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16.賢者は巨大な白竜と相見える

 新刊3本同時投稿中です。下部にバナーを貼ってありますのでぜひご覧下さい。

 特に「バージン魔王が~」は本作と関連が強い作品となります。

 明日以降、投稿時間を昼に戻すかも知れません。


※2022/11/17 当初、バージン魔王16話が誤って掲載されていました。申し訳ありません

 中央広場で模擬戦を行う事になったユーティ達一行と、Sランク冒険者であると言うイセス達。両者が開始位置についた事を確認した所長が、模擬戦の前口上を始めていた。


「お集まりの帝国臣民の紳士諸君、淑女諸君! 本日は帝国冒険者ギルド主催の模擬戦にようこそおいで頂いた! 残念ながら我が帝国は、突如現れた不埒な魔王軍による侵略を受けている。確かに侵略当初、帝国軍が後れを取った事は否定できない。しかし――」


 それを横目で眺めつつ、ユーティは隣で立っているシャテルに小声で話しかけていた。


「さて、召喚物が出てくるらしいが、何が出てくると思う?」

「あの者はSランク冒険者という事じゃからのう、ジンかイフリートと言った所じゃろ。うちとユウにとっては少々物足りぬが、まあ、仕方なかろう」

「ジンにイフリートと言えば、精霊ですよね? それ以外は無いのですか? たとえば、魔族とか」


 アマリエの質問に、ユーティは変わらず小さな声で回答する。


「魔族召喚は魔神の力を借りる、いわば神聖魔法系だね。アマリエ君も知っているだろう? 魔族を召喚したあの男は悪魔教団の大主教だった」

「そう、でしたね」


 やや目を伏せながら返事をするアマリエ。彼女は10年前にその悪魔教団に掠われてしまい、以来、暗殺者として活動する事を強いられていたのだ。もっとも、1年ほど前に教団は壊滅し、彼女は自らの手によって復讐を果たしたのであるが。

 ユーティは、そんな彼女の様子には意図して構わず、講義のように言葉を続けていた。


「他の召喚系の魔法としては……シャテルが使うような血縁契約があるかな?」

「あれの対象は、それこそ神格じゃがな。父祖の頃に結んだ契約に基づいて呼び出しておる。ま、理屈としては、精霊の召喚と似たような物じゃの」

「そうなのですか、勉強になります」


 なお、ティエンは我関せずで、ふわふわした様子でなにやら呟いていた。


「――それにしてもぉ、所長さんの、お話、長いですねぇ?」


 そしてその頃、広場の反対側では、イライラを募らせていた人物の我慢が今まさに限界に達しようとしていた。腕を組んでじっと黙って待っていたイセスが、ついに柳眉を逆立てて所長に対して叱責の声を上げたのだ。


「所長よ! いくら何でも話が長すぎるぞ! いつまで待たせるつもりじゃ!」

「ああ、失礼。それでは、これより、我が帝国が誇るSランク冒険者、イセスさんと――」


 慌てて軌道修正した所長。指されたイセスが観客に向かって手を挙げると、観客から盛大な拍手で迎えられる。やはり、強さからか、美しさからか、彼女はかなりの人気を誇っているようだ。


「隣国より義勇の心を抱いて参加していただいた、Sランクが期待される冒険者、ユーティさんご一行――」


 ユーティ達も、イセスのように周囲に向かって手を振る。イセスほどではないが、それでも拍手がわき起こったのだった。


「両者による模擬戦を開始します。なお今回は、イセスさんの召喚物がユーティさん達の対戦相手となります。それでは、イセスさん、お願いします!」



              ◇   ◇   ◇



 所長の声に応じ、イセスは右手をすっと空高く差し上げた。目を伏せ、口の中で小さく何か呟いているようだが、その内容は聞こえない。

 数秒後、イセスは静かに指を鳴らした。集まり始めた見物客でざわついている広場ではあるが、そのぱしっと言う音が、広場中に広がっていく。


 そして次の瞬間、イセスの目の前の地上に、赤黒く光る魔法陣が出現した。


「――ほう?」「これは――」「魔法陣!?」「あらあらぁ」


 突然沸き起こった魔力の爆発のような衝撃に、ユーティは目を細めてその中心を見据えていた。シャテル、アマリエも急遽臨戦態勢を取ってそちらの方向に構えている。ティエンのみが、茫洋とした風情で首を傾げていた。


 その魔法陣は1m、5m、10mと、あっと言う間に直径が増していき、最終的に直径30m近くの巨大な環に成長した。その内側は、複雑な紋様が刻まれて見える。

 そして、その魔法陣に下からせり上がるような形で、巨大な純白の竜が頭、翼、胴体に尻尾と、順番に形作られていく。

 竜が現れきったと同時に、魔法陣は風に吹き散らされるように細かく分かれ、白銀の竜を残して消え去っていったのだった。


 広場の中心に突如現れた白銀の竜を目にし、集まっていた観客達は呆然とする者、腰を抜かす者、少し目端の利いた冒険者風の者は全力で逃げ出すものと、様々な反応を示していた。

 観客の様子を冷ややかな目で見つめていたイセスは、座ったまま観客に向けて大きな声を張り上げた。


「安心せい! こやつは余のしもべじゃ。汝らに害を及ぼすことは無いぞ!」


 その声に気づいたのか、白竜はその巨大な頭をもたげると、イセスの方に顔を向ける。人間とは違った構造であるため、やや話しづらそうではあったが、それでもしっかりと聞き取れる言葉を話し始めた。


『コレハ……"イセス"サマニヨル、召喚デシタカ』

「いかにも。ちと汝に頼みたい事があってな。ル・ジーヴよ、此奴等と遊んでやれ。ただし、殺すなよ?」

『ウム。下界ノ人間ノ相手ナゾ、我ナラバ容易(タヤス)イ事。壊サヌ為ノ手加減ノ方ガ難シイ』


 イセスの指示を受けた白竜は、身体を起こしながら身体全体をユーティ達の方に向けた。巨大な竜が身体を起こし、首をもたげると、その高さは3階に届こうかと言う高さにまで達している。幅はもっと広い事から考えると、ユーティ達からすると、目の前に建物がそびえ立っているように見えていた。

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