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氷世界の戦士たち  作者: キューイ
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ルーキーズ

ミルに吹っ飛ばされてから数日の間、作業を一段と丁寧にやることを意識した。グレンさんの言ったようにツルハシの振り方、足の踏ん張り、ジャス地区の先輩たちに追いつくため色々試してみた。


「ちょっと良くなったな、ツルハシの振り方」


「まだまだだ…あのミルって奴みたいにもっと威力が…」


「多分あれは鉱技の一種だろ…後お前のツルハシは応用力重視だからそこまで威力は出ない」


「でも振り方の基本とかはちゃんとしてなきゃだろ!」


腰を落とす、半月のように振る。何か足りない気がする。先輩たちを手本にしようにも振方がバラバラだ。


「おっ、もう昼だ。休憩しようぜマイン」


「グレンさんの奢りなら」



「いいよ、行こう。それ以上続けたらオーバーワークだ」



作業を止める理由とただ飯を手に入れたところでツルハシをおいた。グレンさんと飯を食うときはいつも作業場近くの定食屋だ。


ツララが貼った暖簾を潜ると生暖かい空気に包まれた。


「おっマインとグレンの旦那!らっしゃい!あったけえだろ!エアコン買ったんだぜ!」


氷の中のエアコンを取り出し、設置するとなるとかなりの金貨が必要なはずだ。儲かっているらしい。


「おやっさん、10種類漬物定食を二つ頼む」



「おぅ!運動後にはしょっぱいもんだもんな!」


飯の間は会話がなかったが、食べ終わったらしいグレンが話しかけてきた。


「そういや、あのミルって子今年のルーキーで1番らしいぞ」


「1番…今の俺の位置はどこなんだ?」


追いつくためには相手と自分の距離を測ることが大切だ。討伐にしても採掘にしてももっと上手くなりたい。


「マインはルーキーの中じゃ30ばんくらいか?」


「今年何人いる?ルーキー」


「確か現時点で90人…」


どっからきたデータなのかわからないが、周りの先輩の影響で自分が良い方という感じがしない。


「まぁマインは昨日誕生日なんだからまだまだ頑張れるぜ」


昨夜のミルだけではない、すごい氷鉱夫はまだまだ沢山いる。別に1番になりたいわけではないが、やるからには採掘も討伐も上手くなりたいのだ。


ごちそうさまと言って店を出ると外気が一段と寒く感じられた。室内が暖かいと言うのも考えものかもしれない。



作業場に戻る道中午後の作業がどうしたらもっとうまくできるかを考えていた。かなり集中していたようで、作業場についても気づかなかった。


「マイン、グレンさん!昼が終わったならきてくれ!」


カストルフがこちらに手を振っている。また何かお達しだろうか、しかし他の氷鉱夫は呼ばれていない。グレンさんと顔を見合わせてなんだろうかと思い行ってみるとかなり驚かされることになった。



「グレンさん、マイン、早速コネクト制度が使われることになった。コンプス地区第2採掘氷場の討伐に協力しに行ってほしい」


「コンプス地区…?あそこは確かに氷鉱夫が少ないからな、いやでも…」


「そうです。あと、他の採掘氷場からもヘルプが来るらしいから明日、早めに行って打ち合わせをしてください」


「ヘルプか…他の氷鉱夫が見れるならこっちとしても嬉しいぜ」


コンプス地区はかなり離れている。その地区は氷の中の生活必需品の取り出し量の平均が一番の地区らしい。そこの氷鉱夫なら優秀だろう。


それに他の地区の氷鉱夫を見れるなら嬉しい、自分にとっては研究対象は多い方がいいからだ。年上の氷鉱夫には必ず共通点があるはずだ。それを吸収したいのだ。




「よーし!明日に向けて午後で成長するぞ!」


「ふっ、そんな早く成長出来たら苦労しないぞ」



持ち場の氷の前に立つ、今日の取り出し物はないから氷を削るだけだ。もちろん持ち手の先の方を持てばパワーは上がる。しかしそうするとコントロールが効かなくなることがあった。


「コントロール重視で持ち手を短く持つか…いや、たださえ応用力重視でパワーの小さいフォアリベラルだ。これ以上パワーは抑えられない」


重心の移動、当てる角度、いろいろ考えては打つ、打っては考えるを繰り返していくうちに手が痺れてくる。ツルハシと手の境界が分からなくなるぐらいになるまで打っていると辺りはもう暗くなっていた。


気づくとかなり掘ったようで隣の持ち場が見えなくなるほど進んでいた。


「…うーんまだつかめねぇな…集中力が上がっただけで掘るスピード変わってないな…」


しかし今考えても仕方がない。明日他の氷鉱夫と会って学んだ方が良い。戦いの中でも成長できるかもしれない。


どんな氷鉱夫と会えるのだろうか。学ばなくてはいけないとは言え、楽しみでもある。







****




カフェリア地区第一採掘氷場はNo. 1採掘氷場と言われる理由があった。それは4人で作業を高クオリティかつハイスピードですることができるという理由だ。



ルーキーであるミルも他のルーキーの追随を許さないレベルの氷鉱夫である。そこのリーダーの快活な青年カイは暗くなってきたのを見て氷鉱夫たちに呼びかける。


「もう暗いし作業はこれまでだ、ミル!明日はコンプス地区にヘルプに行くんだし早めに休むんだ!」



「はい…カイさん、ところで明日は他にどんな方がいらっしゃるのですか?」



「初のコネクト制度適用だからな、とりあえずトップクラス2人、ルーキーは君含めて3人だ!」


その言葉に一層ミルの身が引き締まる。


「私はまだトップクラスではないということですね!」


「そうだ…先は長いが頑張れ!」


「はい!!」



カイは元気よく返事をした後輩が控え室に戻るのを目で追った。ミルに関して特に心配していることがあった。しかしそれを本人の前で言わない。


「かたすぎるな…うちのを頼みますよ、ジャス地区第3の人たち…」


カフェリア地区にはカイの他に氷鉱夫はいるがみんな超真面目だ。もう少しフランクにミルに絡んでやれる人がいたら…とカイは常々思っていたのだ。


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