きのう食べたアイスクリームは涙の味がした
【登場人物】
澄田 真朝→主人公
飛鳥井 夜一→真朝の親友
澄田 佳奈→真朝の妹
(※妹は少ししか出ません)
歩き慣れた通学路を眠たそうに歩く青年が1人。
ふぁあ、と大きな欠伸をし鼻をすする。
「一晩で疲れが取れるかっての。」
と青年は独り言をこぼす。
なんでか昨日全然眠れなかったし。
もうちょい休ませろよ・・・
授業も別の日に振り替えるとかさぁ・・・
心の中でうだうだ文句を言っていると、
背中に軽い衝撃を受ける。
うわ、来た…アイツだ…
ダルそうに振り向き、俺の背中を叩いた犯人を見る。
「おっはよ〜!真朝君はおねむかな〜??」
「ウワ・・・」
「うわってなんだよ〜!傷付いちゃう〜」
ぴえんぴえん、とか言いながら腹立つポーズをとる俺の親友、夜一がいた。
顔が良いから余計腹立つ。なんだコイツ。
俺が野球部に入る原因となったのもコイツだ。
眉間を抑えながら文句を言う。
「あんまり騒ぐな。頭に響くから。」
「えー何。眠れんかったん?」
「うん。お前は?」
「おれはもー、チョーぐっすりよ!!」
「だろうね。いつもの倍うざいもん。」
「ひどぉい( ´•ω•` )」
「ほんとの事だろ。」
「もしかして真朝くん、悔しくて眠れなかった、とか!?」
「ないなー。もともと予選通過したのが奇跡だったんだし。奇跡に悔しいとかないだろ。」
やっと安心して寝れると思ったのにこのザマだよ、とまた欠伸をする。
「そうかな。おれらみたいな弱小校でもやれるんだ!ってちょっと夢見ちゃった。しっかり悔しかったよ。おれは。」
「そっか。」
「ウーン塩対応!もっと慰めるとかないの?」
「はぁ?六年間も部活に付き合ってあげただけでも感謝しろよなー」
「そうだった!そういえばおれがしつこく真朝くんを勧誘したんだっけ!」
「嘘だろ!?忘れてたのかよ!」
「ごめんwww」
「「ふふ…あははははははは!!!」」
2人でひとしきり笑い、落ち着いたところで夜一が俺に手を差し出す。
「ありがとう。六年間も付き合ってくれて。
おれは真朝と野球できて楽しかった。」
俺は夜一に応え、手を握る。
「俺も、楽しかったよ。ありがとな。」
親友と握手を交し、少し照れくさくなる。
「ところで夜一、俺らこのままだと遅刻するの知ってる?」
「えぇ!?マジだ!早く言ってよぉー!」
ほら早く!と前を走る親友の目には確かに、涙が浮かんでいた。
___________________________________
「ただいまー」
玄関の扉を開け、言い放つ。
「おかえりー」と奥から母と妹の声が聞こえる。
今日は結局眠気に耐えられず、授業中6回も居眠りして怒られた。
退部式もこれといって良いことも言えなかったし、なんとも言えない1日だった。
手洗いうがいを済ませ、リビングでスマホを弄っていると、ふと思い出した。
(あ、そうだ)
そういえば、ずっと冷凍庫に放置してある季節限定のアイスクリームがあったんだっけ。
夜一と"最後の試合が終わったら食べる!"とか変に願掛けしてとっといたやつ。
アイツは次の日我慢できなくて食べたらしいけど。
もう部活も無いし、そろそろ俺も食べるかー
、と冷凍庫を開けアイスクリームを探す。
(あれ、)
無い。季節限定レモン味のアイスクリームが、どこにも無い。
あれ俺名前書いてたよな?と思いつつ、リビングで宿題をやっていた妹に問う。
「佳奈ー、兄ちゃんのレモンのアイスクリーム食べちゃったか?」
妹が怪訝そうな顔で言った。
「お兄ちゃん昨日食べてたじゃん!ひとくちちょうだいって言ってもくれなかったじゃん!佳奈まだ怒ってるんだからね!」
「…え?」
(食べてた・・・俺が・・・?)
「それにお兄ちゃん、泣きながら食べてたから、そんなにすっぱいの?って聞いたらすっぱいよって言ってたじゃん。覚えてないの?」
「あ…」
あぁ、思い出した。
ちゃんと悔しかったんだ、俺。
最高の居場所で、最高な奴らと夏を終わりたかったんだ。
「ちくしょー」
バツが悪そうに目を擦る。
あーぁ、せっかくのレモン味だったのに。
もっとちゃんと味わえばよかったなぁ。
ご清読いただき、ありがとうございます。
友人から貰ったお題から連想して短編小説 第2弾
今回のお題は
『きのう食べたアイスクリームは涙の味がした』
オマケがあるかも…?