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15.賢者はメイドに試験官の見立てを聞いてみる

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 特に「バージン魔王が~」は本作と関連が強い作品となります。

 Sランク冒険者であるというイセス達と模擬戦兼スキップ試験を行う事になった一行。冒険者ギルドから会場となる中央広場へ向かう道中、ユーティはアマリエにそっとイセス達の見立てについて聞いてみた。


「アマリエくん、彼らの実力はどう思う?」

「そうですね……シャノンとか言う鎧武者については、立ち居振る舞いからB級相応の実力は感じました。悪くない腕前だと思います。イセスに関しては……正直、分かりません。とてもSランクの冒険者には見えませんが、何かこう、直感でチリチリと感じる物はあります」


 アマリエの返答にユーティは少し考え込んだ。歳は自分より遙かに若いとはいえ、修羅場をくぐってきた彼女の危機感知能力はかなりのレベルに達している。


「ふむ、君でも分からないか」

「何にせよ、魔術師という事ですから、変な動きをされる前に接近戦に持ち込むべきでしょうね」

「そうだね。魔術師相手であれば、アマリエ君の近接戦闘が鍵になると思う。よろしく頼むよ」


 アマリエの肩を叩いたユーティは、次いでシャテルの方に顔を向ける。


「シャテル、あの女性をどう観る?」

「そうじゃの……少なくとも、魔術師らしくはないのう。普通、魔術師と言えば、自らの能力の底上げのため、様々な魔導具を身につけるものじゃ。うちがユウに色々作って貰ったようにの。特に衣服は容易かつ効果の高いバフ装備じゃからな。それをせずに普通の服を着るのは解せんの」


 ユーティは肯いてシャテルの意見に同意する。確かに、ぽっと出の冒険者ならともかく、Sランク冒険者で普通の服というのは理解できなかった。


「魔力はどうかな? 彼女から魔力は感じたかな」

「ふむ。魔力探知(ディテクトマジック)を使ったわけでは無いから、はっきりした事は分からんが……何かはあると思うのう。ただ、この感じ、どこかで観たような……」


 シャテルはしばらく考え込んでいたが、おう、と言う声と共に、手をぽんと打ち付けた。


「――そうじゃ、昨日観たティエンを思い出したわ。中に秘めた力を外から覆って見えんようにしとるのかもしれんの。で、あれば、中から何が出てくるか分からんぞ?」

「確かに、それは怖いな。見た目通りで無い事を覚悟しておくべきだな。ともあれ、先制攻撃はシャテルの魔法になりそうだ。期待しているよ」

「うむ。――ふふ、あの頃を思い出すな」


 最後に、ユーティはティエンの横について歩き始めた。


「ティエン、君の戦闘能力について伺いたいのだが……」

「私ですかぁ? そうですねぇ。今使えるのは結界とか、護りの能力が中心ですねぇ。完全に回復したら、龍に戻ったり、天候を操ったりする事もできるんですがぁ。でも、護りだけなら、今でもちょっとした物だと思いますよ?」


 ユーティはティエンの言葉を聞き、彼女の特性を記憶に留めておくことにした。本来は尋常で無い力を持っているようであるが、今のところは護りが得意な仙術士と見なした方が良さそうに感じられていた。


「そうか、では、防御の面でお願いする事にしよう」

「お任せあれ、ですぅ」


 なんて言っている間に、一行は模擬戦会場である中央広場に到着したのだった。



              ◇   ◇   ◇



 模擬戦に参加するため、一行は中央広場に到着していた。この中央広場、地方都市としてはやや広めで、50m四方くらいは自由に使えるスペースがあるようだ。

 元々、模擬戦がある事は告知されていたため、既に市民や居合わせた商人、冒険者に騎士などの集まりができはじめている。


 ユーティ達とイセス達は中央広場の中央で、この模擬戦の司会やら審判やらを兼ねているらしい所長から、模擬戦に関する注意を受けていた。

 曰く、攻撃魔法は直撃させず、地面に着弾させる事。もちろん、周囲の家屋に損害を出す事は禁止。そして、武器による攻撃は意図的に外すか寸止め、あるいは、鎧の厚い部分に当てる事と、当たり前ながら怪我をしないために非常に制限が多いようだ。

 ただ、どうもこの所長、渋い声の割に無駄に話が長いようで、ユーティは頻繁に脱線する話を半分だけ耳に入れながら、対面に立っているイセスの姿を観察する事で暇を潰していた。


(赤いフードにドレス、そして白エプロンか。まるで童話の赤ずきんだな……もっとも、彼女の場合は、赤ずきんのコスプレ、と言うべきかも知れないが)


 室内では外していたが、屋外に出たときにイセスは()色のフード付きの乗馬用コートを身につけていた。もっとも、今はフードは被らず、深紅の長髪をそのままに流しているのではあるが。ユーティにはそんな彼女の衣装が、まるで童話の少女のように見えたのだった。


 ユーティの内心の感想はともかくとして、そうこうしている内に、所長の話はようやく終わりに近づいてきているようだった。


「――と言うわけで、相手を倒すためでは無く、あくまで互いの技を引き出してみせる為である事に留意してください」


 つまらなさそうな様子ながらも、所長の話が終わるまでじっと黙って話を聞いていたイセスだったが、一つため息をついた後に所長に向かって口を開いた。


「ふーむ……所長よ」

「イセスさん、何か質問ですか?」

「やはり、これはつまらんぞ。余としては、この者等の全力の攻撃を見てこそ、正当な評価ができると思うのじゃがな」


 イセスの言葉に、所長は困った顔を見せる。


「いや、そうは言っても、イセスさんに攻撃を当てる訳にはいかないでしょう」

「余に本当に当てられるものなら、それはそれでも構わんが……」


 イセスは腕を組んで一瞬考え込む素振りだけを見せたが、すぐに所長に対して口を開いた。


「所長よ、一つ提案があるのじゃが、余が召喚した者を代理とするのはどうじゃ? それならば、この者等は遠慮無く攻撃できよう。それに、余も見ぶ……評価に徹する事ができるのでな」

「召喚物、ですか? 我々としては構いませんが、ユーティさん達はいかがですか?」


 確認を申し出た所長に、ユーティは肯いて快諾する。彼にとっても、手加減なしに攻撃できる方が楽であるように感じられた。


「ええ、私たちは構いませんよ」

「分かりました。イセスさん……見物ではなくて、きちんと評価して下さいよ?」

「う、うむ。無論じゃ。大船に乗ったつもりでいれば良かろう」

「ではそういうことで、両者、位置について下さい」


 こうして、いよいよ模擬戦を始めるべく、ユーティ達とイセス達は、広場を挟んで反対側で向かい合ったのだった。

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