2:長男はリストラされる
リストラされたので初投稿です!
あれから5年、俺は長男として頑張り続けた。
最低の『Fランク』である俺を雇ってくれるギルドはほとんどなく、仕方なく“キツい・汚い・給料が安い”ことで有名なギルド『ブラックハンターズ』に就職することになった。
そこから始まる地獄のような日々。
上級魔法使いたちの盾扱いされ、何度もモンスターに殺されかけた。
どんなにボロボロになっても、俺を気遣ってくれる者は誰もいない。
怪我と疲労を抱えたまま、盾役から荷物運びからストレス発散のサンドバック役まで、俺は長男としてこなし続けた。
魔法使いギルド『ブラックハンターズ』はたくさんのパーティを抱えており、一日でいくつもの仕事を安く受けることで有名だ。
俺は家に仕送りをするためにもほとんどの仕事に率先して参加し、一日の労働時間は22時間にも達した。
――それでも、それでも俺はへこたれずに働き続けたのだ。
だって俺は、長男だからッ!
そんなある日のこと、俺が荷物持ちとして参加したパーティはダンジョンに潜り込んでいた。
ダンジョンとはモンスターたちが溢れ出してくる洞窟である。ある日突然、山の斜面などにいきなり現れることが多い。
いま訪れているダンジョンもいきなり出現したものであり、どんなモンスターが出てくるか調査するのが今回の仕事だ。
「よーし、ドンドン奥に進んでいくわよー」
そう言って歩いていく女リーダーと、彼女に従う女踊り子や女武闘家たち。
……その後ろを俺は息を切らしながら歩いていた。
背中には山ほどのリュックサックを背負っている。
中には彼女たちが持っていきたいとワガママを言って持参した美容セットやティーセットなどが詰まっている。
そんなもの必要ないだろうと思うが、Fランクの俺に意見する権利なんてない。
「はぁ、はぁ……」
歩ているだけでも関節が砕けそうだ……。
特にリーダーは代えの剣を何十本も持たせたため、おそらく100kg以上の重りを背負っていることになるだろう。
「オラァFランク野郎ッ、遅れるんじゃないわよッ! ぶっ殺すわよ!?」
「す、すまない……」
「もしも荷物を勝手に地べたに置きやがったら処刑するからね? アンタの命なんかより、このBランク魔法使いである私の武器のほうが大切なんだからッ!」
きっぱりとそう言い切る女リーダー。
所詮、『Fランク』の扱いなんてこんなもんだ。どんなに働いたって誰も労ってはくれない。
……辛くて泣きそうになってしまうが、俺は長男なので耐えた。
妹や母の顔を思い浮かべて必死で身体に力を入れる。
そうして俺たちが進んでいくと、狭い道の真ん中に巨大な魔法陣が存在しているのが見えた。
「これは、罠か……」
パーティメンバーたちと共に足を止める。
ダンジョン内にたまにある仕掛けだ。
こういうのを踏むと火柱が上がったり風の刃が飛び出したり、ろくなことにはならない。
よって迂回するのがセオリーなのだが……、
「きゃははっ、飛び越えていくにはちょっとキツい大きさだね~! 特に荷物持ちで『ファイヤーボール』しか使えないアンリくんには無理だねー!」
女踊り子がこちらを蔑みながら笑った。
彼女の言う通り、ジャンプして飛び越えるのは少し無理そうだ。
しかも狭い通路のど真ん中であるため、迂回することも難しい。
……一応、『Bランク』の女踊り子が風魔法を使って浮かび上がらせてくれたら回避できそうだが、彼女は俺のためになんて絶対に魔法を使わないだろう。
さてどうするか……そう思っていた時、女リーダーが軽い調子で頷いた。
「いちいち魔法で飛び越えるのも面倒ね。よしアンリ、荷物は置いていいから踏みなさい」
「はっ?」
その一言に目を見開く。
今彼女は、なんて言った……!?
「ま、待ってくれ、それは……!」
「あぁッ!? テメェアンリ、このリーダー様に逆らうの!? あぁーあぁーナマイキッ! もういいわ、アンタはギルドから追放ね」
「なっ!?」
追放だって!?
そ、それは困る! 俺には養わないといけない妹たちや、病気の母親がいるんだっ!
長男として彼女たちを支えなければいけないのに……!
「つ、追放だけは許してくれ! そんなことになったら仕送りができなく……!」
「うるさいゴミ。……あぁちなみに、これでアンタは『ブラックハンターズ』とは関係ない人間になったわけよ。ギルドには一応“メンバー同士で危害を与え合うのは禁止”ってルールがあるけど、これで問題ないわよねぇー?」
そう言ってニヤリと笑う女リーダー。
その笑みと言葉に危険を覚えた瞬間、彼女の手下である女武闘家が俺の腹をブン殴った!
「ぐぅうううッ!?」
「わめくなFランク。それじゃあリーダー、コイツを殺して早く先に進もう」
「そうねー」
……強烈な一撃を受けたことで意識が遠のく。
そんな俺をリーダーが見下し、
「じゃあさようなら、ゴミクズFランクのアンリくん。来世はもっと強くなれるといいわね~?」
そうしてぐったりとしている俺から荷物を奪い取ると、魔法陣に無理やり蹴り込んだ――!
「っ!?」
その瞬間、大量の光が魔法陣から溢れ出し――俺の身体は粒子となって、どこかに消えてしまうのだった……!
・次回、長男なので修行開始です――!
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