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20.賢者はSランク冒険者に種明かしをする

 新刊3本同時投稿中です。下部にバナーを貼ってありますのでぜひご覧下さい。

 特に「バージン魔王が~」は本作と関連が強い作品となります。

 模擬戦の対戦相手であった古代白竜ル・ジーヴを昏倒させたユーティ達一行。

 そこにイセスが軽く手を叩きながら歩み寄ってきた。その後ろには鎧武者のシャノンが付き従っている。


「いやはや、よもやル・ジーヴを倒してしまうとは思わなかったぞ。全く、見事な物じゃ」

「手加減してくれていましたからね。本気で来られていたら、流石にこれほど楽には戦えなかったでしょう」


 ユーティの返答を聞いて、イセスはニヤリと笑う。


「一撃で殺せるチャンスが二回もあったにも関わらず、手加減する余裕があったのにか?」

「接近戦スタート、しかも、ル・ジーヴ側からの近接攻撃はナシでしたからね。実戦ならば、まず空中から降ろす必要があるでしょう」


 ユーティは手をポンポンと叩くと、ティエンの方を振り向いた。


「ま、それはさておき。模擬戦にご協力頂いたル・ジーヴは回復させなければなりませんね」


 ユーティ自身とアマリエは魔法を全く使えない。シャテルも回復は得意ではない。となれば、回復術が使える可能性があるのは、仙術師であるティエンのみであった。


「ティエン、できますか?」

「はぁい、できますよぉ」


 ユーティがティエンに声を掛けたのは、単なる可能性が予想ではあったが、どうもそれは正しかったらしく、ティエンも二つ返事で了承してくれた。


「ふむ。申し出はありがたいが、無用じゃ」


 手を上げてユーティの申し出を断ったイセスは、更にその右手を頭の上にまで挙げてパチンと指を鳴らした。

 その瞬間、ル・ジーヴの負傷部位である胸元、右目、喉、そして後頭部に光が集まり、あっと言う間に治癒してゆく。


「ル・ジーヴよ、起きるのじゃ」

『グ……ム……我ハ……』


 倒れ伏していたル・ジーヴであったが、イセスの声で気がついたようで、首を振りながら起き上がった。そのまま、伏せたような姿勢でイセスの方を向く。


「あっさり攻撃を喰ろうて撃沈しておったのじゃよ。落ち着いたか?」

「ハ、面目ナイ」

「下界の人間にも強き者がいる事が分かったかの。――ああ、そうだ。汝の角は治しておらん。ま、再び生えるまでこの教訓について考えておくのじゃな」

「承知シタ」


 ル・ジーヴはイセスに改めて頭を下げた後、ユーティ達の方に顔を向けた。


「人間共ヨ……見事デアッタ。ウヌラヲ強敵(トモ)トシテ認メテヤロウゾ。機会ガアレバ、我ノ住処ニ遊ビニ来ルガ良イ」

「ええ、再見を楽しみにしていますよ」


 ル・ジーヴが差し出してきた爪に対して、ユーティは握手代わりに、コンコンと軽く拳で叩いたのだった。


「さて、それではそろそろ送り返す事にしよう。すまぬが、少しル・ジーヴから離れてくれるか」


 イセスは、ユーティ達をル・ジーヴから離すと、召喚したときと同様に、右手を空中に差し上げて、パチンと指を鳴らした。

 そして再び黒く輝く魔法陣が出現し、出現したときとは逆に、ル・ジーヴを飲み込んで行く。


 完全にル・ジーヴを飲み込んだ魔法陣が、風に吹き散らかされるように四散してしまうと、そこにはル・ジーヴが存在していた証は全く無くなっていた。――切り落とされたツノを除いて。


「おお、そういえばツノが残っておったな。ユーティとやらよ、金に困っておったのじゃろう? 戦利品として持って行くが良かろう」

「古代白竜のツノ……ですか。おいそれと換金できなさそうですがね、ありがたく頂いておきます」


 ユーティは細めの丸太ほどの大きさを持つツノを抱えると、腰につけた小型の鞄(シザーバッグ)に納め始めた。明らかに鞄の大きさを超えた長さであるが、問題無く吸い込まれていく。

 その様子を見たイセスは、興味深そうに眉を上げている。


「ほう、面白い道具じゃな。空間をねじ曲げておるのか。――そういえば汝は、先ほど妙な武器を使っておったな」

「これですか?」


 ユーティは懐から先ほど使用した銃を取り出した。その外見はいわゆる中折れ式の回転胴式(リボルバー)拳銃に酷似している。


「マナ・リボルバーと名付けています。マナを充填したカートリッジを装薬とした、攻撃用魔導具ですよ」


 イセスはユーティの手にあるそれを、様々な方向から眺めている。


「なるほどのう。これなら、()()()()()()()()()()()汝でも攻撃できると言う訳か……いやはや、面白いの」


 大きく胸が空いたディアンドルで前屈みになられると、その豊満な胸がこぼれ落ちそうになっているのだが……ユーティはここで鼻の下を伸ばすわけにも行かず、微妙に視線をずらしておくしかない。これ以上見せつけられると見ない自信がなくなってきたユーティは、話題を変えておく事にした。


「そういえば、イセスさんの方こそ、フィンガースナップだけで召喚に回復にと、様々な魔法を発動していたようですが」

「ああ、大したことではないぞ? 余の場合は――」


 と言いかけた所で、後ろに控えていたシャノンが咳払いをして割り込んできた。


『ごほん、お嬢様』


 シャノンの方をちらりと見たイセスだったが、一瞬言いよどむと、ばつの悪そうな笑顔を見せて前言を翻したのだった。


「む、あ、そうじゃったな。実家の秘伝でな。秘密じゃ」

 ご覧頂きありがとうございます。

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