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過去編⑤:育成者

サブタイトル「過去編⑤:育成者」

※後編になります。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



教皇猊下に話をし、手元の水を飲む。


「そうですか、カナンさんが・・・」

「なぁ、猊下・・・本当はさ、俺をこの世に生まれさせてくれた女神様はさ・・・そこまでの力の範囲は持てないんじゃねぇかって思うんだよ」


俺がそう話すと、教皇猊下は息を吐き「そうですね」と言った。


自分の部下たちを外に出払わせ、カズト達を座らせる。


「私は・・・あなた方勇者様達が元の世界に戻れるとは限りません」

「・・・そうなんですか」

「それじゃあ私達は・・・」

「ただこの世界に呼ばれただけだったのか」


皆、察してその場の空気は重く沈黙の状態が続く。


「そもそも、皆様を呼んだのが女神様であれば約束は守られるはずです。でも現状は国の王が配下達に命令して貴方達を呼び寄せた。ただそれだけ」

「国は呼び出す方法を知っても帰す方法は面倒に感じて誰も覚えないからな」


俺がそう言うと、教皇猊下は黙って頷く。


「おいおい・・・それじゃあ残ったこの二人は帰れないのか」

「申し訳ありません」


悲しそうな顔で教皇猊下は下を向く。

俺は溜息を吐き


「神様ってのは人間に係わる事は直接出来ないからな。無理に出来るとしたら聖女か教皇猊下ぐらいだからな」

「さて、今夜ももう遅いでしょうし私が自ら召喚した国に『明日返す』と手紙をよこしておきましたのでお泊りになって下され。あぁ、そうだ。バアル殿、あのお方がお呼びでしたぞ」


俺は頷いて先に部屋を出る。

他の皆もその次の日に帰宅する準備をしてから部屋に戻って行った。


「―――で、俺に話とはなんでしょうか?アグネス様」

「よく来てくれました。アナタには重要な役目を任せたいと思って教皇のオリトに来させてもらうように言い付けたんですよ」


創造神で偉大なるお方であるアグネス様が言うには俺が数百年間程、信仰と新たにこの世に呼ばれるであろう次代の勇者パーティーの成長を促す発破を掛けてほしいとの事だった。


カズトと色々と動き、邪神やあるいは魔王が生み出した多岐に亙る厄介な魔物の封印、及び消滅をするべくカズトと二人の男旅を始めた。

その後に役目を終えた俺とカズトはカズトの後継として王族との婚約を突っぱねて別の国の貴族の令嬢にカズトは婿入りを果たした。


「あっという間に70年が経ってしもうたな・・・新たな勇者たちはどうだ?相棒よ」

「あぁ、皆が皆、純粋な子達だから絆が深まるのは相当苦労したよ」


因みにリムやグランも同様に年を食うまで家庭に恵まれて先に天寿を全うした。


そして・・・カズトが最期に命の灯を終えた。


「ジョーカー先生!初心者ダンジョンクリアしたのは良いですが違和感が!」

「そうか・・・レスデイ、聖騎士達を連れて強固な調査隊を派遣しておいてくれ」

「分かりました。教皇猊下によろしく伝えておきます」


レスデイ・・・リムが勇者パーティを引退した後にリムの成人した子供と婚約した聖騎士のダン・ヴェルセンの弟にあたる。

ダンは途中で教皇猊下の下で仕事をするために当時三十代だったカズトと俺と他の後継メンバーであるアズ・ミリーヴとノティ・エデュームの四人で何とかやっていけた。


「ノティ、・・・悪い、やっぱりアイツの事が忘れられないや」

「そう・・・無理に引き留めてごめんなさい」


ノティと暫く付き合っていた時期はあった。

だが、カナンの事を忘れられなかった俺はなかなか思い踏み留まる。


結局、ノティはレスデイと結婚し、ダンはとある商会のお偉いさんの娘と結婚をした。

アズは二代目勇者と結婚を果たしたと聞く。


「エドワード、もう少し腰を浮かせてみろ」

「分かりました・・・っ!」


カズトと同様にエドワード・・・二代目勇者とアズの息子でカズトの孫にあたる。


「そうだ、前にお前がぶった切ったヤツとの戦闘を思い出してみろ、その時の光景で身体は刻まれているはずだ」

「スゥ―――――」


二代目勇者や三代目勇者のエドワードも同様に影の力を巧みに扱い、厳しい修業を難なく終えた。

そこから四代目・・・ノティの娘にあたる錬金魔法の使い手とエドワードは結婚を果たし、ダンの娘はあの時に出会ったご令嬢のご先祖様との血縁関係が広がっていた。


そして約50年が経って今の嫁であるラピスが転生者として現れたと気付いて偶然を装って出会った。

それと同時期にカズトが既に亡くなって暫く経った頃だ。

それが約900年前の出来事となる。


「結婚を期に付き合ってほしい。勿論、君の願いは全て俺が叶えよう」

「・・・よろしくお願いしますね。ジョーカー様」


当時のラピスは不老不死、不老長寿などの様々な研究もしていた。

そこからどこかに漏れたのだろう・・・各国の王族がその研究成果欲しさにドラグマを襲撃してきた。


戦争当時はまだ告白すらしていなく・・・ましてや顔合わせもしていなかった。

する前にその戦争は起こった。


「ドラグマが?!今すぐに向かう!ドラデアには王族と騎士団の制圧を頼んでくれ!」

「分かりました!」


カズトの子孫の子にあたるドラデアは影の勇者の再来として瞬く間に制圧を果たしたと人伝に聞いた。

俺も制圧した国に説教をしたが・・・それでも反省の素振りすらしていなかった連中に対して


「大体、一人の女相手に多勢で攻めてくるとかお前等・・・死にたいの?」

「めっ、めめめめ滅相もございません!!!我々は王の命令に背けないだけでして!!」

「そっ、そうなんです!!!先代様は良き王だったのですが・・・!」

「今代の王は私腹を肥やす様な外道でして・・・!」


圧が増し言い訳にキレた俺はドラグマ以外の国を封印していたあの魔法で殲滅を一度してから【再生】の魔法を使用して状態を綺麗にして戻した。


その日以降誰もドラグマやその背後に支援をしている俺に対して敵対意識は無くなった。


「・・・終わったのでしょうか?」

「あぁ、アグネス様からもらい受けた不老や不死、長寿とかにもなる薬を君に流し込んだ。一部は俺の血を入れたから俺みたく歳の取らない体や若さになるぞ」


こうして新しい教皇猊下の下で長期期間となる婚約を果たした。

俺は大体知っているのをその半分しか知らない教皇猊下だから多少は心配はしていた。


その日以降もラピスとは(はな)(ばな)れで新たな勇者達を育成に励んでいた。


そして俺はとある事を思いついて実行した。


「約束の指切り?」

「あぁ、この先ずっと忙しい事になる。君が職務を終えて降りた時に・・・一緒に暮らして結婚もいずれ果たそう」


そうやって1000年経つまでやれる事を平然とやってのけていった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「はぁ~、マジか。そのカズトって元は学生だったのか?」

「いや、俺とは違って幸せな家庭で生まれ育ったって言うから当時の容姿からして多分妻子は元の世界に居るぞ」


多分だけど


「カズトの名前って聞いたりは?」

「確か・・・・」


日野和人と言う名前だった気が・・・・

次回「息子、運命の恋人と結ばれる」です。

お楽しみに(;'∀')<えぇっ?!

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