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英雄は帰る場所を求める  作者: 紅蒼べにあお
導に従っていく

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見え始める影ー後編ー

 転移陣、或いは転移魔術。あの世界においても特別な魔術に位置しており、その行使条件はシンプルだが、同時に難易度が高い。陣を描く、これをすればある程度魔力を持つ者なら誰でも行使できる。問題はその転移先がどこに向かっているのか、何時なのか、これらは陣の模様で決まってくる。

 

 俺が知るのはその程度、正直ちゃんとした魔力が無い以上は自分でどうこうするものではないと思っていた。


 「こんな狭い土地になんでそんな転移陣が集中してるんだよ!? 」


 それはこの市を中心に辛うじて県境、市境付近に発生しているだけでそのほとんどが俺たちの住む市に集中していた。


 異常だ、日本全国でこれが発生しているのなら、いやそれはそれで問題だが。自分たちのいるこの場所でここまで集中的なのは意味がわからなかった。


 「お、ここはあたくしが転移した場所ねん 」


 そう言って指した箇所は、オミナが居た場所より少し離れた箇所だった。


 俺もそれに釣られて自分が転移した場所、自分達の家があった場所を見る。そこにも残酷にバツは付けられていた。


 「いつからこれを? 」


 「いえ、これをしていたのは我々ではありません。別の人物がこれを行っており、これは写しです 」


 写しといことは原本があるという事、どうしてそっちを持ってこなかったのかというのは野暮に違いない。


 「それ、私が写してきたんです 」


 先ほどから険しい顔でどこか元気らしい元気がなかったゼーラから。


 「全部を写すのは難しくて、その都度見て何度か場所を書き写していたんです。印も多くって一度で全部は難しかったんですけど、この間やっと完成したんです 」


 依然として声は弱く、普段の彼女からは連想できない声色だった。どうしてそんなに元気がないのだろうかと、思ったら。ゼーラは思い立ったように顔を俺に向けて何かを言おうとするが。


 「ゼーラ、それは最後にしましょう 」


 その一言で再び元気を無くす、何か重要な事に二人は気付いているのだろうが俺にはそれがなんなのかまだ検討がつかなかった。


 「この印が転移が発生した場所を指しているのだとわかったのですが、今回オミナ様が転移してきたことでその認識が間違っていた事がわかりました 」


 「と言うと? 」


 「この地図…その写し元には、今オミナ様がさした転移した場所に印が、一週間以上前にありました 」


 転移陣が発生した場所、ではなく。これから発生する場所を記している。


 「なんで、そいつはわかるんだ? 」


 「これは我々にも…、しかし、予め発生する箇所がわかる術があるという事も今回ではっきりわかりました 」


 ムスリカが拳を強く握る。それが何を意味するのかまだわからない。


 「そして、この人物はその場所を予め予想できるとなるなら転移陣がいつ発生するのかも把握していると思います 」


 「あたくしを閉じ込めた奴、それがこいつってことね 」


 「本当に覚えてないのですか? 」


 「それに関してもう諦めてほしいわねん。記憶に干渉する魔術なんてあたくしも知らないし、ほんとうに覚えられてないのよ 」


 この口ぶりから、もうこの場にいる全員がその正体をわかっているようだった。俺だけが知らないというこの状況にもどかしさを感じずにはいられない。だが、先ほどのムスリカの発言からそれを明かすのはこの話の最後という事になりそうだ。


 「そして、その人物があの戦闘の後に葵さんの元に居たのだと私は予測しているんです 」


 「まぁ、話の流れからしてそうだろうなとは思ったが 」


 じゃあそいつが俺の左腕を治してくれたのだ、ここまでの話の中でもその人物は何の目的があって俺にこんな事をしてくれたのかはわからないが。感謝を向ければ良いのかそこすら曖昧だ。


 「同一人物の魔力によって左腕が治されたのなら、あの魔力の特性上 」


 「あ、ああ!もしかして、あの魔力壁と同じ物が?! 」


 「そうなります。やけどまで治さなかったのは本当に謎でしかありませんが 」


 抗魔力すら受け付けない性質を持ったあの魔力なら確かに回復だろうが何だろうが魔術の行使をしたところで意味をなさないだろう。そしてそんなものが俺の左腕に、今後抗魔力を使う時に支障をきたさなければ良いが。


 「今回の件に関してもいろいろ追求したいことがありますが、現状そちらはわからない事だらけです。私としてはこの人の方に進展があった以上、こちらを追求していくべきだと判断しました 」


 先ほどからの物言いでどこか納得のいかない言い方をしているなと思ったが、それに気づいて身を乗り出す。


 「まさか! この地図を書いてるのは?! 」


 「はい、人です。本当に最初は私の知らない、オミナ様のように後からこちらに来た魔族の可能性も考慮しましたが、結局その後の調査でそういった関わりすら見えてきませんでした 」


 現状はその人物による単独犯ということになる。まさか魔族ではなく人があの魔力を生成し、行使していたというのは驚く反面、納得のいく答えでもあった。あそこまで強く他の魔力を拒絶するものを、魔力で体が構成されている魔族が生み出せるわけがない。


 それほどの人物が今もどこかで、暗躍している。今回のロボットのように魔族を殺戮しかねないような物が転移してくるとわかっていながらそれを放置している。


 許せない。


 「葵さん。この地図の原本はどこにあったと思いますか? 」


 「いきなりなんだよ 」


 その目はふざけているわけではなく、真剣な眼差しで俺を射抜く。流れ的にそんな梯子を外すような事はしないだろうが、より緊張感が増していた。


 言葉から察するに俺が知る場所という事だ。転移陣についてなんだから、きっと俺が転移したきっかけの場所。俺の元家なんじゃないかと答えて。


 「カフェですよ 」


 「は? 」


 「ゼーラはそこで、怪しまれないように少しづつ写しを作成してくれました 」


 あ、あれ。震える、長い事感じていた違和感が、歯に挟まった肉の筋が取れたような些細な爽快感とそれを置き去りにしていく絶望と落胆。これまでの関係性全てにひびが入って砕けるような。


 そっか、だからゼーラは。そりゃそんな顔するよな、俺だってそんな顔するよ。


 どうしてそんな事をしてるんだ。聞けば教えてくれるだろうか。


 なぁなんでだよ。


 歯ぎしりをしながら、悔しさを言葉にのせて。その全てから導かれた結論をムスリカは述べた。


 「これを作成していたのは、阿久井さんです 」


 お前はいったい、何者なんだ?

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