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23.賢者はカートリッジの充填方法を説明する

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 特に「バージン魔王が~」は本作と関連が強い作品となります。

 広場での試験を終えたユーティ達一行は、食堂の個室で昼食を取っていた。

 そして食事も後半に移った頃、シャテルが何か思い出したようにユーティに声を掛ける。


「そういえば、ユウよ。先程の戦闘で、マナリボルバーを発砲しておったな」

「ああ、そうだね」

「カートリッジの充填、以前共に旅していた頃のように、うちがやってやろうかと思っての。ほれほれ、寄越すが良い」


 と、右手を差し出すシャテル。

 ユーティは懐の拳銃を抜き、シリンダーを開いて銃弾を模したカートリッジを取り出した。とりあえず、テーブルの上に使用済みの二本を立てて置く。


「申し出は有り難いが、今はアマリエ君にお願いしていてね」

「ほう? 人の身で充填できるのかの?」


 シャテルの記憶では、カートリッジの充填には、並の人間では昏倒してしまう程の魔力量を必要としていた。

 なので、シャテルがユーティと旅をしていた頃は、彼女が魔力の充填役を務めていたのだ。シャテルはハイエルフのため、もともと種族的に魔力が多く、更にその中でも異常と言えるほどの魔力量を先天的に保有していた。


「彼女の妹であるアニー君とは顔を合わせただろう? アマリエ君は、アニー君に引けを取らない魔力量を持っているようなんだ」

「むぅ……確かに、あの娘は底知れぬ魔力を持っておったな」


 シャテルは、隠棲していた(いおり)に突然訪れてきた少女の姿を思い出す。独創的な魔法も目立っていたが、その無尽蔵な魔力量も強く記憶に残っていた。


「ただ、魔力量はあってもアマリエ君は魔法は全く使えなくてね。それに、君の魔力は君自身の魔法や召喚のために、大事に温存しておきたいと言うのもあるかな」

「そうか、うちの事が大事か。では、仕方ないのう!」


 大事に、と言う言葉が気に入ったシャテルは、腕を組んで大きく肯いた。


「では、預からせて頂きます」


 それを横目に、テーブルの上のカートリッジを取り上げたアマリエ。

 腰の後ろに取り付けたポーチ状の充填機の蓋を開けると、そのままカートリッジを入れるのかと思いきや、椅子を座り直してユーティに背を向ける。


「ユーティ様、充填機に差し込んで頂けますか?」

「いや、アマリエくん。手、届くよね?」


 突然のお願いに当惑するユーティ。それを観たシャテルは、ぷいっと勢いよく立ち上がり、机を回り込んでいった。


「さあ、これで良いじゃろう!」


 アマリエの手から奪い取ったカートリッジを素早く充填機に差し込むと、すぱーんと蓋を閉めたのだった。


(ユーティ様に触れて頂ける機会を、奪われてしまいました)

(やらせはせんのじゃ!)


 そして、アマリエとシャテルの間で視線が交錯し、お互い微かに笑い声を立てる。


「ふふふふふふふふ」「ほほほほほほほほ」


 それを見ていたユーティは、二人がなぜ笑い合っているのか分からないまま、ともあれ仲良くなっているのは良い事だと考えていたのだった。


 一方、ティエンはと言えば。


「地元の麺も美味しいですけどぉ、こちらの"すぱげてぃ"って言うんですか? この麺も美味しいですねぇ!」


 回りに構わず、一人ゆったりと食事を満喫していたのだった。



              ◇   ◇   ◇



 昼食を終えた一行は、帝国冒険者ギルドに足を向けていた。

 ドアベルの音を鳴らしながら入室したユーティ達は、居合わせた冒険者達にぎょっとした目で見られたが、それに構わず依頼掲示板に歩みを進める。


「さて、依頼は……と」

「あらぁ? Bランクまでしかないみたいですねぇ」

「高ランクの依頼は、それ自体が機密に関わる場合がありますから、表に出していない可能性があります」

「そうじゃな、受付で聞いてみれば良かろう」


 冒険者向けの依頼が貼られているはずの依頼掲示板だが、そこに貼られていたのは一流下位であるBランク以下の依頼だけだった。仕方なく、ユーティ達は掲示板の近くの窓口に向かい、行列の最後尾に並んでおく。


 列には数グループの冒険者が並んでいたのだが、ユーティ達の顔を見ると覿面(てきめん)に動揺して互いに目配せすると、あっと言う間に去って行ってしまった。


 待つこと無く先頭になってしまったユーティは、露骨な特別扱いに顔をしかめてしまう。


「また、これか」


 その姿を見るシャテルは、含み笑いをしながら突っ込みを入れた。


「古代白竜に認められたSランク冒険者、言わば英雄じゃからのう。試験を受けねば良かったのにの」

「ふう……避けがたい必要経費としてある事は分かってはいるんだけどね」

「もう時既に遅しじゃ。あきらめて英雄らしく、堂々としておるんじゃな」


 ともあれ、ユーティ達の姿を見た受付嬢がベルを一つ鳴らすと、奥から別の職員が顔を出してきた。


「いらっしゃいませ、ユーティ様ご一行様。依頼のご確認でしょうか?」

「その通りです。他にもあるのであれば、ぜひ確認させていただきたいのですが」

「承知いたしました。こちらにご足労頂けますか?」


 と、その職員に案内されて、ユーティ達は階上に上がって行ったのだった。



              ◇   ◇   ◇



 ユーティ達は、先日も訪れた応接室に案内されていた。

 席に着いたユーティ達の前に香茶を置いた職員が一礼して去って行くと、入れ違いのように大きなファイルを抱えた職員が入室して来た。


「お待たせ致しました。依頼管理を担当させていただいている、キャサリンと申します」


 栗色のロングヘアを持った、二十代後半くらいだろうか、少し顔はきつそうだが、かなり有能そうな女性だった。


「ここに案内されたと言う事は、掲示板以外にも依頼があると考えて構わないのかな?」

「仰るとおりです。掲示板で公開しているのはBランク以下に限られておりまして、Aランク以上のご依頼はご希望をお伺いした上で、クローズドでご案内しております」


 と、胸に抱えたファイルをテーブルの上に置きながら、そのギルド職員は柔らかな笑みを浮かべたのだった。

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