明智英司の新たな出会い
サブタイトル「明智英司の新たな出会い」
「――――って事で腕の立つ連中を指導させてやってくれないか?」
「農業なら現地に住んでる人の方が優秀だと思うが・・・成程な、こりゃ~バアルが手を加えても成果が少ないって訳だ」
バアル・セヴィスの長年の指導はどうしても途中で子孫代々へと受け継ぐと言った事が半数しか出来ていない事がある。
農業知識もそうだ。
「分かった。領主と村長を何人か呼んでくれないか?新しく新設する予定の施設で講師としてやりたい」
「分かった。それとついでに棟梁に出来るだけ早く建設を進める様に進言しておくよ」
バアル・セヴィスがそう言って去った後は自分の村の人達を集会所へ集めた。
「――――って事で、俺の指導を受けて大体コツや程度を感覚で憶えれた皆にも今後手伝って貰う事になる。そうなる時の為にみんなが得意とするものをこの場で幾つか挙げてくれ」
「分かりました」
彼ら村人との話し合いは一時間以上も掛かり、やっと纏まった。
その日は解散して後日――――
「で、またみんなに集まって貰ったのは・・・冒険者である子を送った事のある家庭や家族のうち夫婦のどちらかが冒険者としての経験を持っていると言うのを把握している。早速なんだけど―――君たちの中で別の領村に関する背景がどんなものなのか聞きたい」
彼がそう切り出すと、村人の中から出てくる出てくる他の村での現状についてだった。
・とある村では特産品の値段が上がる程収穫量が季節ごとにバラ付きがある。
「バアルが手を加えた時はどうだった?」
「そうですな~そのご家庭はその後々にゴタツキがあって結局先程言ったような現状に逆戻りをしていると聞きましたね」
・とある村ではその地の性質上、特産品としては売れ難いモノしか扱えない。
「大昔であれば苦味を殆ど落としてから食べると言う事があったみたいです」
「しかも、その苦味を落とした食べ物は味が無いモンになっちまうんでさ」
「成程な、多分それは食べ物じゃなくて別用途で扱われる植物の実だな」
・とある村では借金までしなければいけない程の実りが乏しい場所である。
「元令嬢のお嬢さんが引越された時から数十年間は良い感じな暮らしだったけど結局その元ご令嬢が亡くなった後は結局元の状態まで品質が落ちて売れ行きが乏しいって言う話を」
「成程、その亡くなったご高齢の方は元々転生者だからある程度は知識のお陰で豊かになったって訳だ」
彼が村人達から話を聞き終えた後――――
「その村の人達は初心を忘れちまってるな」
「初心・・・ですか」
彼らの元居た世界ではこのような諺がある。
『初心を忘れるべからず』と。
「つまり・・・もう一度振り返りながら行動するようにって事だ。この世界の他の領村はそうしなかったからまた同じ繰り返しをしちまってんだよ」
「成程、それらを改善すれば」
エイジは頷く。
「バアルが苦労せずに村は成長し続け領主の悩みの種は消えるって事だ」
「成程」
彼の住まう村の村人達は殆どが彼の行動を思い返しながら初心に帰ってイチから正しく行動をしている。
「この村はこの村で俺に頼らずとも既に少しずつ成長してるって訳だ」
彼のその言葉で村人達は深く頷いた。
数日後のとある日――――
「と、言う訳で、同じ繰り返しをしてもその時に味わった感覚ってのは出て来ないんです」
「成程・・・・」
早速新設されたセヴィス領の一角の学び舎にて農業に関する知識を彼は徹底的に教えて行った。
「肥料は毎回毎回多く消費するのでその先の分まで動物――――馬や牛などから出てくる糞を使って肥料を作って下さい。ただし、匂いは相当なので出来れば畑近くの専用の小屋の中でやるとか。因みに貯めておいた水は毎日必ず畑に一滴も残さずにかけて下さいね」
「そのまま水を畑以外に扱うと危ないんですか?」
女性の―――しかも明らかに農業が未経験な人が一人彼に質問をした。
「勿論です。勿体ないからと料理や風呂に使うと不潔ですからね。必ず綺麗な水で体を洗ったり洗濯物の汚れを落とした後の水は排水溝に、畑作業で扱った水は畑か排水溝に必ず流して下さいね」
「分かりました!」
数日後――――
「は?恋人が出来た?」
「あぁ、前に俺に教わりに来た女性が居たろ?あの後、家族や雇われている人達に事細かく教えながらやったら本来時間が結構掛かる農作業が短期間で成長したってよ」
そしてなぜかそのお礼にその女性が彼とお付き合いする事になったと言う。
相手は伯爵家の令嬢だそうだ。
次回「久し振りの宴会」です。
お楽しみに(*´з`)~♪




