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14.賢者はSランク冒険者を紹介される

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 特に「バージン魔王が~」は本作と関連が強い作品となります。

 一行が所長に案内された応接室には、二人の先客、若い美しい女性と性別不詳の鎧姿の戦士が在室していた。そして、不機嫌そうに座っていた女性の方は、所長に対して叱責の声を上げたのだった。


「遅いぞ! 余をいつまで待たせるつもりじゃ!」

「申し訳ない、イセスさん。急な来客がありまして。ただ、これでイセスさんのお相手ができましたよ」


 所長の声に、イセスと呼ばれた女性は、ユーティ達を品定めするような目で()めつけた。


「ほう。――では、その者達が?」

「はい、強さは折り紙付きですよ」

「ふん。どうもぱっとせんようじゃがの」


 知らない間に進む話に、ユーティは困惑の色を見せながら所長に尋ねる。


「所長、これは一体……?」


 所長は少しばつの悪そうな顔をした後、ユーティ達に向かって先客の二人を紹介した。


「これは失礼。ええと、まず、紹介からさせてください。こちらはSランク冒険者のイセスさん。そしてこちらはBランクのシャノンさん」

「イセスじゃ」

「シャノンと申します。お嬢さまの護衛を務めさせて頂いております」


 座ったまま腕を組み、つまらなさそうに挨拶するイセスに対し、シャノンと呼ばれた鎧姿は、がしょんと金属音を響かせながら立ち上がり、頭を下げて腰の低さを見せている。もっとも、鎧の中から響く声は、男性か女性かよく分からなく聞こえるのではあるが。


「こちらは、王国からいらっしゃった、ユーティさん、シャテルさん、アマリエさんにティエンさん」

「ユーティです。よろしく」

「シャテルじゃ」

「アマリエと申します」

「ティエンですぅ」


 とりあえず、立っているシャノンと握手を交わす一行。イセスはその姿を不機嫌そうな表情で見つめていた。


「こちらにお掛けになって下さい」


 所長の導きに従い、イセス達と対面の席に座るユーティ達。所長は隅に置いてあった椅子を持ち出し、彼らとユーティ達との間に腰を下ろしていた。


「さて、それでは状況を説明させていただきます」


 そう言うと所長は、ユーティ達に向かって、イセスを手で指し示した。


「まず、こちらのイセスさんですが、この街で戦意高揚のために、冒険者同士で模擬戦を行う事になっていました」

「……」


 イセスは腕を組んだまま、無言で不機嫌そうな態度を変えていない。


「当都市駐在のAランク冒険者を含むパーティが相手をする予定だったんですが……昨晩のうちに、突然逃げてしまったんですよ」

「昨晩の打ち合わせで、余の顔を見たときから様子がおかしかったからの」


 ぼそりと呟いたイセスに、シャノンと呼ばれた鎧武者がフォローを入れた。


「お嬢さま、確か2ヶ月ほど前、ダンジョンで遭遇したパーティですよ。その時は確か、お嬢さまのボスへの攻撃の余波でダンジョンごと潰してしまいましたが、どうやら無事に脱出できていたようですね」

「そんな事もあったかの? 些細なことはよう覚えておらんわ」

「お嬢さまが相手と知った瞬間に、無理無理無理とか死ぬ死ぬ死ぬとかしか言わなくなっていましたからねぇ。余程ひどい目に遭ったのでしょう」


 所長はその辺りの事情は聞いていなかったらしく、驚きの余りに口がぱかんと開いてしまっていたが、少し時間が経つと、なんとか再起動を果たしたようだった。


「と、ともあれ、ユーティさん一行にはその代役を務めて頂きたい、と言う事なのです」

「あくまで、模擬戦、ですよね?」

「ええ、模擬戦です。誰も死にません。――で、イセスさんへのお願いなのですが」


 所長は今度はイセスの方を向いた。


「なんじゃ?」

「単純に模擬戦を行うのではなく、Sランク冒険者として、ユーティさん達一行のパーティの強さを測って頂きたいのです。イセスさんも帝国にいらっしゃった際に受けられたかと思いますが、冒険者としての適正ランクを測る仕事となります」

「なんじゃと? 殺してはいかん、と言うのは、まあ、納得しておったが、評価までせねばならんのか」


 イセスは、眉間にしわを寄せながら首を振る。


「当初のお約束と異なってしまって申し訳ないのですが、これもSランク冒険者としての勤めですので……お願いします!」


 頭を下げる所長を、冷ややかな目つきで見下ろしていたイセス。その耳元で、シャノンがなにやら囁きかけていた。


「ふむ……そうじゃな。その手があるか。――所長よ!」


 なにやら独りごちた後、改まって所長に声を掛けるイセス。


「この話、承知したぞ」

「いやぁ、ありがとうございます! ――で、ユーティさん」


 なんとかイセスを説得できたと考えた所長は、今度はユーティに顔を向けた。


「ユーティさん達もそういう流れでよろしいですか?」

「いささか、不穏な気配を感じるのですが……お断りしたらどうなります?」


 色々アヤシゲな女性と模擬戦を行わなければならないと言う要請に、ユーティは苦笑を浮かべる。それに対して、所長も苦笑を以て応じてきた。


「まあ、拒否して頂いても結構ですが……当面Fランクとしての仕事しか請けられなくなりますね」

「――仕方有りません。お手柔らかにお願いしたいですね」


 やむなく、肩をすくめてユーティは了承した。ユーティの言葉を聞いたイセスは、無言でにやりと笑うばかりである。

 これでなんとか、双方の合意が取れたと判断した所長は、手を打ち合わせて椅子から立ち上がったのだった。


「善は急げ、です。それでは早速、中央広場に向かう事にしましょう!」

 ご覧頂きありがとうございます。

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