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第2話 火の夜に残ったもの

焚き火の夜は、ひとつの戦いの終わりと、物語の静かな始まりを告げていた。

自信も力もないまま、それでも誰かのために動いた少年の手のひらに、初めて小さな熱が宿る。

今回の物語は、仲間との絆、そして“強くなりたい”という素直な想いの芽生えを描きます。

夜が来るのは早かった。


けれど、それはいつもの夜とは違っていた。


村の広場では焚き火が灯され、ギルドの一団と村人たちが囲むように集まっていた。

戦いのあと、ほっと息をつくような静けさと、安堵の入り混じったざわめきが、そこにはあった。


「乾杯っ!」


木のカップを持ち上げたレオンの声に、周囲がわっと沸く。

疲れた体を労うように、村の女たちが用意した食事が配られ、子どもたちは興味津々に冒険者たちを眺めていた。


アオイはその輪の少し外れで、パンのかけらをかじっていた。


「……なんか、すげぇな」


自分の席があるのかもわからず、誰に話しかけていいのかもわからない。

村の人間としても、ギルドの仲間としても、中途半端な場所にいる気がした。


「アオイ!」


そのとき、名前を呼ぶ声がして、顔を上げる。


ユナだった。

すでに包帯を巻かれていたが、顔色はまだ少し青い。それでも彼女は笑っていた。


「……大丈夫なの?」


「うん。癒し魔法もあるし、ちゃんと休めば大丈夫だよ。ありがとうね、あの時来てくれて」


「いや、俺なんか……」


言いかけた言葉を、ユナが手で制した。


「またそれ。『俺なんか』って言うの、もうやめて?」


「……」


「あなた、あのとき本気で走ってきてくれた。あれだけで十分、すごいよ」


言葉が、うまく返せなかった。


嬉しいのに、照れくさい。

胸の奥がくすぐったくなって、アオイは黙ってうなずいた。


「ねえ、ちょっと歩かない? 外、空気いいから」


ユナの提案に、アオイは思わず立ち上がっていた。


 


二人は焚き火の光から少し離れ、小道を歩いていく。

夜風が頬を撫で、木々の間から月明かりがこぼれていた。


「なんか……静かだね」


「うん。こういう時間、好きなんだ」


ユナは立ち止まって空を見上げた。

金の髪が月に照らされ、ほのかに光って見えた。


「……君は、ずっとあのパーティで旅してたの?」


「うん、もう三年くらいかな。出会ったのはもっと前だけど、ちゃんと組んだのはそれくらい」


「そっか……」


アオイは思う。


自分には、まだ何もない。

仲間も、過去も、誇れるような強さも。


けれど、今こうして一緒に歩いている。


それが、不思議で仕方なかった。


「……なあ、俺、ほんとにパーティに入ってていいのか?」


「うん」


即答だった。


「まだまだこれからだよ。でも、あなたがいてくれると、きっと何かが変わっていく気がするんだ」


その言葉は、アオイの胸の奥に静かに灯った。


「ありがとう」


「こちらこそ」


 


ふと、アオイは小さく拳を握った。


枝を振ったときの感覚が、まだ身体に残っている。

心の奥で、何かが静かに目を覚まし始めていた。


(俺は……強くなりたい)


ただ守られる側じゃなくて、守る側に。


ユナの笑顔を、誰かの命を、ちゃんと自分の力で守れるように。


そう思った。


そしてアオイは、そっと呟いた。


「……まずは、体を鍛えるところからだな」


ユナがくすっと笑う。


「その意気だね、アオイ君」


夜空には、いくつもの星が瞬いていた。


次の日、朝焼けが村を静かに照らしていた。


アオイは、いつものように広場の隅でひとり、木の棒を振っていた。

昨日の戦いの余韻が、身体の奥に残っている。

腕や脇腹の痛みが、確かに「戦った証拠」としてそこにある。


「……一歩でも前に」


呟きながら、何度も何度も素振りを繰り返す。

感覚を忘れないように。昨日の恐怖と、あの一瞬の確信を、曖昧な夢にしないように。


そのとき、背後から足音が聞こえた。


「朝から元気じゃねえか。やっぱ若いのは違うな」


レオンだった。ギルドのリーダーで、戦士。

彼は昨日よりもずっと元気そうで、もう額の包帯も小さくなっていた。


「おはようございます……って、あれ、レオンさん、もう動いて大丈夫なんですか?」


「ん? ああ、寝てたら治ったわ」


「いや、それは無茶っていうか……」


「ははは、気にすんな。こう見えて回復魔法には慣れててな」


レオンはそう言って、腰に手を当てながらアオイの動きを眺めていた。


「その棒、昨日のと同じか?」


「いや……昨日のは折れちゃって。これは新しいやつ」


「ふーん。構え、悪くねえな。素人にしちゃ筋がいい」


「……ほんとですか?」


「嘘ついても意味ねえだろ。力の使い方も見込みがある。ただ――」


レオンが一歩近づいてきた。


「筋がいいだけじゃ、死ぬ。昨日のは“たまたま”だ」


アオイは、自然と背筋を伸ばしていた。

責める口調じゃない。それでも、言葉には重みがあった。


「お前が本気で強くなりたいなら、基礎から叩き込む。覚悟はあるか?」


「……あります」


「よし。なら、今日から毎朝ここで稽古な。しばらくは基礎の基礎だけど、覚えとけ。俺は手加減しねえぞ?」


「はい!」


自然と声が大きくなった。


身体が、熱くなる。

昨日とは違う。目の前に“道”があると感じられる。


「よし、じゃあ始めるぞ。まずは“構え”の確認からだ」


「はい、よろしくお願いします!」


そのとき、少し離れた場所からこちらを見ていた少女がひとり。


ユナだった。


彼女はそっと微笑んでから、また宿の方へと歩いていった。

その背中は静かで、どこか安心したように見えた。


そしてアオイは、まっすぐ前を向いた。


枝を握る手が、もう昨日のそれではなかった。

あの戦いが、確かに何かを変え始めている。


朝の光の中で、新しい一日が始まろうとしていた。


朝の稽古を終えたあと、アオイは軽く身体を拭いてから、村の坂道を下っていった。

目指すのは、村はずれにある小さな畑のそば。

そこに、彼がいつも手伝っている老夫婦が住んでいた。


「アオイ坊、来てくれたのかい」


「おはようございます、おばあさん。今日も元気そうでなによりです」


「この歳になって“元気”って言われると照れるねえ……でも、ありがとよ」


おばあさんがにっこり笑う隣で、おじいさんは黙々と鍬を振るっていた。

アオイはすぐに手伝いに入ると、慣れた様子で土を返し始めた。


 


この日常が、好きだった。


自分には何もなかった。

名前以外の記憶も、帰るべき場所も。

それでも、この村の人々は、暖かく受け入れてくれた。


だからこそ――この村を、守りたかったのだ。


 


「昨日はすごかったんだって?」


おばあさんがふと、手を止めて言った。


「えっ……あ、はい。ちょっとだけ……」


「ちょっとだけで、あんな魔物を追い払えるもんかい。村の子たちもみんな、アオイを誇りに思ってるよ」


「……そんな、大したことじゃないです。僕はただ……」


「ただ、誰かを守ろうとした。それだけで十分さね」


その言葉に、アオイはうまく返せなかった。


あのときの恐怖、覚悟、そして――迷い。

全部ひっくるめて、自分の中に残っている。


でも、それを言葉にするには、まだ早すぎる気がしていた。


 


「アオイ君!」


声が飛んできたのは、そのときだった。

畑の先、坂道を駆けてくる少女がいた。


ユナだった。


「あっ……! ご、ごめん、急に」


「あ、ううん。大丈夫」


少し息を切らせながらも、ユナは笑った。


「レオンが言ってたの。稽古、ちゃんとやってたって」


「え、ああ……うん。一応、ね」


「ふふっ、照れてる」


アオイは顔を赤くして、視線を逸らした。


 


「ねえ、少しだけ、歩かない?」


ユナのその言葉に、アオイは小さく頷いた。


二人は畑を抜け、小道へと入っていった。

蝉の声が、静かに響く。


 


「どうして、僕に声をかけたの?」


アオイがふいに口を開いた。

昨日から、ずっと気になっていたこと。


「あのとき、僕が誰かもよく知らなかったはずなのに……」


ユナは、少しだけ足を止めた。


「……たぶん、勘。というか、気配っていうのかな」


「気配?」


「うん。“あ、この人は、まだ立ち止まってない”って思ったの。何かを失くしてるけど、それでも歩いてる。そういう人って、私……ほっとけなくて」


アオイはしばらく黙っていた。


そして、小さく息を吐いてから言った。


「ありがとう。たぶん――あの声がなかったら、僕は昨日、あそこに行けなかったと思う」


「そうかな?」


「うん、きっと」


ユナは、どこか寂しそうに笑った。


「そっか……。なら、よかった」


 


蝉の声が、少しだけ強くなった気がした。


ユナたちの姿が小さく見えなくなっていくのを、アオイは村のはずれからぼんやりと見送っていた。


「……もう、行っちゃったか」


そう呟いてから、ふと拳を握る。


力が、入らない。

さっきまでの高揚が嘘みたいに、指先から熱が抜けていく。


──俺なんかで、よかったのか?


そんな思いが、じわじわと心を侵食していく。


あの戦いで身体は確かに動いた。

でもそれは、恐怖と衝動に突き動かされた一瞬のこと。

本当に“戦えた”のか、自分でもよくわからなかった。


(俺……ギルドの人たちと一緒に行くなんて、本当に……)


気づけば、拳を強く握りしめていた。


「アオイ!」


後ろから、元気な声が響いた。

振り返ると、村の鍛冶屋アルドが工具を肩に担いでこちらへ歩いてくる。


「どうした、またひとりで塞ぎ込んで。昨日は派手にやったんだろ? 村じゃ大騒ぎだったぞ」


「……派手っていうか、無茶しただけだよ」


「それでもだ。お前が誰かを助けたのは間違いねえ。自信持て」


アルドはそう言って、ガツンとアオイの肩を叩いた。


痛みとともに、少しだけ胸が軽くなる。


「で、どうするんだ? “冒険者”になるんだろ?」


「……わかんない。まだ、何も決めてないよ」


「決めてないって、そりゃねえだろ。せっかく声かけられたんだ、行ってこいよ」


「簡単に言うなよ……!」


思わず語気を強めてしまった。


アルドは目を見開いたあと、静かにうなずいた。


「……悪い」


「こっちこそ……ごめん」


しばしの沈黙。

それを破ったのは、アルドのぼそりとした一言だった。


「お前さ、自分が“普通”だと思ってんだろ?」


「……え?」


「だから臆病になる。“俺なんかにできるわけがない”ってな」


アオイは返す言葉を失った。


「でもよ、他人から見りゃ――その“普通”がちげぇんだよ。少なくとも、あの連中はお前の中に何かを見た。だから、声をかけた。そうだろ?」


言葉が、胸に染みた。


アルドは肩をすくめて笑う。


「ま、決めるのは自分だ。けどな、ひとつだけ忠告しとく」


「……何?」


「本気で行くなら、そろそろ覚悟決めとけ。半端な気持ちじゃ、命なんてすぐ消える」


言い終えると、アルドは道具袋を背負い直し、工房のほうへと戻っていった。


アオイはしばらくその背を見送っていた。


そして、もう一度、拳を握る。


今度は、少しだけ熱が戻っていた。


(……俺がこの手で守った命が、あった)


それが幻だったとしてもいい。

でも、確かに誰かが「ありがとう」と言ってくれた。


なら、もう少しだけ――この“何か”を信じてみたい。


空を見上げると、朝の雲がゆっくりと流れていた。


(……俺は、何かを探してるんだろうか)


それがなんなのかはまだわからない。

でも、心がざわつくのを止められなかった。


 


――その夜、アオイは村を出ることを決めた。


翌朝。

村の入口には、朝靄のなかに微かに揺れる灯火があった。


アオイは小さな荷を背負い、そこに立っていた。


「……さて、と」


軽く深呼吸して、靴紐を結び直す。

村を出るのは、これが初めてだった。

道の向こうには、昨日別れたばかりの〈暁星の灯〉の姿があった。


「来たな」


レオンが腕を組んでこちらを見ていた。

その隣にはユナ、ミレイ、ガルド――昨日と同じ、でもどこか少しだけ違って見えた。


「迷ってたんだけどね。でも、来てくれて嬉しい」


ユナがそう言って、にっこりと笑う。


「よし、それじゃ早速だが……“お試し”といこうか」


「え?」


「急に連れてくわけにはいかねえからな。お前の実力、ちょっと見せてもらう」


レオンが背中の剣を軽く叩いた。

アオイは思わずたじろいだが、ミレイが横から口を挟んで笑う。


「そんな怖い顔しないの。模擬戦よ、模擬戦。お互い怪我しない程度にね」


「……わかりました」


アオイは頷いた。

心臓が高鳴る。

それでも、昨日のように足はすくまなかった。


「武器はどうする? 昨日みたいに枝か?」


「……いや、剣を」


村で使っていた練習用の剣を背負ってきていた。

鉄ではないが、それなりに重みのあるものだ。


「なるほど。よし、じゃあ少しずつ動いてみようか。相手は俺だ」


レオンが構える。

アオイも静かに構えをとった。


(動けるか……?)


深呼吸一つ。

重心を落とし、目線を定める。


数秒の静寂のあと――レオンが仕掛けた。


重く鋭い踏み込み。

だがアオイはそれを予測したかのように、すっと身を捻ってかわす。


「おっ、反応いいじゃねえか」


レオンが軽く目を細めた。


(今の、なんで動けたんだ……?)


自分でもよくわからなかった。

だが確かに、身体が自然と動いた。


もう一度、打ち合う。

レオンの刃に弾かれそうになった瞬間――


アオイの足が、地面を強く蹴った。


「おわっ、はえぇ……!」


その場を離脱し、体勢を立て直す。


「動きのキレが素人離れしてるわね」


ミレイがぽつりと呟いた。


「本人は無意識かもしれないけど、“鍛えられた身体”の動きだったよ」


ユナも穏やかに言葉を添える。


アオイは息を整えながら、ふと自分の手を見た。


――これは、俺の身体か?


今まで感じたことのない、芯の通った感覚。

まだ何かが“開かれてない”気もするが、それでも、確かに“芯”がそこにあった。


「……はい、終わり」


レオンが手をあげて告げた。


「強くはねえ。でも、見込みはある。お前の動き、ちゃんと地に足がついてた。多分、素直に吸収できるタイプだ」


「……ありがとうございます」


「一緒に鍛えていくうちに、“何か”が開くかもしれねぇな」


その言葉に、アオイは少しだけ目を見開いた。


「何か……」


(俺の中の、“何か”)


言葉にはできないが、それがある気がする。


──もしかしたら、俺にも。


そんな予感を抱きながら、アオイはもう一度拳を握った。


山道を抜ける風が、少し冷たかった。

アオイたちは、訓練所へと向かう道を歩いていた。

昨日の戦いの傷も癒え、全員が揃っている。


「ふあ〜、朝から歩きっぱなしってのも、結構こたえるわねぇ」


ミレイが背伸びをしながら言った。


「お前が一番軽装だろ。どの口が言う」


レオンが呆れたように返す。


「軽いから疲れるのよ。重りがあったほうがリズム取れるっていうかさ」


「意味わかんねぇよ」


そんな他愛ない会話が、アオイには心地よかった。

見知らぬ世界に一歩足を踏み入れたばかりなのに、どこか安心できた。


ガルドは相変わらず無口で、時折みんなの後ろを歩いていた。

だが、アオイがふと足を滑らせそうになったとき、何も言わず手を添えてくれた。


「……ありがとう」


ガルドは、軽く頷くだけだった。


「ねえ、アオイ。昨日の戦いのこと、どう思った?」


ふいに、ユナが隣に並んで訊ねてきた。


「……怖かった。けど、後悔はしてない」


「そう。……それって、すごいことだよ」


ユナの声はあたたかい。

だけど、アオイの心の奥には小さなひっかかりがあった。


──あのとき、自分には“何も”なかった。


魔法も使えない。

青くも、光らない。

あの光――ユナが見せた癒しの魔法のような、明確な“力”が、自分にはない。


(……これで、本当に役に立てるのか?)


そのときだった。


「アオイ、ちょっとだけ手を貸して」


ユナが不意に言った。

彼女は道の脇に倒れていた古い倒木を指差した。


「これ、通れないからどけたいんだけど、私ひとりじゃ無理で」


「うん、わかった」


アオイは素直に近づき、倒木に手をかけた。

だが――


(重い……?)


いや、違う。

“重いはずなのに、持ち上がる”。


「よっ……と!」


ズズ……ッと音を立てて、アオイは倒木をずらした。

思ったよりもずっと簡単に。


「すご……それ、私とレオンのふたりがかりでも重かったやつだよ?」


ユナが目を丸くした。


「えっ、あれを……?」


アオイは自分の手を見た。

確かに、昨日の戦いのときと同じような感覚があった。


「なんかさ、アオイって“身体の芯”に力が通ってる感じがするのよね」


ミレイがぽつりと呟いた。


「もしかしたら、“身体強化系”の素質があるのかも」


その言葉に、ユナも静かに頷いた。


「うん。そうかもしれない」


(身体強化……)


それは、魔法とは少し違う系統。

魔力を全身に巡らせ、身体能力を底上げする“基礎の魔法”。


「ま、まだ何もできないけど……」


アオイが控えめに言うと、レオンがニヤッと笑った。


「だったらこれから身につけりゃいい。素質がある奴は、何かの拍子に覚醒するもんさ」


「……覚醒?」


「身体が勝手に反応するんだよ。極限のときにな」


その言葉に、アオイの心がふと震えた。


(あのとき……俺が枝を構えた瞬間……)


思い出す。あの重心の取り方、無意識の動き。

あれは“鍛えたから”だけじゃない。


「……試してみたいな。俺に何ができるのか」


小さく、でも確かな声でそう言うと、みんなの表情が少しだけ変わった。


「おう、いい心意気だ」


レオンが背中を叩いた。


「だったら、訓練所に着いたら“試験”を受けてもらうぜ」


「試験……?」


「ギルドの正式加入テストみたいなもんさ。ま、俺たちが推薦してるから大目に見られると思うけどな」


「手加減してもらうつもりはないけどね〜?」


ミレイが笑った。


アオイはその空気に、自然と笑みを返した。


そして、ふと思う。


――青く光らなくてもいい。

今は、自分の“歩幅”で、前に進めばいいんだと。


夕暮れの匂いが、ほんの少しだけ混じる風の中で、彼はまっすぐ前を見つめて歩き出した。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

第2話では、アオイが初めて“何かを守りたい”と思った気持ちと、それに応えるように少しずつ動き出す周囲との関係を描きました。

自分の“芯”を信じられるようになるまでには、まだ時間がかかるかもしれません。

けれど、そっと手を差し伸べてくれる誰かがいるからこそ、一歩を踏み出せる——そんな優しさが届けば嬉しいです。

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