1090年の十七代目セヴィス家の受難
サブタイトル「1090年の十七代目セヴィス家の受難」
1090年――――某日、某所にて。
一人の大公公爵が頭を抱えていた。
「参ったなこりゃ・・・どうすりゃいいんだ?」
「旦那様、こちらも」
「ウワァ~出たァ~」
彼こそセヴィス家の十七代目当主であるオーディン・セヴィスである。
彼が頭を抱えて悩んでいるのは―――そう、女性選びである。
「父上が病気でポックリ逝ったから肝心な事を聞けなかったな・・・くそ~やられた!」
「長年の付き合いがある伯爵家に助けを求めてみてはいかがでしょうか?」
「その手があったか!」とオーディンはそう言って外出して馬を走らせた。
数時間経って漸く辿り着き、謝罪を先に入れてから事情を説明した。
「成程、トール殿は随分と後回しにしてから逝ってしまったか・・・」
「何せ、家の父は亡くなる前に書く遺書も用意してませんからね」
バルア・アルスレアは何度も頷く。
そして、とある事を持ち掛けた。
「だったら、ウチの娘はどうだい?」
「ミーシャをですか?」
ミーシャ・アルスレア、90年前のとある有名な歌手の名前を拝借して名付けられた女性である。
彼女もまた歌う事が好きで村の子供達に毎度自身の奏でる歌を聴かせている。
「確か彼女の従妹が旦那を迎えて領主になるんでしたっけ?」
「あぁ、娘だけは行き遅れしたくなかったからね。ラビの打診でもあって君の名前が挙がっていたんだ」
ラビ・アルスレア、ミーシャ・アルスレアの従妹にあたり、領主としての才能がある人物である。
「バルア伯父様、どなたかお越しに?」
「ラビ、ウチが昔管理していた村の領主様でな。」
「どうも、ラビ・アルスレア嬢。ミーシャ嬢は何方に?」
ラビ・アルスレアは「もうすぐで視察から帰ってくる」と言い、彼はそのまま待つ事に決めた。
「お父様~、視察から戻りました~!ラビ~!今年も例年通りに納めるそうよ~」
「私の代わりに有難う御座います。ミーシャ姉様、姉様にお客様です」
質素な女性もののドレスで戻って来たミーシャ・アルスレアはオーディン・セヴィスを見て驚き、カーテシーをする。
彼はそれを制して
「暫くの期間、君には俺の婚約者になって欲しい」
「こっ、婚約者?!私がですか?!」
数か月後、セヴィス家当主のオーディン・セヴィスは理想の女性としてミーシャ・アルスレアと結婚を最速で果たし、セヴィス家による受難は終息していったのであった。
次回「1100年目の春、とある大貴族当主の弟子」です。
お楽しみ(・3・)<地震起きてたわ。