7 侵入の失敗と証拠
カイルの不調は、薄めたポーションで一時的にしのげる程度に留まっていた。
しかし、ミレイユはそれでは満足できなかった。
「このままでは、王太子妃の座が危うい……」
彼女は決意した。
本物のポーションを、もっと手に入れなければならない。
ある夜、カイルが深い眠りについた隙に、ミレイユは変装して王都郊外へ向かった。
侍女の服を着込み、顔を覆うフードをかぶって、別邸の裏口を探った。
工房の灯りはまだついていた。
ミレイユは扉に近づき、こっそり開けようとした。
しかし、仕掛けられた自動撮影魔法が作動。
小さな魔道具が光り、彼女の姿を記録した。
ミレイユはそれに気づかず中へ入り、棚を探った。
しかし、エレノアは警戒を強めていた。
本物のポーションは隠し棚にしまい、偽物の瓶を置いていた。
ミレイユは偽物の瓶をいくつか掴み、慌てて逃げ出した。
翌朝、エレノアは魔道具の記録を確認した。
映っていたのは、フードをかぶったミレイユの姿。
ピンクの髪と身のこなしで、一目でわかった。
「ミレイユ……やはりね」
エレノアは静かに息を吐き、記録を保存した。
これで、決定的な証拠の一つが揃った。
王宮では、カイルの疑念が強まっていた。
ポーションの効果が弱いことに気づいたことで、ミレイユを見る目が変わり始める。
「ミレイユ……あのポーションは、本物ではないのか?」
ミレイユは慌てて否定したが、カイルの目は冷たかった。
宮廷の噂は、さらに深刻さを増していた。
「殿下の体調が悪化している……」
「ミレイユ様の浪費が原因では……」
「やっぱりエレノア様のポーションが必要なんじゃ……」
ガレスは、そんな声を聞きながら、拳を強く握りしめた。
殿下の愚行を止められなかった自分への苛立ちと、エレノアを失った喪失感が、胸の中で渦巻いていた。
彼女なら、この状況をどう切り抜けるだろう……。
エレノアは工房で、魔道具の記録を眺めながら、静かに目を細めた。
ミレイユの姿がはっきりと残っている。
これで、一歩前進した。
王都の喧騒は、まだ遠くに聞こえるだけ。
しかし、証拠は静かに、確実に揃い始めていた。




