃなかった。お庭のベンチに、セデュの隣に、ブルネットの愛らしい女の子が掛けている。豊満なオッパイ、気遣わし気にセデュに注がれる憧憬に満ちた瞳。ダイアナだ。くそう、この世界にもダイアナがいるのか! そんでやっぱりセデュが好きなのかー! 割り込めないじゃないか、ちくしょうめ!

「神父様、お気を落とされないで、野イチゴを摘んできましたの、ジャムを作ってさしあげますわ…」

 抱えているバスケットを差し出してダイアナはセデュを慰める。いやいや、神父様は妻帯が禁止されてるんだからね!? 婦女子が神父様を誘惑するなんて、いけないことなんだぞう!?

「…ありがとう、ダイアナ。…ジャムは君が食べなさい。少し一人にしてもらえないだろうか…」

「…。明日、作って持ってきますわね。ぜひ神父様にも、食べていただきたいのです…」

 けなげなダイアナはそう言って立ち上がる。トトトとその小柄な身体が駆け去り、お庭にはセデュが残される。どうするのかと見ていたら、ふらりと立ち上がったセデュは唐突に蹲り、ぶちぶち草を毟り出した。その背中は、不貞腐れた小学生みたいだ。

 か、かわいい。とんでもなく可愛いぞ。変態さんの繊細さんの、神父様のセデュ! 僕はしばらくワナワナしながらその背中を眺める。やけくそみたいに雑草がセデュの傍に積み上がっていく。あ、草むしりもセデュのお仕事の一部なのか。そうか、お庭の手入れもしなくちゃなんだ、独り身の神父様って、大変だなア…。

 僕はひょいとお庭に踏み出す。ダイアナはもういないから、僕がお外に出ても誰に見咎められる心配もない。神父様のセデュが男の子を監禁してたなんて、さすがに外聞が悪すぎるだろうからね。

 ぶちぶち、草むしりをつづけるセデュの隣にしゃがみ込んだ僕はこつんと膝をセデュのそれにあてる。

「お手伝い、してあげようか? ひとりじゃ大変でしょう、…」

 びくりとセデュが一瞬跳ねて、戸惑うような視線が僕に向けられる。

 僕が頬杖ついてにこりと微笑むと、セデュの目がみるみる潤んでいく。あ、なんか泣きそうだ。かわいいなア…。

「いい、いらない。だいじょうぶだ」

「つれないなア。いいじゃないか、ふたりでやったほうが早いって」

「おまえは、…いままで、しなかっただろう、いちども…」

「あ、そうなの? 怠惰だなア、さすが僕…」

 ぷいとそっぽを向いて草を毟り続けるセデュを見ていたらなんだか悪戯心がむくむく湧いてくる。草に伸ばされた掌にするりと指を添えると、ぴくんと掌が反応する。

「汚れちゃったね、君の指。ほら、こんなに…」

「……」

 セデュの指の股の間に指を差しこむようにして、上から握りしめる。暖かい手だ。僕の大好きな長い指、神経質に切り揃えられた形のいい短い爪、すべすべした手の甲、…

「はな、してくれ、ルー、…」

「えー? どうしようかなア」

 セデュの草むしりの邪魔をしながら、僕は隣で屈んだセデュの膝にもう一方の手を載せる。過剰なボディタッチにセデュはぴょんと飛び上がって、急に立ち上がり、ズカズカ畑を突っ切って歩き出す。唖然と見守っていると、セデュは足元のバケツに蹴躓いて、畑に両手を突いてこけた。

「わわ、大丈夫かい君?」

 ぱたぱたと駆け寄るとセデュは真っ赤な顔のまま、土くれを握りしめていた。

「立てる? 手を貸そうか、ほら…」

「やめてくれ。…もう私を、惑わせるのは…」

「え?」

 セデュは僕を見ない。俯いて土くれを握りしめて、その肩が引き攣るように震えている。

「…セデュ、」

 見ていられなくなって名前を呼ぶと、びくんとその肩が跳ねる。握りしめた手の甲に、ぽつりと雫が滴り落ちる。

「泣いてるの? ねえ、こっちを向いて…」

「わたしはまだ、おまえに…恋をしているんだ。もう残酷な真似はやめてくれ。わたしに飽きたのなら、はやくいなくなってくれ…」

「……」

 ぐいと片腕で無造作に涙を拭って、セデュは立ち上がる。そのまま行ってしまおうとする背中に、僕は後ろからぴょいと飛びついた。

「な、…」

「僕がいつ、君に飽きたって? 一回変態プレイを拒否られたくらいで、この世の終わりみたいな顔しちゃってさ。…可愛いったらないね」

 慌てたように振り返るその頬にチュッと音を立ててキスする。

 みるみる、その顔が真っ赤に染まる。まるでチェリーみたいだ。ふふ。

「僕、なんかムラムラしてきちゃった。ね、君からもキスしてよ。僕に恋、してるんでしょう?」

「……」

 セデュはぱくぱく金魚みたいに口を開閉させてから、もごもご呟いた。

「……ここでは、ダメだ。司祭館の、中でなら…」

「司祭館ってきみのお部屋のあったところ? オーケー、じゃあ待ってるね!」

 ぱっと離れる僕を、セデュはどこか不安そうに窺う。安心させるように僕はにこりと笑ってやって、ひらひらと手を振ってからくるりと踵を返した。



 ベッドに腰かけた僕はシーツの上に放置された首輪をまじまじと眺め回す。首輪自体はレザーでできていて、鍵穴の部分だけ鉄製だ。ただ内側の、首にあたるところには柔らかい布が巻かれていて擦れても痕にならないような工夫がされてる。プレイ用の玩具って感じだ。たぶん合意の上、だったんだろうな。多少エムッ気のある僕は、奴隷みたいにセデュに扱われるって考えただけで、正直かなり興奮するし…。

 いつものセデュは絶対してくれないプレイだから、余計に。…。

 あー考えてたらもっとムラムラしてきた。これはこの世界の変態さんのセデュに抱いてもらわなきゃ、治まらない! 抱いてくれないかなア。たぶんくれるよね? せーえき飲ませてくるみたいな変態さんで、僕に恋してるって言うセデュは、どんな変態的なプレイが好きなんだろう。えへへ、ちょっと期待しちゃうぞ…。これって浮気になるのかな? たぶんならないよね? セデュはセデュだし!

 …いやちょっと待てよ。今僕がここにいるってことは、元の世界の僕のところには、こっちの世界の僕が行ってるってこと、だったりする?

 神父様のセデュの性癖をたぶん狂わせた、悪魔呼ばわりされるほど変態プレイ上等の淫乱な僕が?

 いやーダメだろそれは! 浮気だろもう絶対! セデュは僕には甘々だから、誘われたら絶対断れないもんね! 小悪魔な僕に開発されて、セデュまで変態プレイ大好きになっちゃったらどうしよう! …ちょっと面白いな!

「ルー、待たせてすまない…」

「おわっ、あ、セデュ…」

 ぱたぱたと階段を上がって来たセデュに声をかけられて僕は跳ねる。手と顔を洗ってきたらしいセデュはタオルで手を拭きながら、ほんのり染まった頬で夢見るように僕を見る。

「…いい、のか、しても…」

「え? あ、うん! いいよ! しようよ、もーすっごいのを!」

「…ルー、」

 セデュは頽れるように僕に抱き着いてくる。香水をつけていないセデュの甘い体臭と、ほのかに汗のにおいが香って、行為の最中みたいで、ドキドキする。

「えへ、いいにおい…」

「ルー、ルー、…どこにも行かないで。私の傍にいてほしい…」

「えへ、じょうずに言えたね。えらいえらい。いい子いい子…」

 抱き付いて、ぐりぐり肩に懐いてくる、大型犬みたいなセデュの頭を撫でてやる。艶やかな黒髪が指に触れる。ぴょんと跳ねた、ハーフアップの先っぽが可愛い。

 うふふ、いいなア。年下のセデュに懐かれるっていうのも、新鮮で。いつものセデュは大人で、余裕があって、僕の我儘をハイハイって聞いてくれるばっかりで、滅多に僕に甘えてくれないもんな。そーゆーところも好きだけど! たまには僕に甘えてほしい!

 思わず力む僕を、セデュの蕩けたような瞳が見上げる。頬は仄かなピンク色で、待てされたワンちゃんみたいに、僕の許可をうずうず待っている。

「キス、しよっか。それから僕を脱がせて。君も脱いで、ひとつになろ。…」

 おそるおそる伸ばされたセデュの清潔な指が僕の頬に触れる。柔らかな触れるだけの口づけが、唇にあたり、それからもう一度。

 震える指でボタンを外しながら、可愛い可愛いセデュは、

「また、名前を呼んでほしい」

 と僕に乞うた。

「ん。セデュ、セデュ…だいすきだよ、」

「……」

 感極まったみたいにまた目を潤ませたセデュは、それから僕を押し倒した。…




 …ルー。ルー!

 ぱちりと目を開ける。僕はベッドに横になってる。

 僕の目の前には、セデュが覆いかぶさって、心配そうに、僕を見ている。真っ裸で。見下ろした僕自身も真っ裸だ。セックスの最中に飛んじゃってたみたいだ。変な夢も見ていた。ああ、惜しかったなア。もうちょっと気絶してたら、若いセデュと繋がるところまで、見られたかも…。

「え、へへ…ぼく、ゆめみてた…」

 へらへらする僕にふうと息を吐いて、セデュは身体を起こす。汗みずくの前髪をかき上げてからあれを抜き、ゴムを剥がしててきぱきと処理する。セクシーで如才ない色男のセデュだ。うん、いつものセデュだ。

「年下も、たまにはよかったな…」

 ぽつりと僕が呟くと、セデュがピタリと止まる。

「ほお?」

 みるみる眉間に皺が寄って、仏頂面になったセデュがじとりと僕を見る。うーん、わかりやすいのはいいけど、不機嫌をこうあからさまにするのは、子供っぽいと言えなくもない、かな?

「年下と寝る夢でも見たのか」

「え? んー。まあね、ふふ…」

「……」

 自分で言ったことなのになんかショックを受けたみたいになったセデュが黙り込む。スン…と表情がなくなって、賢者モードって感じで、無言でシーツに掛ける。やがてぽつりと、セデュは言った。

「誰だ」

「え?」

「相手は」

「……」

 夢の相手に嫉妬してるみたいなセデュを、僕はまじまじと眺める。深刻そうな顔で、おおまじめに、セデュは僕を見返す。

 一瞬だけの沈黙があって、僕は堪えきれずに、噴き出した。

「アッハハハハ、なんだよ、夢だろ!? 現実の話じゃないってば、…」

「夢はおまえの願望かもしれないぞ。…よかった、のだろう?」

 また自分で言ったことに自分で傷ついたみたいにセデュはくしゃりと額を抑えて俯く。

 なんだか可哀想になってきて、僕はガバリと起き上がる。そのままの勢いでドンと裸のセデュの背中に飛びつく。

「ぼくは年上のきみが好きだよー。機嫌なおしてよー。ほらほら」

「…一体、誰なんだ。私の知っている人間か?」

「それ聞いてきみ、どうしようって言うのさ。僕をその子に譲るつもり?」

「……。お前が、そいつの方がいいというのなら…」

「え? 本気で言ってる? ちょっと、嫌なんだけど…」

「私だって嫌だ…」

「じゃあそんなこと言わないでよ」

「……」

 セデュはくしゃりと顔を歪めて僕を見る。夢の中の、泣き出しそうなセデュの顔を思い出して、僕は胸がきゅんきゅんする。

 やっぱり、面影あるな。たしかにセデュだったな。僕の知らない頃の、…離れていた間の、セデュだったな。

「ぼくはきみが好きなんだ。夢で見ていたのも、きみだよ。年下のきみ…」

「……。それは今の私に、満足していないということでは?」

「つっかかるなア。夢なんだから、知らないよ。ただ、ぼくの知らなかったころのきみが見られて、幸せだったって、それだけだよ」

「――」

「年下のきみも、年上のきみも、全部きみだよ。ぼくのだいすきなセデュだよ…」

「ルー、…」

 セデュはやっと、納得したようになって、わかってくれたみたいになって、僕の手をぎゅっと握る。僕は年上のきみに頬擦りして、チュッと音を立てて頬にキスして、ぎゅうぎゅうきつくその背中を抱き締める。しばらくそうしてくっついていてから、不意に、セデュが、不満を唱えた。

「ルー、…少し離れてもらえないか」

「えー? やあだ」

「身体を拭こう」

「もー。ムードだいなしにしないでよー。ぼくもっとくっついてたいんだけどー?」

「おまえにこれ以上、無理はさせられない…」

「え? …あ」

 思わずセデュの息子さんを二度見した僕は、本日二度目の爆笑をかました。

「げ、元気だね! 絶倫だね! いやあ若い頃にも負けてないねえ! きみってやつは…」

「……」

 むっつり押し黙ったセデュは僕から目を逸らす。頭の中で計算式でも唱えて、必死に鎮めようとしているのかもしれない。ああ可愛い、なんて可愛いんだ、ぼくのセデュ!

「いーよ、もっかいしよ! またぼくがぶっ飛ぶくらい、きもちよくさせてよ?」

 笑いを抑えてチュッとまた頬にキスして、僕は誘う。

 この世界の僕だって、小悪魔しぐさができるんだぞって気持ちで。

 この世界のセデュは変態プレイはしないけど、僕をたっぷり甘やかして、慈しんで、愛してくれるんだ。だからぼくはそれでいい。

 …たまには変態プレイをしてみるのも、全然オーケーなんだけどね?




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