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英雄は帰る場所を求める  作者: 紅蒼べにあお
導に従っていく
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二つ目の対話

 痛み。全身の、特に左腕のそれで覚醒させられる。一切の防御を倉屋に集中させたのもあり、一身でくらってしまった。


 もう体が動かない、紛れもない殺意に焼かれて地に伏せている。何か音がする方に目を向けると、あの機械を身に纏った男がそこに立っていた。


 男は一切の躊躇いも見せず、俺を焼いた手の武器を再度光らせる。


 あぁ、まずいなぁ。倉屋は無事逃げただろうか、こんなのが現れるなんて思いもしなかったし、俺自身も油断してしまっていた。どうしよう。


 倉屋は勿論、ムスリカやゼーラと言った魔族達の顔が浮かぶ。魔王、妹。母さん。父さん。ごめん、これは流石に。


 「これでこの世界も魔王様の物だ。死ね 」


 バイザー越しに見下ろすそれと目が合う。それは無気力で意思を感じられず。光る瞬間、その男の服装から何まで全てが目に焼き付いてしまい。こんな奴が最後に見る物なのか、サリィの笑顔が思い浮かんで。


 男は真っ二つになる。


 間から機械がその姿を現す、一本の剣を振り下ろしており、剣の血を払うと腕で残りを拭う。その所作は機械というより、人間のそれだった。


 雰囲気は先日戦った一つ目のロボットと同じだが、その姿は鎧を着込んだ甲冑武者のような姿だ。棒を繋ぎ合わせた一つ目の姿とはまるで別の躯体。頭部から二つの目が光り俺を見下ろす。


 〈照合、ファイル内データト99.5%ノ合致。不一致項目ノ参照、該当項目アリ。〉


 機械は血に濡れた床を踏み、その膝をついて。


 〈現段階ヲモッテ、優先項目ニ葵ノ守護ヲ追加。及ビソノ命令ヲモッテ行動ヲシマス 〉


 なんだ、何が起こっている。俺の方を見て、訳の分からない事を言い始めたぞ。俺を守護する、そう言ったのか。


 「お前は… 」


 〈対象ノ心拍数ト体温ノ低下。現在地ガ危険ト判断シ、避難行動ニ移ル 〉


 「は? いやちょっとまっ 」


 硬い腕に体を起こされて、そのまま荷物でも持つかのように担がれる。体のダメージが大きすぎて、抵抗も出来ずにされるがままに俺は運ばれ始めた。


 〈周囲ニ魔族ノ反応ナシ、安全地ノ選定開始…発見、移動シマス 〉


 何をしたいのかわからないが、取り合えず俺の命をどうこうするつもりはないようだ。発言からもあくまで魔族を対象にしているだけでそれ以外については眼中にはないという事だ。やはり先日の一つ目と同じ存在、同じ機械というわけだ。


 違う事と言えば、やはり喋る事。もしかしたらこちらから何か探りを入れられるのでは。俺自身には何もしないのなら、少なくとも身の安全は保障されている。


 「なぁ、聞いても良いか? 」


 〈優先事項カラノ命令ヲ受諾。質疑ヘノ解答、項目ニ該当アリ。質疑ニ答エマス 〉


 「やりづらいな… 」


 病院の廊下は暗く、その灯りでは窓の外は見通せない。外では何か騒ぎが起きており、まぁこれだけ派手な爆発があったのなら当然だろう。


 「お前らは何が目的で、魔族を殺すんだ 」


 〈解答、ソレガ最優先事項ノ為。コノ項目ハ優先事項、及び創造主ノ命令デモ上書キハサレマセン 〉


 これは不味い解答だ。俺はこいつらの親玉、今の発言ならその創造主とやらの命令で魔族を殺しているのだと思っていたが。逆だ、魔族を殺す事がこいつらは目的なんだ。行動自体が目的だなんて、俺からしたらまさに機械そのもの。せめて楽しいからくらいの理由でもあった方がマシだ。それも良いわけじゃないが。


 「その創造主ってのは? 」


 〈解答、創造主トハ撫子様 〉


 撫子、それは。いや、そんな。なんでその名前が今出てくるんだ。どうして、こんな機械が、違う、そもそもなんでこんな機械を。


 〈葵、貴方トハ血縁上ハ母ト呼バレル存在ニアタリマス 〉


 俺なんかの気持ちを意に介さず、機械は俺の質問に全て答えた。


 何故だ。どうして。母さんが…作った?母さんにそんな知識も技術もあるわけない。いや、そもそもなんで母さんはこんな物を作ったんだ。だって、魔族を殺すって事は、魔王を。


 そこで思い出す。あのバイザーを付けた男、あの男の発言を。


 「なぁ!魔族って事は魔王も殺すって事で良いんだよな!? 」


 〈解答、魔王ノ殺害ハ最優先事項ニ付随シタ項目。抹殺対象ニアタリマス 〉


 「なら、お前らはいつの時代のから来た! 魔王はまだ生きているのか?! 」


 〈解答、魔王ハ生キテイマス。我々ハ魔王トソノ配下ヲ殺スタメニ送ラレマシタ。時代ハ…計測不可能、時間ノ処理マデマダカカリマス 〉


 魔王が生きている。それなら少なくとも俺より前の時代に来ていたという事か。この機械が果たして魔王の名前を憶えているのか、機械がそんな物に該当するのかわからないが。


 俺が居た時代より前に母さんは居て、魔族と、魔王と戦ってたって事なのか。


 まさか、自分が想像した以上に、俺たちは無意味な戦いをさせられていたという事だ。笑ってしまう、母さんも魔王を倒す為にこんな機械を作って、それが今となっては俺がそれを破壊する側になってるなんて。


 「なぁ、魔族を殺すなって命令はダメなのか 」


 〈最優先事項ハ他ノ命令デ上書キデキマセン 〉


 「そうか…それなら機能の停止を命令出来るか? 」


 〈命令受諾、一時的ニ機能ヲ停止デキマス。ソノ間、魔族ノ索敵ヲ続行シマス 〉


 「あ、おい!今するな!ここまで運んだんならもう持ってってくれ! 」


 階段を下りて、既に二階まで降りていた。それならいっそ病院のフロントまで運んでもらった方がマシだ。ここまで誰ともすれ違わなかったのは幸いと言うべきだが、それにしても外で見た風景とは裏腹に院内が静か過ぎる。誰かに見られると覚悟をしていたが、そんな気配は一つもしない。


 「そういやお前らってなんか人避け…なんかそういう魔術でも使えるのか? 」


 〈解答、我々ニハ魔術ヲ行使スル機能ハアリマセン。抗魔力デノミ可動シテイマス 〉


 うーん、こいつもやっぱり抗魔力で可動しているのか。なら魔術なんて行使できない、それならこの静けさはいったいなんだ。


 一階まで降り、機械の手がドアにかかる瞬間。体が宙に浮くような、突然重力に見放されたような浮遊感を覚える。二つ目が俺の体を投げて手すりの上を越えて壁に打ち付けられる。


 一瞬何が起きたのかわからず、二つ目の方を見るとその腕が切断されて俺より高く宙を浮いて、その胴に穴が空いていた。


 そこから覗き込んでいたのは、真っ二つにされた筈のバイザーを付けた男だった。

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