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22.賢者はSランク冒険者の正体を考える

 新刊3本同時投稿中です。下部にバナーを貼ってありますのでぜひご覧下さい。

 特に「バージン魔王が~」は本作と関連が強い作品となります。


※今回は都合により少し早めに投稿しました

 広場での試験を終えたユーティ達一行は、昼食のため手近な食堂を訪れていた。

 そして、料理を注文してそれが届くまでの間、Sランク冒険者と聞かされたイセスなる女性の正体について検討を始めたのだった。


「外見はさておくとして……あのイセスなる女性について、皆の意見を聞きたい」


 ユーティはまず、アマリエに感想を聞いてみることにした。


「アマリエくんはどう思ったかね?」

「はい、私達に対して、少なくとも敵対的ではありませんでした。ただ、それは私達が古代白竜に対抗できるだけの力を持っていた事による結果論であり、彼女が害する意図を持っていなかったとしても、相対していたのが力無きパーティだった場合、古代白竜に蹂躙されていた可能性はあります」


 きびきびとしたアマリエの返答に、ユーティはしばし考え込む。


「そうだね。確かに、彼女には力に見合った自制心は無さそうに見える。どこかのAランクパーティのように、危うきには近寄らないのが正しいだろう。興味を持たれた以上、もう遅いかも知れないが」


 苦笑したユーティは、次いでシャテルに目を向けた。


「そう、古代白竜。君は、彼女が呼び出したあれをどう見た?」

「ユウも分かっておろう? あれはうちの範疇ではなく、ユウの専門分野じゃと」

「ふむ。そうかも知れないが、そうでないかも知れない。なかなか難しい所だね」


 笑みを浮かべ、肩をすくめながら答えるシャテルに、ユーティは小さく首を捻った。アマリエは二人の会話が理解できず、ユーティに質問する。


「ユーティ様、どういう事なんでしょう?」

「まず、あのイセスという女性は、古代白竜を召喚ではなく、転移させたんだ。つまり――」


 ユーティはアマリエに、召喚と転移の違いを簡単に説明した。

 召喚とは、異世界からこの世界に意識だけを呼び出し、マナによって構築された身体に定着させて活動させる事を指す。そして、転移とは、身体そのものを同じ世界、あるいは違う世界間を移動する事を指している。


「召喚であれば、うちのように詠唱によって呼び出す事ができる。じゃが、転移には正確かつ安定した魔法陣を維持せねばならん。ユウならば魔導具で実現可能じゃが……」

「魔法陣が少しでも乱れてしまうと、空間が千切れてしまうからね。固定の魔導回路を使う魔導具なら、確かに技術的には可能だ」


 ユーティは「ただ」とつけて言葉を続ける。


「ただ、あの大きさを転送するとなると、広場規模の設置型である必要があるはずだ。もし、装備品程度の大きさでそれを可能としていたのであれば……とんでもないパラダイムシフトが起きた事になる」

「なんと、ユウでも無理なのかの」


 驚きの顔を見せるシャテルに、ユーティは笑みを浮かべる。


「魔導具は科学の産物だからね。空を飛ぶことはできても、奇跡を起こすことはできないさ。つまり、詠唱でそれを為し得たという事になるのであれば、それはまさに……」

「まさに神業じゃな」

「その通り! それが可能なのは、神か魔王、そして彼らに力を分け与えられた勇者に限られるだろうね。だが、神は人間界に絡むことを避けているし、彼女は勇者という柄でも無さそうだ」


 そして説明の最後に、ユーティは一言付け足した。


「なので私は、彼女が魔王だったとしても驚かないだろうね」


 先程まで顔をつきあわせていた女性が、魔王かも知れないと言う言葉に、シャテルとアマリエは困惑の顔を見せる。ちなみに、ティエンは理解しているのかしていないのか、ニコニコ笑みを浮かべたままだ。


「それでは、ユーティ様はどう致しますか?」


 アマリエの質問に、ユーティは飄々とした様子で返答する。


「私から話を持ちかけておいて何だが、どうもする気は無いかな。少なくとも、彼女自身はここでどうこうしようと言う気は無いようだし、なるべく絡まない事を祈るしか無いね」


 そして、給仕が料理を持ってやってきたのを見て、皆に声を掛けたのだった。


「さ、料理が来たようだ。まずは食事にしよう」



              ◇   ◇   ◇



 テーブルに幾つかの大皿料理と取り分け皿、そして果実水を入れたジョッキとゴブレットが並べられ、給仕が一礼して去って行った。


 「さて」と口にしながら、ユーティが自分の分を取り分けようと腰を浮かしたところで、アマリエがそれより素早く立ち上がった。

 手際よく大皿からユーティの分を取り分け、小皿をすっとユーティの目の前に差し出していく。


「ユーティ様、どうぞ」


 紳士服の男性にメイド姿の女性が世話をするのは、そこが領主館や城館のダイニングルームであれば自然な光景ではあるのだが、そこが大衆食堂ではかなり異彩を放っていた。


「ありがとう、アマリエ君。でもいきなりどうしたのかな?」

「ユーティ様のお世話をするのは、私の勤めですので」


 領主館でメイドとして働いて貰っていた頃ですら、そこまで過剰な世話はしていなかったアマリエ。居心地の悪さを感じながら尋ねたユーティに、アマリエはしれっと返答していた。


「この旅の間は、私たちは一介の冒険者パーティだからね。メイドの仕事は忘れて平等に行こうか」

「承知しました。でも、いつでも仰ってくださいね? いつでも御世話いたしますから」


 と、ユーティに対して静かに微笑むアマリエ。ユーティは突然のサービスに当惑しながらも、笑みを浮かべながら僅かに首を傾げるしか無かった。

 なお、シャテルは微妙に口を尖らせながら、ティエンは全く気にしない素振りで、自分の分を取り分けていた。


「と、ともあれ、いただく事にしようか」


 最後にアマリエが自分の分を取り分けたところで、ユーティは昼食の開始を宣言したのだった。

 ご覧頂きありがとうございます。

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