闘いの前の①
サブタイトル「闘いの前の①」
バアル・セヴィスが塔を用意している間――――とある村の方にて。
「え?バアルが?」
「えぇ、暫くあの塔に籠りっきりだから代わりに息子が視察に来るの。大丈夫かしら?」
ある程度の事情を知っている明智英司は奥さんと共に畑仕事をしていた。
「見ての通り問題無いさ。それでも心配なら何人か声を掛けて必要なモンを聞いてくれれば大丈夫」
「分かったわ」
ラピス夫人が屋敷に帰った後――――
「ラピス様が?」
「あぁ、ご子息を代わりに寄越すんだと。ついでにご子息の奥さんも来るらしいからそん時に世間話でもしたらどうだ?リノ」
そして数日後――――
「そーしたら旦那がねぇ~」
「正直に言ってうらやましいです。夫のバアルは何でもこなしているので逆にサボらないと言うか」
「確かに、あのお方は農業以外では完璧ですね」
多くのご夫人たちが集まって雑談会を開いていた。
「おーい、ラピス様ァ~!コイツを持って行ってやってくだせぇ」
「あら、実りが良いじゃないですか~!」
「アタシの夫は村長から直に学んでますからね!」
畑仕事をしている彼らには気になる事があった。
「そ~言えば、お二人は貴族なんですよね?」
「私は帰化して今は平民ですけどね~」
「元王族で教皇猊下をやった身ですね」
彼女たちの会話は食事をしながらでも進む。
「母さ~ん!従者と馬と馬車置いておくよ~!」
「ありがとうね~!」
「次期領主様なんですよね?お若いのにしっかりしてるわぁ~」
仕事を終えて屋敷に戻っていった自分の子供を見送る。
そんなラピスの元へ一人の執事服を着た男が現れる。
「ラピス様、こちらを」
「あら、気が利くわね。ありがとうね」
ラピスの新しい従者はひざ掛けを用意し、更にはブランケットを羽織らせた。
「そう言えば、最近涼しくなって来たわね~」
「たしかにそうですね~ラピス様は涼しいのは苦手なんですか?」
「えぇ、まだ母国に居た時からずっと冷え性なのよ」
「旦那様が自作のホットストーンを制作為さって以降、それを手放せず過ごしていましたからね」
従者はホットな紅茶をそれぞれに差し出す。
彼女たちはそれを受け取る。
「ウチには暖炉があるから冷えて来た時は独占しちゃうわね~」
「あ~、ウチでもそうなります。薪のストックが結構多くあるので」
彼女達は日が暮れる前にそれぞれに帰路に着くのであった。
次回「闘いの前の②」です。
お楽しみ( ˘ω˘ )<・・・




