過去編④:喪失
サブタイトル「過去編④:喪失」
※中編になります。
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魔法と魔法がぶつかり合い、その反動で周囲が揺れ始める。
「くっ・・・なかなかしぶといなァ!」
「お前を倒すまでは死なねぇよッ!!!」
俺がデルモと戦っている間、カナンは結界を利用して建物の外に教皇猊下を外へ逃がした。
そして、俺の元へ戻り戦闘に加わった。
「【聖帝の光】ッ!」
「ガハッ?!」
「これでも・・・食らえッ!!!合体魔法【爆炎熱風】ッ!」
「がはっ?!」
カナンが与えた一撃によって怯んだデルモに追撃で魔法を放ち、魔力を拳で纏い―――
「これで・・・どうだァーッ!【爆灼の一撃】ッ!」
「ぐぁッ?!」
その魔法を繰り返し殴り続けた。
「くぅっ・・・ここまで押されるとはッ」
「オラァーッ!!!」
一撃を入れてやっと奴を倒した。
俺の一撃を食らったデルモは勝てないと悟ったのかとある魔法を発動した。
「こうなったら貴様ゴト道連れだァァァァァアアアッ!」
「んなっ?!」
やばい魔法に巻き添えを食らうと思ってとっさにガードした瞬間――――
「【多重結界】ッ!」
「カナンっ?!」
カナンが最後の力を振り絞って俺の前に出て魔法を発動し、防ぐが―――――
「死ねェェェェェェェッ!」
「――――ッ!」
「カナァァァンッ!!!!!」
何重にも張ってある結界がヤツの魔法で次々と破壊されていき、カナンは何を思ったのか――――
俺にキスをして笑顔で
「私を・・・愛してくれてありがとう」
「・・・?!」
最後の結界が崩れて、カナンに直撃した。
「―――――ッ?!」
気が付けば、ヤツは瀕死の状態で邪神の復活に成功した。
「やっと・・・やっとだ!ついに念願の肉体が―――――」
<貴様にくれてやるものはない>
気が付いた俺は必死に起き上がり、目の前の光景を見た。
「・・・っなぜっ――――」
<この力は貴様のような愚か者に扱う力に無い>
デルモはそんな邪神に拒まれて邪神の肉体を得る事は出来なかった。
「・・・?!(邪神は人間を殺して血肉を得て復活を果たすんじゃ・・・?!)」
邪神は傍に倒れていたカナンを拾い上げ、抱きかかえる。
<女神の愛し子よ、我が子を助けてくれてありがとう――――>
「(我が子・・・?)」
動けなかった俺の元に彼女を抱いたまま連れてきて俺の傍にそっと添える。
「何故だッ・・・!なぜこの私を受け入れないのだッ!!!邪神よ!!!」
<・・・・>
邪神が笑顔で俺の顔にそっと手を添える。
・・・まさかとは思った。
だって、そんな筈はなかったんだ。
「まっ、まさか・・・父・・・さん・・・?」
<―――――>
俺がそう問いかけると、邪神は笑顔で頷く。
この世界で生を受けてまだ10にも満たない歳で人間達から襲撃を受けて亡くなったはずの父が目の前にいるはずがない。
そう思ったのに何故か否定も拒否も出来ず、何故か暖かく感じた。
その瞬間、俺は涙を流した。
「・・・っ、父・・・さんっ!!!!」
<我が子よ、よく頑張った。女神の元へ還る為――――代わりに彼女を器ごと転生させる>
父さんはそう言ってカナンを包み込み―――その場で消えていった。
「何故だっ・・・!何故なのだっ!何故私を受け入れないのだッ!!!」
デルモはその場で絶叫しながら糸が切れた様に倒れた。
「まさか・・・」
俺は体力を回復した後にヤツの傍に行く。
「死んでいる・・・・最後の恨みの籠った叫びで亡くなるとは、皮肉だな」
俺は地面に突き刺さっている瓦礫の平らな箇所に腰を下ろして少し休む。
「ジョーカー!!!」
後からカズト達は駆けつけて来た。
「大丈夫か?!」
「・・・っ!あぁ、大分やられたが動ける程度には回復したよ」
他の二人が周囲を見渡し、リムが俺の所に来た。
顔を真っ青にして
「ねっ、ねぇ・・・カナンは?」
震えた声でそう尋ねてきた。
完全に喪失感に苛まれた俺は俯き
「・・・スマン、猊下の所に連れて行かせてくれ。そこですべて話す」
「分かった。コイツはどうする?」
グランは倒れているデルモを持ち上げる。
「・・・聖杯を持って来くれば邪神を扱えると勘違いしたバカだ。猊下の判断に委ねる」
グランは黙って頷き、デルモを担いで先に外に出た。
「捕まれ」
「頼む」
俺はカズトとリムに左右を支えて貰いながら教皇猊下の下へ行った。
次回「過去編⑤:育成者」です。
お楽しみに( ;∀;)<うせやろ!?




