創作のそばにあるもの【エッセイ】
創作の場にいると、ときどき「正しさ」と「やさしさ」の境目が、わからなくなることがあります。
これは、ある出来事をきっかけに考えたことを、少しぼかして書いたものです。
特定の誰かを責める意図はありません。
こうであるから、こうであれ、と押し付ける意図もありません。
ただ、創作のそばにある空気のようなものを、言葉にしてみたくなりました。m(__)m
あるとき、ひとつの作品をめぐって、少し考えさせられる出来事がありました。
ある作者様が、交流のあった若い書き手 様をモデルにした物語を書いておられました。
もちろん、ご本人様(若い書き手様)もそれを喜んでいて、周囲も温かく見守っていた作品でした。
けれどある日、周囲からこんな声が上がりました。
「もしかしたら、少し危ないかもしれない」
その若い書き手 様がまだ未成年であること。
名前が実名に近いのではないかということ。
もし誰かが問題だと感じたら、作者様が困ることになるかもしれない……。
そんな心配からでした。
もちろん、そこに悪意があったわけではありません。
むしろ「大丈夫かな」「何かあったら大変だよ」という、善意の気遣いだったのだと思います。
──ただ、創作というのは、ときどき不思議です。
たとえば、海で子どもたちが砂の城を作っているとき。
遠くから見ていた大人が、ふと、こう言うことがあるかも知れません。
「潮が満ちてきたら危ないかもしれないよ」
その言葉はきっと正しいのでしょう。
波が来れば、砂の城は崩れてしまうかもしれません。
大きな波が来れば、命の危険もあるかもしれません。
けれど、子どもたちにとっては、今、目の前にあるその城こそが、大切な世界だったりします。
守ろうとする言葉が、ときにその世界を終わらせてしまうこともある…。
その作品は最初、検索から外される形になり、やがて作者さんは悩んだ末に、作品そのものを消す決断をされました。
きっと、とても辛い作業だったと思います…。
なぜなら、①ご本人の了承済み(少し込み入っておりますので、詳細の説明は省かせていただきます)、②悪意なし、③楽しい企画で、④周囲も喜んでいた、そういう経緯があったからです。
なのに、「危ないかも知れないから、削除した方がいいよ」と言われた。
私も作品を書いている者の端くれとして、少し理不尽に感じてしまう部分があります。
もしかしたら、善意から始まったことが、「嫌な人間があつまって、自分をおとしめている」。
そんな感情さえ抱いてしまうかも知れません。
楽しく始まったものが、心配や配慮や、いろいろな思いの中で形を変えていく。
むろん、これはネットだけでなく、日常でも起こりうることです。
誰かが悪かったわけではなくて、みんな それぞれの立場で「守ろう」とした結果だったのでしょう。
特に、気軽に情報を発信し、閲覧できるネット環境では、「問題になるかどうか」は後から決まることが多いです。
ご本人様が問題ないと思っていても、周りから見ると問題になる可能性がある。
ここが、とてもズレやすいのだと、私は思うのです。
そして、この件で一番の大きな問題は、「誰が責任を取るか」です。
もし問題が起きて、通報や運営判断、ご親族様からの問い合わせ、などが起きたとき、責任を取るのは、「作品を書いた作者本人」になります。
私もついつい夢中で書いてしまうので、その意識がおろそかになることがあります。
そんな時に、周囲の方々から「これは気を付けた方がいいよ」と言っていただけると、本当にありがたいことだと思うのです。
ただ正直に言うならば、削除までは やりすぎだったのでは?と、その作品を楽しみにしていた、一読者は思うのです。
この『小説家になろう』の仕様では、作品の削除のほかに、①検索除外、②更新停止、③作中の名前変更(架空名)、④内容の変更、などをすることができます。
これはつまり、その作品は残すが、実在性を消すということになります。
ひとまず、このような形にできなかったものかと、そうも思うのです。
実を言うと私は、その交流のあった若い書き手様が、都合により退会されたことを知っています。
その方は「○年後、しっかり親族と話し合って、責任をとれるようになり、了承してもらえたら、戻ってきます」とおっしゃられてました。
周囲は「待っているよ」と、あたたかな声かけをしていました。
そんな架け橋でもある作品が、ひとつ消えてしまったことには、少し寂しい気持ちも残ります。
創作の世界は、人と人のあいだにあります。
だからこそ、自由に書ける喜びと同時に、誰かを思う気持ちや、慎重さも必要になるのでしょう。
そのバランスはとても難しくて、ときどき、こうして立ち止まって考える時間を与えてくれます。
この出来事も、きっとそんな時間のひとつだったのだと思います。
正しさと、やさしさと、自由。
創作の世界では、それらが同じ場所に存在しています。
だからこそ、ときどき難しくなるのでしょう。
それでも、できることなら。
誰かの灯した小さな火が、周りの大切なものを焼いてしまうことがないような、
あまり寂しい形で消えてしまわない世界であればいいな、と私は想うのでした。
拙い言葉ばかりを並べたエッセイですが、お読み下さり、ありがとうございました。m(__)m




