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3話 徐々に変わっていく日常

 歓迎会の次の日。俺は今日も真面目に大学に通い、講義室の席に座っていた。

 新は、どうやらお得意のサボりのようだ。成績は良いのだから、非常に厄介である。


 そんな中珍しく、今日は空いている隣の席に誰かが座ってきた。

 いつもは新が座っているし、ボッチの時でもわざわざ他の人の隣に座ろうとする奴はいない。受講人数もそれほど多くない講義なので、席もスカスカだし、どんな変な奴が座りに来たんだと見てみると……


「おはよう楽くん。改めて、昨日はありがとね」


 天使に限りなく近い高輪先輩でした。てか何隣に座ってきてるの? 近くない? それ、俺以外の男にやっちゃだめですよ?



「高輪先輩もこの講義とってたんですね」


「まぁね。あれ、今日は友達の新くんはいないの?」


「あいつはサボりです。あいつはやりたい事とか、気持ちで行動する人間なので」



 今日はこうして良い事もあったし、新のサボりもたまには役に立つな。この講義はずっと休んでていいぞ。講義資料は見せてやらないけど。



「そっか。楽くんはサボらないの?」


「基本サボらないですね。親からも色々出してもらってるんで」


「偉いね。まぁでも無理はダメだよ? 取ってる講義とか知っている講義なら、この前のお礼で助けてあげるから」



 この先輩、えぐい。ナチュラルに男を落とす天才だ。ダメ男製造機だこりゃ。



「先輩、俺を過大評価しすぎじゃないですか? 昨日会って、一回助けただけですよ?」


「一回助けてくれたじゃん。それに楽君、いい人そうだし」


「俺だって、色々悪いことを思ったりもしますよ」


「でも何だかんだ真面目で優しいじゃん。私は、楽くんと仲良くしたいなって思ったの。ダメ?」



 可愛い表情をして言うそんな凄まじい質問を断れるわけもなく、俺と高輪先輩は友達? になった。


 ただまた別な問題が浮上する。それは、高輪先輩の()()()だ。

 実際、さっきから多くの視線を感じる。そりゃそうだ。超絶美人で有名な高輪先輩と仲良くしていれば、興味や妬みなどの色々な感情が生まれ、俺にも注目するのだろう。

 徐々に、俺の大学生活は変化しつつあった。



 ◇◇◇



 高輪先輩との午前の講義を終え、午後になると新が登校してきた。サボっているのに、何か堂々としているの腹立つな。


「またサボってんじゃねぇよ新。何で午後から、そう堂々と来てるんだよ」


「わりわり。ここ最近、睡眠の負債が溜まっててさ。朝は世界の終わりが来たかと思ってたけど、仮眠したら復活したわ」


「全くお前ってやつは……」


 そうやって新と会話しながら、午後の講義の教室に向かっていると、やけに何か騒がしい。人も観光地のように溢れかえっている。


「あ~サークルの勧誘か。俺のサークルも、何かやるって言ってたな」


 俺の疑問に思っている表情を汲み取ったのか、新が俺に説明してくれた。新は色々なサークルを転々とし、今はゲームサークルが気に入っているようだ。

 ちなみに俺は入っていない。あまり趣味嗜好に合うものもなかったし、空き時間は趣味に使いたい。


「おっ、君たちも是非オタク同好会に入らないかい? 色々と楽しめるよ」


 一人で色々と考えていると、新入生と間違えられたのか、俺たちも勧誘された。オタク同好会があったことは初耳だし、何しろ話しかけてきた先輩はイケメンで、校内でも有名の……


「あ~俺と楽は二年なんすよ。俺の顔、見覚えありませんか、渋谷しぶや先輩?」


「あっ、新君か。それはそれは悪いことをしたね。まぁ僕が部長だし、君が入りたいと言えば歓迎するよ」


「へっ、そんな事言うと思います? それじゃ」



 新はそう言いながら、俺の肩を強く持って渋谷先輩から遠ざけようとする。新の珍しい行動に、俺は何が何だか分からなかった。

 新が渋谷先輩と言っていた先輩、渋谷しぶや銀太ぎんたは校内でも有名人である。成績優秀、運動もできて、人当たりも良い。しかも、超絶イケメンとまできた。男版の高輪先輩のような感じだろうか。

 そんな渋谷先輩に、なぜ新は嫌悪感を抱いているような、何か敵対心をむき出しにしているような気がしたのだろうか……俺は、気になって新に問いかけた。



「なぁ新。お前、何でそんな渋谷先輩を嫌ってるんだ?」


「実は、渋谷先輩って悪い噂があるんだよ。俺は信頼できる奴から聞いたし、ほぼ間違いないと思っているんだけど。あいつ、かなりの悪者だぜ」



 新の言葉は、にわかには信じがたい言葉だった。渋谷先輩が一番チヤホヤされるのは、聖人とまで呼ばれる性格や雰囲気にあって、どんな人でも見捨てないとまで言われている、カリスマ的存在にまである。

 かといって、新が嘘をついているとも考えにくい。根は良い奴だし、俺なんかより頭も良いし、周りも見えている。尊敬できる奴なのは間違いない。



「そんな人には見えないけどな」


「それで騙されるんだよ。あいつはあーやって仲間を増やし、自分の権力を更に強めている。高輪先輩はのほほんとしている感じだったけど、渋谷先輩はズルくて、狡猾で頭脳派なんだよ」


「まぁ確かに、オタク同好会というのも引っかかる」


 渋谷先輩は引く手数多なはずなのに、どうしてオタク同好会だけにとどまっているのか。それに、オタク同好会を立ち上げた発起人でもある。



「表向きはオタク同好会としつつ、裏は悪いことしかしてねーんだろうな。渋谷先輩なんかに逆らえる奴は少ないだろうし、沼にハマっていくやつもいる。オタクというギャップを出しつつ、噂が広がるのを注意して、他のサークルには手を出さない」


「でも、何かやりようはあるんじゃないか?」


「その実行力があるかどうかだな。渋谷先輩は脅すのも上手そうだし、頭も切れる。仲間には、さぞ屈強なやつも準備しているみたいだしな」


 何だか大学生という存在が、一層怖くなってきたな……それに、何だか無性に腹が立つ。


「楽が腹立つのも分かるが、簡単に手は出すなよ。そんな事より、午後からは同学年のゼミだ。そっちを楽しもーぜ」


 新の言葉で冷静さを取り戻した俺は、午後のゼミに向けて気持ちを戻す。


 人間は、発達しすぎたのではないだろうか? だからこそ、人生は複雑で難しいことが多いと思う。

 まぁこんな事は考えても無駄なので、俺はすぐにこの思考を奥深くに片付けた。



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