ハイパーママタイム
「まず、何でパパと、ママが駆け落ちしたって知ってるの」
「いや、駆け落ちっていうかさあー、あたし、おじいちゃんにもおばあちゃんにも会った事ないし、もしかしてーって思ってさー」
しどろもどろになりながら、適当に思いついた事を口にする。
「確かにそうだけど、祖父や祖母がいない家庭の子なんて珍しくないわ。それで駆け落ちにしたって断定するような言い方おかしいでしょう」
「いや、なんかそうなんじゃない?って適当に言っただけで…」
「それにイセカイテンセイってどういう意味?ツイホウルートって何の事?ちゃんとわかる様に説明しなさい」
「いや…それは何ていうか…ちょっとあたしも何て言ったらいいんだか…」
何とか適当に言いくるめようと思ったけど、ママが怖過ぎるー!話めっちゃ詰めてくるじゃん!
「ユーリまさか、変な男と付き合って怪しい葉っぱとか嗜んだりして無いわよね!?」
「ちょっ…ええぇー、何いってんの?!そんな訳ないじゃん、娘の事もっと信用してよ!」
いきなり必死な形相で肩を掴んでくるので、あたしの方がびっくりしてしまう。
何でそんな発想になるかな?!
いや、それからいヤバい感じみ見えてるのあたし??
「信用してるわよ!!…だけど、あなた最近なんだか様子が違うじゃない…何だか考え混んでいたり、よく眠れていないみたいだし…心配なのよ」
辛そうな顔であたしの顔をじっと見る。
怖い怖いと思っていたけど、ママも不安だったんだ…
目を合わせると、ママの蒼い瞳が少しうるんでいた。
「ママ…心配かけてごめんなさい…」
本気で心配してくれているママに、このまま適当に話を濁しておくのは心苦しい。
一人で抱え込むのもあたしには荷が重いし、いっそ全て話してしまおう。
「ママ、あたしね…今からちょっと信じられないような事を言うと思うんだけど、決して怪しい葉っぱや薬に手を出していないし、パパとママの信頼に背くような事はしていないの。
理解しにくい所が多いと思うんだけど、とりあえず最後まであたしの話を聞いてくれる?」
「ユーリ、もちろんよ。あたしの愛しい子」
ママは、優しく微笑んであたしを抱きしめてくれた。
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「えーちょっと待って、その、スマホって何?魔道具屋さんのユンちゃんに言ったら作れる?」
「もー!!ちょっとママ、とりあえず最後まで聞いてって言ったでしょ!話の腰折らないでよ!
ユンちゃんに言っても多分無理だよ!」
「だって気になって話の内容入って来ないのよ。いいじやないちょっとくらい教えてくれたって」
「さっきからそうやってちょっと、ちょっとって言うからもう、2時間も経ってるじゃん!もーパパ帰ってきちゃったし!」
「え…パパ帰って来ちゃダメだった…?」
うん、ママ、話受け入れてくれるのはいいんだけど、おばさん特有の話が脱線する質問攻めで、話が全然進まない。
「そんな訳ないじゃない、ジーク、お帰りなさい♡ちょっと女同士の会話してたから。今日もお疲れ様♡先にお風呂にする?」
広い肩をがっくり下げて寂しそうな目をしていたパパに、ママは嬉しそうにお帰りなさいのハグをしに行く。
パパは、結婚前は騎士をしていたので、すごく鍛えられた体格をしていて、今もそれを維持している。
凛々しい顔付きで、肉食系!って感じだけど、ママと、あたしにはめっぽう弱い。
「ホントに?女同士の会話か、可愛らしいね。じゃあ先にお風呂に行ってくるから、2人で楽しんで」
ママなハグでたちまち機嫌を治してお風呂に消えるパパ。何かあしらわれた感じで申し訳ない。
「じゃ、とりあえず続きね。長くならそうだからちょっと飲み物持ってくるわ」
「って、ママそれワインじゃん」
「チーズもあるわよ。ナッツとパイも。」
「食べるけどさぁ〜…」
緊張感ないなぁー、もう。
「ちょっと理解が追いつかなくて、素面じゃやってらんないのよ。」
「えー…まぁ、いいけど…」
グダグダになりつつも、現状の説明が終わったのは更に2時間かかった。
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「大体の話はわかったわ」
ワインの瓶3本空けて、ママは真面目な顔をして言った。
因みにパパはもう寝た。
「わかったんだけど、別にユーリが勉強するのと、学園に行く事は関係ないんじゃない?」
何でもない事のように言うママ。
「だって、学力優秀っていう事が学園に伝わって、特待生として招かれるって事でしょ?こんな辺鄙な所で試験もないし、自分から売り込んでいかない限り、学園に招かれる何て事にならないんじゃない?そもそも、断ればいいんだし」
・・・・・
目から鱗なんですけどー!!!
「えっ。あっ、確かにそうかも!何で気づかなかったんだろ!ママ天才」
「うふふ、そうでしょうママはお姫様だったから、小さい頃から勉強勉強で大変だったけど、優秀だったのよ」
あっ、藪蛇。
「でもね、子供の頃は辛い時もあったけど、今はその経験で身を立てる事が出来ているから、感謝もしているの。
駆け落ちすることで身分は変わっても、自分で得た知識は誰にも奪われてない、私の力になっているの。だからユーリ、あなたにもその力を手に入れて欲しいのよ」
「ママ…」
お説教ルートかと思ったら、意外といい話だった…
「そう、知識とは力なの。世の中は力が全て」
「ママ?」
「ままのこの力を受け継いで、ユーリはこの村を最強の村にするのよ。そうしてこの国の識学率をあげ、豊かな暮らし、女性の社会進出、働き方改革を推進し、心までも富める国として支配するのよ…!」
「ママ?支配って言った今?」
「ユーリ!チカラがホシイ?!」
「ママ!?ちょっ…ベロンベロンじゃんこの人!ぐっにゃぐにゃ!ちょっとー!パパ来てー!!ママがー!!」
…こんな感じでハイパーママタイムが終了して、あたしのカミングアウトの夜は更けていった。




