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17.賢者は先制攻撃の権利を譲られる

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 特に「バージン魔王が~」は本作と関連が強い作品となります。


※前の16話では当初、バージン魔王16話が誤って掲載されていました。現在は差し替え済みです。申し訳ありません。

 中央広場での模擬戦において、イセスは突然、巨大な白竜を召喚し、ユーティ達一行と"遊んで"やるよう命令を下していた。

 イセスの指示を受けた白竜は、身体を起こしながら身体全体をユーティ達の方に向ける。巨大な竜が身体を起こし、首をもたげると、その高さは3階建ての建物を超えるような高さにまで達している。幅はもっと広い事から考えると、ユーティ達からすると、目の前に建物がそびえ立っているように見えていた。


「おっと、まだ動いてはならぬぞ? 余が命令を出すまで、少し待つのじゃ」

『ハ、仰セノママニ』


 と、白竜はユーティ達を見下ろしつつ、そのまま動きを止めた。次にイセスは、身体を傾けて、白竜の身体越しにユーティ達の方に顔を見せる。


「と、言うわけじゃ、ユーティとやら! こやつなら、相手に不足はあるまい?」


 ユーティは、目の前で伝説級の竜が自分たちの方を向き、明らかに戦闘態勢に入っていても、飄々とした表情のままイセスの視線を受け止めていた。


「ル・ジーヴ……白き山の古代白竜、ですか。これで役者不足と言ったら、罰が当たりますね」


 その名前を聞いた群衆のざわめきが更に高くなる。帝国国境線に横たわる巨大な山脈に住まい、その山脈を越えてやって来ようとしていた無謀な軍隊を幾度となく追い払っていたその古代白竜は、その地方の住民にとって、まさに守護神と言って良い存在だったのだ。


「ほう、知っておったか。いかにも、その通りじゃ。――なに、勝てとは言わん。どこまでやれるか見せてくれれば、それで良い」

「なるほど、条件は理解しました。ただ、流石に想定外の相手でしてね。作戦タイムを頂いても構いませんか?」


 ユーティの提案に、イセスは仰々しく肯いて答えていた。


「うむ、思う存分準備して貰って構わんぞ。準備が終わったら言うてくれ。そうじゃな、先制攻撃の権利も呉れてやろう」

「それはどうも」



              ◇   ◇   ◇



 イセスの許諾を貰ったユーティは、自らの一行の顔を見回した。このような大物(デカブツ)と対戦した経験の無いアマリエこそ、やや緊張した顔を見せているが、少なくとも、怯えているような顔は一つも無い。


「さて、想定外の相手になったわけだが」

「ま、基本は変わり無いわな。うちの魔法が先制じゃろう?」


 想定外の相手とは言え、このような伝説級の巨大生物と戦った経験が充分にあるシャテルは、全く動じる事は無い。


「その通りだね。ドラゴンが相手だし、こちらもブレスから入ろうか」

「そうじゃな。うーむ、久しぶりの大物相手はワクワクするのう」


 ユーティは次にアマリエに顔を向ける。


「アマリエ君には近接攻撃を頼む。防御力がかなり高い方ではあるが、君に渡した武器ならば、問題無く抜ける筈だ。接近方法は……そうだな、以前練習した"あれ"で行こうか」

「はい、承知しました。確かに、大物相手であれば有効そうですね。できれば正式名称で呼んでいただきたい所ですが」


 そして、ティエン。


「ティエンには、ブレスか魔法が来たときの防御を頼みたい。古代白竜のフロストブレスだが、防ぎきれるかな?」

「我々、神格たる龍と比べて、たかだかトカゲの親玉ですよぉ? しょっぼい攻撃なんか、問題ないですぅ」

「あー、それは相手に聞こえないようにね。ともあれ、よろしく頼むよ」


 最後にユーティは、全員の顔を見渡して声を掛ける。


「さて、私は戦闘指揮と、まあ、隙があればちょっかいを掛けることにしよう。――と言うことで、そろそろ始めようか」


 シャテル、アマリエ、ティエンは、それぞれの口調で元気よく応じたのだった。


「うむ!」「はい!」「はぁい~」



              ◇   ◇   ◇



「さて、貴奴らの準備はできたようじゃな」

『そのようですね』


 互いに顔を合わせて掛け声を掛け、そして戦闘用の隊形に散っていくユーティ達を眺めながら、イセスは小さく呟いていた。

 なおイセスは、いつの間にか鎧武者(シャノン)が用意していた、背もたれつきの少し豪華な椅子に、膝を組んで座っている。

 シャノンは、彼女の斜め後ろに直立して控えていた。


 イセスは椅子から腰を上げること無く、右手を優雅に空中に挙げて所長に開始の合図を促した。


「さあ、所長よ、開始の合図をするが良い。ああ、それから、流れ弾には注意するようにな。もう少し下がった方が良いぞ」

「そ、それでは、始めぇッ!」


 至近距離に巨大な白竜が出現しても、かろうじて逃げ出したり腰を抜かしたりしなかった所長ではあったが、微妙に裏返った声で開始の合図を出したかと思うと、全力で広場の隅っこに待避していった。

 それを見送ったイセスは、変わらず椅子に腰掛けたまま、ル・ジーヴに命令を下した。


「ル・ジーヴよ、まずは待機じゃ。先に一発、撃たせてやれ。教育するのはそれからじゃ」

『承知』


 ル・ジーヴはそれに従い、頭をゆらゆら動かしながらも様子見を続けている。


 一方、ユーティ達は、シャテルとアマリエをツートップとし、その後ろにユーティ、そして最後方にティエンという隊形になっていた。

 開始の合図に伴い、前進……を号令する前に、ユーティはアマリエに対して一つの命令を発する。


「アマリエ君。偽装解除」

「はい」


 アマリエは短く答えると、右手を背中に回して留め金を外し、同時に左手で胸の辺りから服を引っ張った。

 メイド服はエプロン部分も含めて後ろ開きになっており、あっと言う間にアマリエの身体から離れていった。ばさっと(ひるがえ)ったメイド服とエプロンは、裾に着けられていたポーチにあっと言う間に巻き取るように吸い込まれていく。そして最終的に、ポーチ一つがぽろんと地面に落ちて行った。

 最後にアマリエは白いヘッドドレスを外し、ポケットに忍び込ませる。


「ふん、あんな服装(メイド服)で戦うのかと思っておったが、そういう仕掛けか。面白い!」


 イセスが注目したアマリエのその姿は、それまで身に(まと)っていたメイド姿とは一変した、ほとんど暗殺者と言って良い服装であった。胴体はノースリーブでタイトなミニスカートとなっている漆黒のソフトレザーアーマーで覆われている。そして、それ以外の腕から脚にかけては、比較的荒い網目で編まれたインナーを素肌の上に纏っていた。

 彼女の早着替えに、観客も驚きと歓喜の声を上げてアマリエに視線を集中させる。


 それらの視線には構わず、アマリエは腰に手を回して取り出した、短いバトンの様な筒状の道具を握りしめ、白竜に向かって構えたのだった。

 ご覧頂きありがとうございます。

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