八極拳小架の十字拳、または開弓式について
八極拳小架の十字拳、または開弓式について
※この論文は、戯論として楽しんで貰えれば、と考えています。
癩と癖より異術を学んだ呉鐘が開門した、呉氏開門八極拳。その老架子、老少架は甥の呉瀠により伝承され、呉連枝老師に至る。
娘の呉栄から羅疃の漢族に伝わった八極拳小架(孟村呉家の小架二路)は、張克明、金鳴琦、李大忠、王長錫等に伝承される。
羅疃の金殿陞、そして黄四海から学んだ李書文は、中華武士會や中央国術館等を通して霍殿閣、周馨武、許蘭州、張驤伍らに伝えた。そして、ここから八極拳小架に羅漢打虎式(馬歩掖掌)が加えられる。
李書文の関門弟子である、台湾に渡った劉雲樵伝の八極拳小架では、馬歩掖掌が蟒蛇纏身に変化する。
そして、小架の最初に斧刃脚が付け加えられる。尚この斧刃脚は、他には張立堂派のみ伝えられている。
李書文甥の李東堂ー李樹軒伝の八極拳小架には羅漢打虎式が入っているが、息子の李萼堂ー李志成伝の八極拳小架には羅漢打虎式は入っていない。
更に面白い事に、この二派には、小架の最初の斧刃脚が伝わっていないのである。
回族の呉鍾毓、そして漢族の張玉衡、二系統の八極拳を学んだ馬鳳図と馬英図、その子馬賢達、馬明達、馬令達の伝える八極拳小架は、どちらも馬歩掖掌が入っている。
また、全く別系統の月山八極拳や寧津八極拳(四節八極拳)も伝わっている。
最古を自称する月山八極拳であるが、套路は羅疃張家のものである。また寧津八極拳は、長春八極拳の変化したのもである可能性が高い。
黒虎提という技は、調べてみると李大中系以外の漢族系には全て入っているので、ある意味「漢族系八極拳の看板技」と言っても良いのかも知れない。ちなみに、黒虎提は呉氏の新架二路にも含まれている。
呉氏開門八極拳の両儀(他派では頂肘・馬歩頂肘・頂心肘・螺旋肘・裡門頂肘とも)は、言うまでもなく八極拳を代表するものであるので、ここでは取り上げない。
以上のように、八極拳小架は、伝承者によって技が加えられ、套路が変化して行く。そんな小架の中でも、(両儀以外で)変化の少ない動作がいくつか存在する。
※()内は呉氏開門八極拳での名称
開弓式(十字拳)
托掌(衝天掌)
閉當式(閉肘)
合手(合子手)
揣襠
跪膝
小纏
通背式
掛塔
その中でも、十字拳または開弓式を考えてみたい。伝承者の資質や理解度によって技の変化や増加のある小架の中で、変化が少なく、且つ削除されない技である。
「次は両儀の馬歩から弓歩になり、両腕が曲がって、両手のひらが互いに向き合い、胸の前でボールを抱くように「太極抱球」となる。更に手を動かすと「十字手」になり、続いて両手のひらが向きを変えながら、左手を斜め前方に開きのばし、右手を曲げたまま左手と同じ高さ斜め後方に引き、「開弓」型となる。これが両儀から四象が生ずるという変化過程である。この動作の意味は「内外合一」攻防変化を求めることである。その中には、梱、打、摔、拿などの技法と自然の情勢に添って変化する意味も含まれているのである」
『呉氏開門八極拳』呉連枝著
この様な動作で、拳譜では、
「无极动则生太极,太极生两仪, 两仪生四象」
となっている。自らの中心(太極)から気が動き(両儀)、前後左右・東西南北に意識が広がる(四象)様を表している。
この様な象徴的な動きをする為、この動作を変える事は、技の意味を変えてしまう事に他ならない。従ってそこを変えてしまうと言う事は、理解が間違っているか、師から正しく伝えられていないか、そもそも師から学んでいないか、という事であろう。
実際に各派の八極拳家の套路の演武から十字拳または開弓式を比較してみた所、一部動作が改変されているものが見られた。恐らくこれは、見栄えを意識したか、単純に間違って覚えてしまったかであろう。ちなみに前者の一例は李書文の孫である李志成氏、後者の一例は通備残卸拳を自称する宮沢雅宏氏である。
前者はその弟子が理論通りに套路を打っている事から、本人は「敢えてやっている」と判断出来る。後者は、他の同派拳士、更には本人が師匠と称する馬賢達氏も理論通りに套路を打っている事から、本人の勘違いである事が推測出来る。
「開弓式」は、槍術の「崩槍」の形となる。「徒手の理と兵器の理が同じである」と唱える宮沢雅宏氏だが、拳譜の動作と違っているのであれば、彼の主張は理屈に合わない。形が違うのであれば、「同じ理」では無いことになる。
そもそも、兵器と徒手とでは、「同じ理に基づいて」運用することは基本ではあっても、全く同じであるはずもなく、そこにこだわり過ぎるのは、却って術理を歪曲してしまうことになると思うのだが、どうであろうか?諸賢のご意見を頂きたい。
2026/02/16
補足:上記二名の套路をよく見ると、「獅子張口」の動作を飛ばしているらしい事が分かった。
李志成氏は、頂肘から開弓式への動作が完全に改変されている為、その様な動きになったのであろう。
宮沢雅宏氏は、単純に動作が抜けているようである。
2026/02/23
宮沢雅宏氏が、私をブロックして話を聞いてくれないので…。




