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悪魔と契約

皆さんは、悪魔というものをご存じだろうか。

悪魔とは、人を惑わしたり、災いをもたらしたりする、いわば悪逆非道な存在である。

…だが、その悪魔にも例外というものがある。

たとえば…


「お兄ちゃん、今日のご飯、持ってきたよ。」


「ありがとう、(れい)。」


"冷"という少女は兄の"冬夜"(とうや)の元へ行き、食事が乗ってるトレーを渡す。

彼女の兄、冬夜は、生まれつき病弱な体で、過激な運動などは厳しいのだ。だから、家で寝たきりだったりが多いのである。

彼の目は私と一緒の青緑色。髪色は、濃藍が兄の冬夜。私が紺青色。

兄妹であるから、両親の遺伝で伝わったのだろう。

そして、私の兄には不思議なものが取り憑いている。


「おい、妹よ。もっと脂身のあるやつはないのか?」


馴れ馴れしく話すお兄ちゃん。

…いや、ちがう。お兄ちゃんの体を操る悪魔さん。

なぜ兄でないことが分かるのかというと、目の色が私と同一しているはずの青緑から黄金色に変わったからだ。

彼の名前はイヴェール。私と契約した悪魔だ。


「…無茶言わないでください。それはお兄ちゃんの体。病弱な体に脂っこいのを入れたら、体に毒です。あと、馴れ馴れしく私を“妹”と呼ばないでください。」


「別に良いだろう。兄が妹呼びしてなにが悪い?」


「私は“夜月(やづき)冬夜”の妹です。決して、悪魔さんの妹ではありません!」


私が言った言葉に、悪魔さんはムッとしてはねっ毛を揺らす。


「だから、俺を“悪魔さん”呼ばわりをするな。俺の名前を忘れたのか。」


「私の事を妹呼ばわりする人に、覚える価値なんてありません。」


「この娘…!今すぐその生意気な魂ごと、粉々に砕いてやろうか…!」


「やれるものならやってみてくださいよ。自分の身がどうなっても良いのならですけど。」


「ぐっ…」


うなった悪魔さんは、フンと鳴らし用意した食事に手をつけずに、ベッドに寝っ転がる。

あまりお兄ちゃんの体で勝手なことをしないで欲しいのだけれど…

 なぜ、お兄ちゃんの体に悪魔が取り憑いてしまったのかは、かれこれ3日前。


 ・


「お兄ちゃんただいま。」


「おかえり、学校、どうだった?」


「んー、まぁまぁかな。いつも通りの授業受けて…っていう感じ。」


いつも通りに学校から帰ってきた私は、カバンを置いて上体を起こして居続けているお兄ちゃんのベッドに向かう。


「冷はやりたい部活とかはないのかい?」


「ううん、なにも。見学とか行ってもとくに気に入ったものはなかったし。」


「勧誘されたりとかはしたけれど。」

と、心の中で呟きながら、お兄ちゃんのベッドの側においてあるテーブルの上で、お兄ちゃんが飲む薬を用意する。

 お兄ちゃんは生まれつき心臓が弱い、病弱な体に生まれた。

過度な運動をすると、息や心臓が苦しくなる。

だから、お兄ちゃんは中学まではなんとか学校に通っていたけれど、高校を通うのは厳しくなって自宅療養。

「せめて、冷だけでも。」とお兄ちゃんが私だけは、学校に通って欲しいと…私だけ学生。

両親は事故で亡くした。

私が小さい頃になくなったみたいで、私は両親の顔は覚えていない。

私とお兄ちゃんの二人だけ。

 でも…

ガチャリ。

お兄ちゃんの部屋の出入り口のドアが開いた。


「あら、冷ちゃんお帰りなさい。」


「うん、ただいま。詠さん。」


東雲詠(しののめよみ)さん。

昔からわたしとお兄ちゃんがお世話になっている人で料理、洗濯…家事全般をこの家でやってくれる心優しいお姉さん。

私が学校でいないときなど、お兄ちゃんのお世話をしてくれる。

まぁ、お姉さんと言っても、私のお母さんの妹で、30越えている叔母だ。


「ちょっと冷ちゃん、今余計なこと考えてたでしょ?」


「そ、そんなことないです…」


「はは…そうだ、詠さん確か今日の夜からいないんですよね?」


「そうそう、仕事の関係でね。冷ちゃん、悪いんだけど…今日から一週間大変だと思うけど…」


「大丈夫。学校の方は、登校が2日分しかないから。」


「なにかあったら連絡してね。私、仕事放り出して帰るから!」


「放り出さないで仕事優先にしてください…」


詠さんは社会人であるので、ちゃんとした職に就いている。

会社とかで色々苦労してそうだけど…

ちゃんと頑張ってるのがすごいと、私は思う。

 …そして、数時間後。

詠さんが夕食を作り終わったあと。


「じゃあ、しばらくは帰れないから。」


「うん。気をつけて。」


「じゃあね。」


詠さんは家から出ていった。

しばらくすると、車のエンジン音が聞こえて発進した音が。


「…行っちゃったか。」


詠さんを見送って、私はお兄ちゃんのところに向かう。


「詠さん、行っちゃった?」


「うん。」


テーブル席で食事を摂っていたお兄ちゃんの向かいに、私も座る。

静かに食事をする私たち。

家に響くのは、食器の擦れ合う音と、外に降る雨音。


「詠さんいないと、とても静かだね。」


「そうだね。」


詠さんは私たち二人にとっての保護者みたいな人でもある。

いつもの食事は、賑やかなんだ。詠さんが苦労した話とか、過去にあった武勇伝とか。

おかしな話ばかり。こうやっていないと、すこし寂しいかも。


そして、食事を採りおわって寝る時間までなったとき。


ザー…


と、家の中では静かに雨音が響いていた。


「風の音と雨、すごいね。」


「うん、ほんとに。」


お兄ちゃんをベッドへ寝かす私。

毛布をかけて、電気を消す。

ベッドの側に敷いてある布団へ、私も横たわった。


「おやすみ、お兄ちゃん。」


「うん、おやすみ。」


こうして、いつもどおりの時間、いつもどおりに私とお兄ちゃんは寝た。

私とお兄ちゃんは眠りへとつく。


…たぶん、数時間したくらいだ。


  「ゲホゲホッ」


咳をする音。

それによって、私は目が覚めた。


「え?」


見てみると、お兄ちゃんが苦しそうに咳き込んでいた。


「お兄ちゃん!」


「ゴホッゲホッ、ゲホッ」


だめ、咳がおさまる気配がない。

汗もひどい…これは、発作…!?


「き、救急車!」


携帯は…

スマホを取り出すと、


  ピー、ピー


「え、なんで、バッテリー切れてる!」


「ゲホッ、れ、い…ゲホッ…」


暗い部屋に青紫に稲妻が走る。

雷…?

そして、また一つ、ドォーンッと響く。

まさか…


「ブレーカーが落ちたの!?」


カチカチ…と電気のスイッチを入れてみるが、やっぱり入らない。

そんな…


「ゲホッ、ハァッゴホッ…」


「ど、うすれば…」


今からブレーカーをあげても、携帯電話は使用不可。

家の固定電話はブレーカーをあげて使えるまでの時間がかかる…

今から走って病院?いや、ここから病院まで遠すぎる。おまけに、雷と雨…向かう途中に打たれたらアウト…

 私の目の前にいるお兄ちゃんは咳き込みながら、目の生気が消えかけている。

彼の額に汗が滲む。


「どうしよう…!?」


そのときだった。


  “いささか困っているようだな。”


近くで声が聞こえた。


「だ、だれ!?」


そばにいるようで、遠いような頭に響く声。


  “俺は悪魔…イヴェールという。訳あって、魂の状態のままお前に話しかけている。”


「悪魔…?こんなときに巫山戯ないで!こっちは兄の命が…!」


  “この状況で巫山戯る阿呆がいるか。お前の兄、そのままだと死んでしまうぞ?”


「!」


  “救いたいだろう?お前の兄を。”


「あ、あたりまえだ!たった一人の兄なんだよ?一緒にいてくれた兄なんだよ?助けたいに決まってる!」


  “ならば俺と契約をしろ。そうすれば、お前の兄を助けてやる。”


「契約…?」


“ああ。そうだな…”と悪魔を名乗るイヴェールは考える。


  “お前の兄を助ける代償に、お前に呪いをかける。”


「呪い…?」


  “お前の心臓に、俺の印をつける。お前の心臓が消えるとき、俺の命、お前の命…一気に2人も担う。そういう呪いだ。”


つまり、私の心臓は私を含め、2人の命を背負うという呪い。

私の命が絶たれたとき。

私と悪魔、一斉に消える。


  “一気に二人分の命を背負う覚悟はあるか?”


これを受けいれると言うことは、この悪魔と契約するという事になる。

悪魔という未知な者…受けいれるか、受けいれないか。

ただ、ここでお兄ちゃんを失うわけには…

私の選択肢はたった一つだった。


「なら、契約する。お兄ちゃんが助かるのなら。」


  “…たしかに承った。”


グッ…と私の胸…いや、心臓が熱くなった。

熱い。熱い。

熱が、痛みが…焼ける、焼ける…!

痛い、痛い痛い…!


「うあぁっ!」


この時は本当に痛かった。

苦しかった。

この人生で辛かった。

そして、熱さと痛みに耐えられなくなった私は、意識を手放した。



「ん…」


パチッ――

どのくらい経ったのか。

目を開けると、雨や雷で暗かった部屋が真逆になっていて、陽が差し込んでいた。

ここまでの経緯を振り返って、考えていると私は飛び起きた。


「お兄ちゃん!」


「なんだ、起きたのか。」


この声は…

私は一瞬で誰の声か理解した。けど、口調と声の強さだけ…違和感を感じた。


「え、と…お兄ちゃん?」


「だれがお前の兄だ…って、そうか、今俺が使ってる体は、お前の兄だったな。」


お兄ちゃんがベッドに座って、足を組んで私を見ていた。

…いや、雰囲気と顔つきがいつもと違う。

私たち兄妹目の色が一緒のはずなのに、明らかに色が…黄金色…

ってことは…


「お兄ちゃんじゃ、ない…?」


「今はな。どうだ?兄を生きのびさせてやったぞ。」


え…あ、そっか…確か昨晩…確か、悪魔の人と契約を…


「…え、悪魔?」


「そうだ。何か文句でも?」


沈黙が流れた。

悪魔…?ってことは、今話してるのは、私のお兄ちゃんではなく…


「悪魔のア○ール?」


「人気ファッション店ではない。イヴェールだ。イヴェール・ディアブル。」


どうどうとツッコまれました。

というか、聞いたことのない名前とファミリーネーム。

外国の人…みたいな。

でも喋ってるのは日本語だし…


「俺は人間とたくさん話す機会があるのだ。多少の言語は心得てる。」


と、まるで私の思考を読んだかのように悪魔さんは答えた。


「…全部口に出ていたぞ。」


撤回します。

色々と混乱しすぎて…って、


「なんでお兄ちゃんの格好して私と話してんですか!?」


「やっと聞く気になったか、ノロマ。」


私はベッドを支えにして悪魔さんに近づく。

…鼻と鼻がつきそうなくらい。


「色々事が起こりすぎて、頭の中混乱してるんですよ!それで、お兄ちゃんは!?」


「俺が助けたあと、今は眠ってる。だから今はこいつの体を借りて、お前に話しかけているんだ。」


「あと、近い。」と私を左手で押しのける。

ベッドに腰掛けていた悪魔さんは、立ち上がって「とりあえず、モーニングティーかなんかが欲しい。お前、俺に茶を入れろ。」と私に言った。


「…は?」


口をあんぐりと開けていた私を余所に、部屋を出て悪魔さんは居間へと向かっていった。

あの人、勝手すぎない?

気のせい?


グゥゥ~…


考えごとしていたら、腹の音が鳴った。

時間帯は、朝の9時すぎ。


「…今日は休みか…いつも早起きするから、そりゃお腹は空くか…」


「なにをしている。早く用意しろ、俺は気が短い方だ。」


…わざわざこっちまで戻ってきて、私に食事を用意しろと急かす悪魔さん。


「わかりましたよ。今から準備するんで、時間くださいよ。」


私も立ち上がって、布団を片づけて部屋を出て行った。

さて、今日の朝ごはんは…と考えながら。



コトコト…

カップに、湯気とともにほろ苦い香りが引き立ってきた。

そう、コーヒーである。


「紅茶はないのか?」


「朝はコーヒーと決まっているので。」


と手早く作ったサンドイッチを私と悪魔さんの分で用意する。

サンドイッチの中身はハムだったり、タマゴだったり。


「あ、あと私に何か料理をせがまれても、軽いものしか作れませんのでご容赦してくださいね。」


私は一口サンドイッチを頬張る。

ん、おいし。


「はぁ…で、お前は俺になにを聞きたいんだ?」


悪魔さんもサンドイッチを頬張り始める。

なんだかんだ言って食べてくれるんだ。


「まずは、契約…っていうか、呪いについてです。」


「わかった。じゃあ、それから話そう。お前が俺に契約したのは、兄を助けるということ。昨晩の出来事を覚えているか?」


私は頷く。


「私はお前に呼びかけた。お前の兄を助ける代わりにお前に呪いをかけると。」


「私の心臓に何かしたのも、それ…でいいのかな。」


「ああ。お前の心臓に“印”をつけた。つまり“契約印”。」


契約印…?

すると、悪魔さんはポワッと手のひらに球を浮かべる。

え、なにあれ。


「魔法だ。お前たちの言葉で言うとな。」


「え。」


「また口に出ていたぞ。」


…もう知らん。


「いいか、続けるぞ?」


魔法…球を浮かべた悪魔さんはちがうものに変形させる。

できたのは…


「雪の…結晶?」


赤色がベースの雪片が。

その結晶はふわふわと悪魔さんの手のひらに浮かんで、赤いオーラを纏っていた。


「ちなみにこれが俺専用の契約印。お前の心臓に直接この印が刻まれているはずだ。」


私の心臓に…

そっと私は胸に手を置く。

ドクン、ドクン…

一定の心音を感じた。普通にしか思えないのに、これに呪いがかけられているなんて…

悪魔さんは球を、ヒュンッと消して説明を続けた。


「契約するときにも言ったが、お前の心臓は俺のものでもある。」


「それ…どういうことですか?イマイチよく分かってないんですけど…」


「お前の心臓は俺の命と共有しているということだ。お前が死ねば、俺も死ぬ。聞いただろう?“一気に二人分の命を背負う覚悟はあるか?”と。」


「あ…」


そういえば、聞いた。

あの時は、お兄ちゃんを助けたくて咄嗟にやったこと…

…重いもの、背負わせたな…


「そういえば、悪魔さんは何でお兄ちゃんの体に居座ってるんですか?」


「名前を呼べ、名前を。理由は…お前の兄の方が扱いやすいからだ。」


「扱いやすい?」


コーヒーカップを手に取る悪魔さん。


「本来だったら、契約した相手の体を憑依したりするんだが…」


「えっ」


カップを揺らして、足を組む悪魔さん。


「お前のような忙しい女の体を憑依するぐらいなら、病弱で寝たきりのお前の兄が一番良いかと思ってな。それに、俺に女の体は似合わん。」


「忙しいって…というか、兄の体を勝手に乗っとらないでください。」


「仕方ないだろう。俺の魂があのまま放浪していたら、消滅していた。」


「え、それってどういう…」


ズズズ…とコーヒーをすする悪魔さん。

それをを飲みきると、椅子に座っていた悪魔さんは立ち上がって、


「まぁ、それはさておき。お前の兄の命は救ってやった。しばらくはお前の兄の体に入りこむ。世話をよろしく頼むぞ、妹よ。」


「しばらくはって…っていうか、私を妹と呼ばないでくださいよ!」


私もガタッと音を鳴らして、椅子から立ち上がる。

そそくさとここから立ち去ろうとする悪魔さんに目を向けて。


「じゃあなんて呼べと?」


「冷です!夜月冷!私の名前で呼んでくださいよ。」


「気が向いたらな。さて、お前の兄も起きてきたからそろそろ変わるぞ。ではまたな、妹よ。」


話聞いてた!?と声を出そうとしたら、彼の体が倒れていく。

え、ちょっと…?

私は慌てて、お兄ちゃんの体を支える。

ガクッと力が抜けたかのような重みがのしかかる。


「おわわっ、これ、お兄ちゃんの体重が平均以上だったら支えるの厳しかったよ…?」


すると、お兄ちゃんの目が開いていく。


「ん…あ、れ…?僕…」


お兄ちゃんの目を見ると、私と同じ青緑の色をしていた。

ってことは…戻ったの…?


「まるで二重人格みたいな…じゃなくて、お兄ちゃん大丈夫?」


「え、ああ…うん。」


どんな状況だ…?というような感じで、お兄ちゃんは周りを見まわす。


「僕、息苦しくなってなかったっけ…?」


「え、そこから…?お兄ちゃん、覚えてないの…?」


「え?」


私に向けて首をかしげるお兄ちゃん。

…言わない方が良いか。いや、でもお兄ちゃんのこと…うーん…


「詳しく説明してくれるかい、冷。」


悩んでいると、お兄ちゃんが真剣な目で私を見て聞いてきた。

信じてくれるかな…でも、実際に起こってたことだし…


「大丈夫、冷のこと信じるから。ちゃんと話してくれるかい?」


と私の頭に手をのせて優しく言ってきた。

…お兄ちゃんが言うなら、話そう。

お兄ちゃんを椅子に座らせて、昨晩起こったことと今さっき起こったことを話した。


「…なるほど…なんか、思ってたより大事だったみたいだね…」


暖かく淹れたコーヒーをお兄ちゃんはすする。

…意外と…わかってる…?

コーヒーカップを置いて、


「そして冷。いくら何でも、危ないものに契約したらダメだ。しかも悪魔となんて…一般的に見たら、とても危ない生物なんだよ。」


「う…だ、だって、お兄ちゃんのこと、ほっとけなかったから…」


それに、あのまま助けられなかったら…

自然と、私の手には拳が作られて震えた。

少しため息が聞こえたあと


「…過ぎたことは仕方ないか。」


ポンッと頭に軽い重みを感じた。

見てみると、お兄ちゃんが私の頭に手をのせていた。


「僕も冷を失うのが辛いんだ。…きっと、僕も…冷の立場だったら、迷わず契約してたと思う。」


お互い大事だね。とお兄ちゃんは困ったように笑いかけた。


「許してくれるの?」


「許すも何も、助けてくれたんだよね?なら起こるんじゃなくて、ありがとうって言わないと。」


お兄ちゃん…!

私は笑って、お兄ちゃんに抱きついた。

優しいお兄ちゃん。

私はそんなお兄ちゃんが大好きだ。


「ほう、ずいぶん可愛いらしいことをするな。妹よ。」


「へっ?」


「兄に抱きつくほど嬉しいとは、まぁ、救ってやった甲斐があったというものだな。」


などと、黒い笑みを浮かべるお兄ちゃん。

…いや、このしゃべり方、この黄金色に変わった目…

明らかに…


「な、何聞いてんだこの悪魔ぁぁーーーっ!!」


ベシィィンッ!と会心の一撃(ビンタ)を悪魔に食らわせたのでありました。

けっこう強い衝撃だったため、彼は床に倒れこんだ。

あ、やってしまった。

よくよく考えてみたら、中身は悪魔でも体はお兄ちゃんの体。

だから当然、お兄ちゃんに被害が…


「……。」


ごめんなさい、お兄ちゃん!!

悪魔さんは別にどうでも良いけれど、お兄ちゃんの事だったら別!


「おい、俺のことがどうでも良いとは何だ。」


…なんか聞こえたけど、気にしない気にしない。


「気にしろ心むき出し女。」


「うるさいです。ドSむき出しの悪魔!」


「俺にとっては褒め言葉だ。」


はらたつこの悪魔…

まぁ、そんなこんなでこれから生活していく中で、悪魔さんが増えました。

正直言って、まったく嬉しくないです。

…お兄ちゃんを助けてくれたことに関しては、感謝しますけど。

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