吞兵衛な女ドワーフ
サブタイトル「吞兵衛な女ドワーフ」
「親方ァ~!」
「おう、そっちに置といてくれ」
今日はドワーフ達が主軸として回している技術協会の職場に俺はお邪魔している。
今回は珍しくこの世界でキチンと基盤が整えている学園が生徒を連れて見学に訪れていたからだ。
「――――って事で、溶鉱炉から溢れ出る熱をドワーフ達の長年の正しい“勘”でより丈夫で長持ちしやすい武器や防具が出来るって訳だ。君等の親が身に着けていた冒険者装備一式にはそんなドワーフ職人の魂のこもった手作りで命の保証は最低限得られているんだよ」
「なるほど・・・」
特にドワーフ以外の種族の者も働いている為、労働環境はだいぶ良くなっている。
「魔力精錬、ドワーフの中で魔力の豊富なヤツが担当してんだ。おい、テッカ」
「丁度でっせ!親方ァ!」
魔力が一番良いテッカと呼ばれている若いドワーフはまだ試作品の魔法付与がされている武器を生徒達に見せた。
「魔力が見れる奴はよく見てみな!」
「ホントだ!!!すげぇ~!」
「これは勉強になる・・・!」
魔力視と呼ばれる魔力の質や量や色などを視れる特別な目を持った生徒は興奮してメモを書き記す。
一人の生徒が疑問を投げて来た。
「俺は魔力視っての?を使えないからさっぱりわからねぇけどよ、実際にその魔法が扱える武器って使用者との相性って正直に言ってどうなんだ?」
「おう、ボウズ!良い所に気が付いたな!」
グッスは指摘していた生徒に頭を撫でて
「実際にここの裏の実験場に移動してから実験をしようか!先生、頼んだぜ!」
「分かりました。それでは生徒の皆さん、グッス様の後について行きますよ」
俺は生徒達の後について行き某球場ドーム二つ分ほどかなり広い実験場で生徒達は全員集まった。
「養父上!あの練習用ゴーレムを出してくれないですか?」
「おう、良いぞ~ちょっと待ってろ」
俺はそう言って指をパチンッと鳴らして練習用ゴーレムを5体召喚した。
「よし、それじゃあ~自分に見合った試作品の武器を使ってこのゴーレムに一撃を与えてみな!」
「「「分かりましたー!」」」
生徒達はそれぞれ自分の手にしっくりと来る武器を選び、さっそく試しに使用し始めた。
その間にもグッスは武器に付与した属性魔法や性能を説明した。
「弓には人の魔力を媒体として魔力の矢を放つ。その際に付与される属性が二つ。炎と風だな。んで炎の場合は威力と火傷の状態異常の二つが一定数の魔力を糧にどちらか片方のみ発動する仕組みになるんだ」
女子生徒の一人が実際に火属性の弓を使って矢を一本程タァン!といい音を放って出した。
「威力倍増ですね」
「だな、んじゃ次は風属性のを使ってみなさい」
グッスから別の属性が付与された同じ試作品の弓を女子生徒は受け取る。
そして一本放ち、今度は魔法が同時に放たれた矢と同じ速度で練習用ゴーレムを真っ二つにした。
「今発動したのはエアカッターって言う風属性下位の魔法になる。その魔法以外であれば俊足、あるいは鈍足のどちらかが付与される事があるぞ」
「・・・・私、コッチの属性の弓がしっくりきます」
「どーぞ!こちらその試作品と同じ属性の弓になってますんでお持ち帰りくださいね~」
グッスの一番弟子ウィベルから完成品をその女子生徒は受け取る。
「すいませーん!質問いいですかー?」
「なんスか?」
男子生徒の一人がとある疑問を投げた。
「属性の付与って【魔王石】か【精霊石】の二つしか二つ以上付与できないってのは本当ですか?」
「良い質問っすね~、その通りっす!」
ウィベルがそう言って何も付与されていない完成された武器と付与されている完成された武器を取り出す。
「ここに二つの武器があるっす、一つはいつも普段通りに精錬されたモノで無付与の武器。そしてコッチが付与を施された二つの特別な石のどちらかが精錬された武器になるっす」
魔王石や精霊石などの特別に秘めている石は付与耐性が二つまでかもしくは二つ以上出来るとされていて――――
それら二つの石以外の石は一つのみにしか付与出来ない。
「勿論二つまでなら一回きりの破損程度で付与出来るっす。でも三つ以上程、付与したら武器にヒビが入って一度の戦闘ッキリ、しかも一度使ったら壊れちゃうんす。だから冒険者の殆どは最低で一つしか付与出来無い適正価格の装備品を買うか、あるいは高騰商品である魔法、魔力などが多数付与されているその専用武器ぐらいなんすよ」
「成程、勉強になる・・・」
男子生徒はお礼を言ってしっくりと来るであろう武器を選んで試しに使用していた。
そして数時間後
「有り難うございました。お陰で生徒達にとっていい勉強になりました」
「なぁ、先生。生徒の中で鍛冶や制作が得意な器用な子って居るか?」
生徒の担任であるその先生は頷き
「実は今日見学をさせて貰ったのはその生徒が卒業後の進路をどうするかと言うのを相談された際に行動で来た課外授業なんです」
「ほー、いい心がけじゃないか~!」
そして、片付けがあらかた終えた後のいつもの二人――――
「お疲れーっす」
「おう、お疲れ~」
グッスはいつも通りにウィベルに絡まれて――――
「ほんっとうにアザッス~!親方ぁ~!」
「へいへい・・・あんまり引っ付くと歩きづらいぞ?」
いつもの吞兵衛な彼女をしょい込んでグッスは帰宅する。
「たらいまぁ~♪」
「はっ、養母上いつものを彼女にお願いします」
「分かったわ、いつもお疲れ様ね~」
その後、ウィベルのいつもの悪いクセで抱き枕にされつつあるグッスであった。
次回「最年長精霊のジジイ、見参」です。
お楽しみに~(`・ω・´)コレデドウダ




