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国王になるための戦略

お題は「農地改革」のようだ。


悪いがこのお題に関しては俺らにとって圧倒的有利だ。

ブルムンド王国は周辺の人間国の中では1番優れている。しかし、それはあくまでこの世界での話。俺たちがきた場所はこの世界じゃない、もっと進んだ場所だ。


「じゃあ、始めていこうか。何か案はあるか?」


俺は相手チーム、カナミとヒロトに尋ねた。


「農地改革?難しすぎるよな?このお題。」


俺は同意を求めるようにヒロトに言った。もちろん作戦、俺には案がある、もし俺の案がダメでもこちらには全国模試万年2位の妹、紫織がいる。


「やっぱりそうですよね!あーよかった。俺たちもこの議題難しいよねって話してたんですよ!」


安心したかのようにヒロトは俺に打ち解けてきた。


「僕はこの議題まったく手が出ません。カナミさんは何かある?」

「私が農地改革として提案するのはやはり農民をもっと増やすことですわ。」


あー、出たよ。俺の世界にもいたな、下の者のことを考えずただ闇雲に消費するかのように人をこき使うやつ。やっぱりどいつもこいつも人間はクソだな。


「いいじゃん!カナミさん!それで決まりだよ!いやぁこれ僕たち勝っちゃったかなぁ〜」


そう言うと審判役の人が


「これで終了ですか?では勝者は……」

「これだから頭がお花畑の奴らは困る。」


周りの人たちは俺たちの話を喋りながら聞いていたが、俺の一声で一瞬にして静まった。


「今なんと?」

「あ?聞こえなかったか。なら仕方ない。もう一度言おう。これだから頭がお花畑の奴らは困ると言ったんだ。」


俺が再度そう言うと、貴族たちからの怒号が聞こえてくる。


「貴族に対してなんて態度を!恥を知れ!」

「貴様ら我ら貴族に歯向かってタダで済むと思うなよ?」


聞こえる聞こえる。いつも聞いてた罵倒が、怒号が。

そんな怒号を一瞬にして静めたのは創造神さんだった。


『静粛にせよ。人間ども。高々金を持っている程度で威張るなど烏滸がましい。』


その声は人々を震え上がらせるには十分だった。

もちろん彼女?が創造神さんだということを知るのは俺と紫織のみ。しかし、DNAに刻まれた恐怖や尊敬が本能として彼女の言葉を恐れたのだ。


「カナミ?と言ったか?」

「な、何ですの?」

「あなたは農民を、労働者を下僕のようにもっと働かせれば良いと仰いましたね?」


この世界では嘘はつけない、真実しか告げられない。

それを逆手に取った事実確認。ここに見にきてる人は何も貴族だけではない。農民や労働者も見にきているのだ。


「は、はい申し上げましたわ。」

「皆の者聞いたか?この者は無策に民をこき使う、貴方達農民や労働者のことを一切考えておられないぞ!」


俺はそう高らかに宣言するとまた怒号が聞こえてきた。


「ふざけるんじゃねえ!俺たちは消耗品じゃねぇんだぞ!」

「そうだそうだ!今でも必死に高い税納めてんのにこれ以上働けってのか!」


そう、俺はこれを待っていた。迂闊に俺が発言すれば農民や労働者の側も敵に回しかねない。

であるから、相手がボロを出すのを待ったのだ。


こうして俺が農民や労働者を煽ったお陰で貴族と労働者、農民との抗争が始まった。もちろん国王選定など中止である。


先程発言していたカナミやヒロトも先程農民や労働者に連れていかれた。

ここの国は未だに奴隷制もあるらしい。そんな者たちがいるなど、この国は本当に腐っていたようだ。

1週間に及ぶ抗争の結果農民や労働者の勝利で終わり、俺と紫織は新たな王として担がれた。


俺の思惑通り。こっちの方が国王になるには手っ取り早かった。


俺と紫織は早速新国王の挨拶を行うことにした。

挨拶では今後の政策を事細かに説明した。


1.部下の者は貴族だけではなく、身分は関係なしで有能な者を選ぶため試験を実施すること。


2.奴隷制は廃止。奴隷だった子供たちは国が運営する児童養護施設にて保護。教育機関にて勉強もさせる。


3.税は一律とする。


4.農作物は米、小麦、サトウキビ、休ませる、の4つを周期的に行うこと。


5.銀行に国債というものを発行させること。地方では地方債を発行すること。


この5つを紫織が発表した。俺は規則を破れば懲役刑、又は罰金刑を処すことを説明した。

これが安定してできるようになれば次は特産品の販売だろう。この国には特産品というものがない。なので周辺の国々も貿易をしてくれないのだ。

とりあえずやることは山積みである。


俺は政策を述べた紫織を見守った後、創造神さんのところへ向かった。


『お疲れ様です。お見事ですね。やはりあの世界で腐らせとくにはもったいないと思って連れてきたのですが、正解でした。国王選定の時の抗争が終わってまだ1週間も経たないうちにここまでやるとは。』

「この政策を発表したのは妹、紫織だ。褒めるならこいつを褒めてやってくれ。」


俺は紫織の頭を撫でながら創造神さんに言った。


『ご謙遜を。確かにこの政策を発表したのは妹さんかもしれませんが、国王選定時のあの暴動、あれは意図的に起こしましたね?そして、この政策も貴方が考えたのでは?』

「さて、何のことやら。」


俺は出来るだけ影に徹したいのだ。目立つのは妹だけでいい。褒められるなら、敬われるなら妹だけで良いのだ。

ここまでの人生で妹は俺以外に褒められたことなんてない。そんなのは可哀想すぎる。だからこそ陽の目を見て欲しいのだ。

そのためだったら俺がいくら泥かぶっても構わない。怒りの矛先は俺だけでいいのだ。


「悠慈お兄ちゃん?顔怖いよ?」

「ん?あ、いや、なんでもないぞ。それはそうと養護施設の方に行かないか?」

「いいけど、本当になんでもない?」

「ああ、何でもない。よければ創造神さんも来ませんか?」

『お言葉に甘えて、私も行かせてもらいましょう。』


俺はそう言うと紫織や創造神さんと共に建設中の養護施設に向かった。



『人間とは何か1つでも共通の敵がいれば、まとまる生き物です。彼はその敵になろうとしているようですね。』




俺たちが養護施設に着くと元奴隷だった子供たちが駆け寄ってきた。


「新国王様だぁ!」

「国王様ー!」


紫織の元に子供達が駆け寄る。俺はそれを遠くから眺める。俺の元には子供達は来ない。なぜなら子供達がお礼を言うべきなのは紫織の方だからである。

紫織が発表した政策によって子供達は奴隷から解放された。そして、学びの場まで用意してくれたのだ。その為子供達は紫織のことを神様のように敬い、感謝するのだ。一方俺は特に何もしていない、その為子供達は俺のところに来る理由がないのだ。


『貴方はこれで良いのですか?前の世界と同様に日の目に隠れ、自分の能力をひけらかさないで。』

「ハッ!俺には何の能力もねぇっすよ。買いかぶり過ぎですって。それよりもほら、呼ばれてますよ。」


「美人のお姉ちゃん!こっちに来て遊ぼう!お姉ちゃんが僕達のこと守ってくれたんでしょ?そこのお兄さんが言ってたよ!」


そう、俺は3人でから少し前に子供達に言っておいたのだ。


「これからお姉ちゃん達が来る。片方がこの前新しく即位した国王の紫織。そして、もう片方のお姉ちゃんは貴族の暴虐を止めてくれた人だからちゃんとお礼を言うんだよ。」

「お兄ちゃんは?誰?」

「んー、俺は悠慈。ただの一般人さ。」


これで一件落着だ。俺が表沙汰になることはない。感謝され敬われるのは彼女達だけだ。


俺は子供達と遊ぶ2人を見ながら木陰に座った。


「お兄さんでしょ?私たち奴隷を助けてくれたの。」


声のする方へ振り返ると本を読んでいる少女がいた。


「君はみんなと遊ばなくていいのかい?」

「私は1人の方が好きなの。」


ところどころに痛々しい痣が見える。


「ところで何で俺が助けたと思ったの?実際に奴隷制を廃止させたのは国王様だよ?」

「貴方も国王様でしょ。抗争が起こったお陰でうやむやになってるけど。」


この子は結構頭のいい子のようだ。将来議員になるのも夢ではないかもしれない。


「よく知ってるね。それで、何で俺が助けたと思ったの?」

「さっきのお姉さん、呼ばれてるって言ってた時驚いてた。てことは呼ばれるとは思ってなかったってことよね。つまり、真に褒められると思ってた人がいたってこと。」

「それでも俺ってことにはならないぜ。」

「それはそうだけど……」


本当にこの子は鋭い。


「だけどここまで来れた君にご褒美だ。そう正解さ。でもこれは秘密だ。いいね?」


俺は彼女に釘をさすように言った。


「いいけど、何で貴方はわざわざ裏方に回ろうとするの?」

「俺が陽の目を見る必要なんてない。見るべきなのは妹の、紫織の方だ。」

「妹さんだったの⁉︎」

「そうは見えねえか?ま、そうだよな。あいつは俺なんかよりもっと輝いているからな。君もそう思ったんだろ?」

「君じゃなくてヒヨリ」

「え?」

「だから、私の名前はヒヨリって言ってるの。」

「あぁ、そうゆうことね。俺は悠慈だ。それと、ヒヨリ、君は何か隠していることがあるね?」

「何のこと?」

「そうゆう時は、どういうこと、が答えとしては正解だ。」

「……そうよ。じゃあ何か当てられる?」

「ああ、ズバリ言うと君は男性恐怖症だね。理由は俺が顔を君に向けた瞬間、一瞬ビクッとしたことだ。そしてもう1つ、君は俺と喋っている間緊張してた。その根拠は君の本だ。君は俺と喋ってから1ページも読み進めていないことだ。」


俺がそう言うとヒヨリは顔を上げた。


「ほんと、何でもお見通しなのね。いやになる。……そうよ。私過去にいろいろあって男の人が苦手なの。だからあそこにも遊びに行けない。」

「やっぱ遊びたいんじゃねぇか。なら王城で働いてみるか?あそこならやることさえやれば、あとは自由にしていいからな。君なら王城でも十分働けるぐらいの能力があるよ。」

「……ほんとに?でも、そんな軽々しく王城に連れてって大丈夫なの?試験を導入するって……」

「その法律の施行は明日からだ。だから今日はノーカン。さ、来たいなら来い。返事は今日中だ。返事が決まったら城に来な。」


そう俺は言うと立ち上がり、2人にそろそろ帰ろうと伝え、王城へと引き返した。










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