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11.賢者は帝国冒険者ギルドの説明を受ける

 新刊3本同時投稿中です。下部にバナーを貼ってありますのでぜひご覧下さい。

 次回より、投稿時間を少し後に変更しようかと思っています。

 一行は冒険者として登録するため、帝国冒険者ギルド・アヴェニオ出張所を訪れていた。


「それじゃ、簡単にシステムを説明させていただきますね!」


 窓口に座っていた年若い女性職員は、手元から説明用の羊皮紙を取り出し、帝国の冒険者制度について説明を始めた。


 曰く、帝国では冒険者資格は国内で一元管理されている事。ランクは王国と同じくSからFと、未経験者のG。これはパーティとしてどの程度の強さの敵と戦えるかを示していて、Sだとドラゴン一体、Fでゴブリンの一団と言った具合。

 依頼には基準となるランクが設定されていて、自分のランクより少し上のランクの依頼を受ける事ができる。そしてそれを何度か無事にこなし、そのランクの勤めを果たせることを証明できれば、めでたく昇格となる。

 通常は最低のGから始まるのではあるが、既に実績を積んでいる外国からの来訪者の場合、基準を合わせるためのスキップ制度が用意されているとの事だった。


 一通りの説明を終えた所で、職員は先頭にいるユーティに対して首を傾げながら問いかけた。


「えーと、王国では既に冒険者として活動されていますか?」

「ええ、以前は、ですが」

「では、スキップ制度をご利用頂けます。証拠となる冒険者タグなどはお持ちでしょうか?」

「あ、はい、持って来ています。えーと……確かここに……ああ、これだ」


 ユーティは腰に着けたポーチに手を入れてしばらく探ったかと思うと、細い鎖が付いた一枚の金属製のタグを取り出して来た。

 それは王国での冒険者時代に身につけていた、彼にとって懐かしいアイテムだった。名前を変えてからは使う機会がなかったが、今回は昔の名前で行動するために持って来ていたのだ。

 表面は白金色で綺麗にエナメル加工されているが、裏面は地の色である青銅……ただし、経年変化により、すっかり緑青で覆われている。

 表側の塗装を目にした職員は目を丸くして少しトーンが上がった声を上げた。


「この色は……凄い! Sランクですか!?」

「ええ、まあ」


 一瞬、室内にどよめきが響き渡り、ユーティは軽く肩をすくめる。Sランク冒険者は最上位と言えども幅が広く、中規模以上の都市であれば1パーティくらい居てもおかしくない存在だ。なので、高々Sランクで驚かれる事に、ユーティは面映ゆい物を感じていた。


「拝見してよろしいですか?」


 ユーティからタグを受け取った職員は裏面にひっくり返し、そこに刻まれた情報を読み取り始めた。


「ユーティ・ミードさん。人間、男性……の、賢者、と」

「はい」

「――あれ?」


 指差しながら読み取っていた手が止まり、職員は指折りながらなにかの計算を始めた。


「なにかおかしい点でも?」


 と、問うユーティに対して、困った顔をしながらおずおずと口を開く。


「あの……当たり前ですが、証拠として利用するには、利用者本人の物である必要があります」

「それは当然ですね。――え、これが他人の物だと?」


 いきなり詐称扱いされた事に対して困惑の色を見せるユーティに、職員はタグの一部分を指差して見せた。


「だって……ほら、ここ。生まれ年が刻印されているんですけど、これだと今、59歳って事になってしまいます。お父さんの物でも持って来たんですか?」


 説明しづらい矛盾点を突かれたユーティは、思わず空中を見上げる。


「あー……なるほど、年齢、ねぇ」

「お客さん、どう見ても30歳くらいじゃないですか」


 自分自身で老けない理由を説明できないし、人間と明記されている以上、実はエルフです、と言うのも通用しない。ユーティは無駄と思いつつも、一応説得を試みる事にした。


「少々若作りなだけなんですが……ダメ、ですか?」

「だめです! こんなの通したら、私が怒られちゃいます」

「参ったな……」


 顔をしかめながら頭を掻いている所に、後ろから別のタグが差し出された。


「これならどうじゃ?」


 タグを受け取った職員が表面の色――ユーティの物と同じ、白金色――を見て、再び驚きの声を上げる。


「えーっ、お嬢さんもSランクなんですかぁ!?」


 目を丸くしている職員を見ながら、ゴシック調の衣装を纏ったエルフの少女、シャテルは得意げに笑う。


「まあの、それより裏面じゃろ?」

「あ、はい、そうですね――シャテル・リンチさん、エルフ、女性の魔術師で……えーと、当年とって120歳、と」

「うちなら120歳でもおかしくなかろう?」

「あ、はい! もちろん、エルフの方なら問題ありません! スキップ制度をご利用頂けます!」


 元気よく返事をした職員の声を聞いたシャテルは、ユーティの方に向き直って彼の肩をぽんぽんと叩く。


「ユウよ、うちがおって良かったの」

「そうだね。シャテルが居なかったら全員Gランクスタートとなる所だったよ」


 と言って、シャテルの頭をわしわしと撫でるユーティ。頬を染めたシャテルは、慌てて照れ隠しのように職員に向かって声を掛けた。


「ひ、人前で、子供扱いはよすのじゃ! そ、そうじゃ、職員よ。誰か一人でも高ランク者が居れば、少しはマシな仕事が請けられるのかの?」

「あ、それなんですけど……高ランク候補者がいらっしゃいますので、皆さん全員でスキップできる可能性がありますよ! もっとも、所長との面談が必要なんですけど……」


 そして職員は、手元の書類ケースから羊皮紙を何枚か取り出してユーティ達に差し出してきた。


「まず、こちらにご記入いただけますか? 代筆が必要でしたら、その旨仰ってください」

 ご覧頂きありがとうございます。

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