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12.賢者は冒険者ギルドに登録する

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 冒険者として登録するため、冒険者ギルドを訪れていた一行。高ランクで登録できるスキップ制度を受けるための証明に若干のトラブルはあったものの、無事に登録用紙記入にまで進む事ができていた。


「まず、こちらにご記入いただけますか? 代筆が必要でしたら、その旨仰ってください」


 職員は、手元の書類ケースから羊皮紙を何枚か取り出してユーティ達に差し出してきた。

 ユーティは受け取った羊皮紙を確認する。記入事項は名前、種族、生年に出身、職業、他国冒険者ランクと、まあ、ありきたりの内容だ。


「いや、問題無いかな。全員文字は書けるはずだ」


 ユーティは他のメンバーに羊皮紙を渡し、自身も必要事項の記入を始めていた。

 その途中、首を捻りながら渡された用紙を確認していたティエンが、ユーティの耳元で囁いてくる。


(あのぉ……自分の年齢、忘れちゃったんですけどぉ、どうしましょう?)

(見た目の年齢で書くしかないんじゃないかな? 私もそうしないと通りそうにないからね。ティエンだと、20台半ばの人間が適当なところかな)

(そうしてみますぅ)


 アマリエはアマリエで、何かぶつぶつ言いながら記入している。


(暗殺者……はダメですね。メイド……冒険者ではないですよね。軽戦士……盗賊……斥候? この辺りが妥当ですか)


 結局、微妙に詐称が入りつつも、以下のデータで提出する事にしたのだった。


・ユーティ29歳、人間賢者、ビシゴート王国出身

・シャテル120歳、エルフ魔導士、深碧(しんぺき)の森出身

・アマリエ20歳、人間斥候、ビシゴート王国出身

・ティエン24歳、人間仙術士、絹の国(セリカ)出身


「はい、確かに。それでは、所長の空きを確認してきますね! すぐに戻りますから、このロビーでお待ちください」


 職員はそう言い残すと、カウンターから出て二階への階段を駆け上って行った。



              ◇   ◇   ◇



 一行は壁際の席に移り、職員の戻りを待つことにした。周囲の冒険者から、ちらちらと奇異の目で見られつつも、ちょっかい掛けようなんて気を起こすような人間は特にいないようだった。

 ユーティは頬杖を突いて、先ほど提示した自らの冒険者タグをぶらぶらさせながら、誰に言うとでも無く呟いていた。


「25年間も捨てていた名前を復活させてまで、このタグを持ち出したんだが……意味が無かったようだね」


 それを耳にしたシャテルは、肩をすくめて茶々を入れる。


「五英雄などと呼ばれるようになった後、目立つのがイヤだから今までの名前は捨てる、なんて言うておったのにな」

「今のお名前も、十分目立っていると思いますが。魔術に関する事なら右に出る人は居ないって、フライブルクでは有名ですよ?」

「ユウは目立つなと言っても無理な話じゃな。根が甘いからの。求められたらつい助けてしまうのじゃろ」


 耳が痛い話に、ユーティは苦笑しながら首を振った。確かに以前、シャテルと旅をしていた頃も、彼女にガミガミ言われながらも、ついつい人助けをしていた事がままあった。もっとも、そう言うシャテルも「そんなの見捨てれば良かろう」とか言いながら、結局は手伝ってくれるのではあったのだが。


「耳が痛いね。まあ、今回は時間も無い事だし、とことん利己主義を決め込むさ」


 そしてユーティは、タグを上に放り投げ、落ちてくるところを右手でぱしんと掴み取った。


「ともあれ、ユーティで登録してしまった以上、この国ではユーティで通すしか無いな」

「うちはユウの時しか知らんからな。この方が言いやすくて助かる」


 ――そのとき突然、どたどたどたと、二階の方から誰か走ってくる音が聞こえてきた。

 ユーティ達が音の方を見上げると、バタンと乱暴に扉を開けて、一人の中年の男性が姿を現していた。彼は階段を駆け下りると、ユーティ達の方に脇目も振らず直進してくる。そして彼らの目前で立ち止まり、ユーティとシャテルの顔を見た彼は、彼らの顔を見つめたまま呆然と呟いていた。


「ほ……本物だ……間違いない……あの時からお変わりなく……」


 彼の言い方が気になったユーティは、彼に対して質問してみる。


「以前、お会いしたことが?」


 その声を聞いた男は、まるで将軍に対する兵士のように、びしっと姿勢を正して返答した。


「は、25年前の王都防衛戦で、お二人のお姿を拝見した事がありました。もっとも当時の私は、新米の傭兵でしたが……」


 と、そこに、息せき切って受付の職員が追いついてきた。


「しょ、所長、どうしたんですか? いきなり駆け出したりして。この方達がなにか……?」


 所長と呼ばれた男は職員の方を振り向くと、ユーティに対してとはまるで違った、落ち着いた口調で質問する。


「君。ビシゴート王国の五英雄は知っているかね?」

「えーと、20年以上前の人達ですよね? 確か、今は国王になった神速の剣士と、あとは、黒衣の賢者に、深碧の森の魔術……師……って、え? まさか、そんな!?」


 問われた職員は、人差し指を顎に当てて思い出しつつ、その構成を口にしていたが……途中でその類似点に気がついたらしく、驚きの声を上げる。


「私は以前、この方達と肩を並べて戦ったことがある。間違いなく、本物だよ」


 所長は改めてユーティの方を向き、(うやうや)しい態度で頭を下げる。


「ともあれ、帝国冒険者ギルドにようこそいらっしゃいました。まずは幾つかお話をお伺いさせていただきたいので、こちらにご足労いただけませんでしょうか?」

「ああ、よろしく頼むよ」

「うむ、苦しゅうないのじゃ」


 かくして一行は所長に案内され、二階に上がっていったのだった。

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