俺と妹
はじめまして。Toroと申します。
今回は今連載中の作品とは真逆を行く作品です。
少し重めですがご容赦ください。
あぁつまんない。本当につまらない。どうしてこんなにも世界は不平等なのだろう。
頬杖をつき、窓の外を見る。そうでもしないと目に入ってしまう。
机にはたくさんの死ねという文字。ご丁寧に花まで添えられてある。
いわゆるイジメというやつだ。俺はそれの標的にされたらしい。
高校2年の頃に始まったこのイジメ。きっかけはイジメられていた1つ下の妹を庇ったからである。
もちろん後悔なんかしていない。
妹はありもしないでまかせを流されたり、バケツで水をかけられたりしていた。何で妹がイジメられるようになったかは知らない。もしかしたら妹が悪いことをしたのかもしれない。けれど、それでも信じてやるのがお兄ちゃんの役目、いや、家族の役目だと思った。
これは過保護だと思われるかもしれない。だが俺にも言い分はある。
俺は妹と二人暮らし。なぜ親が住んでいないかって?
理由は家庭内暴力。いわゆるDVだ。
当時俺と妹は小学生だった。低学年の頃は優しかった父と母。仲の良い家族として近隣の人には有名だった。しかし、俺が小学四年になった時父がリストラにあった。
地獄はそこから始まった。
父親は会社を辞めせられた鬱憤を俺や妹で晴らした。母も同じく、パートの掛け持ちが増えたためにそのストレスを俺たちにぶつけるようになった。その時の俺らには抗う術がなかった。
俺は高校生になると、夜中にみんなが寝静まった頃を見計らって妹を連れ出した。
「お兄ちゃん、どこに行くの?」
「ここよりずっと遠い場所。高校に行くお金も全部俺が稼いでやる。」
そう言って俺が目指したのは、かつて母の祖母が暮らしていた家。この家は父がリストラされると同時に売りに出された。しかし、あまりにも駅から遠いこと、スーパーが自転車でも1時間かかるという立地に建てられていたためになかなか売れることはなかった。
俺は妹と逃げ出すために少しずつお小遣いを貯めていた。集まったお金は約100万円。父の口座から盗んだり、母の口座から盗んだりしたのが大半である。
犯罪であることはわかっている。けれどそんなのはどうでもいい。俺が捕まろうと知ったことか。俺はただ妹に普通の暮らしを戻してあげたいだけなのだ。
集まったお金を使って買っておいたこの家。残りは約30万程度だ。この家で暮らすからには俺が高校に通いつつ働く必要がある。その日から俺はバイトを始めた。
俺は引っ越した次の日に俺と妹の学校への編入手続きを行った。
そして今に至る。俺が高校2年へと進級、妹が新入生として俺の通う学校へと進学してしばらくしてからのことだった。
俺はこの世界を呪った。俺の妹に優しくないこの世界を。そして願った。こことは違う世界で2人で暮らすことを。
「どこか……遠い場所へ、誰も俺たちを知らない世界に行きたいもんだ。」
《その願い承りましょう》
なんだこの声、頭の中に響いてくる。
ガラガラっと音を立てて扉が開いた。そこには妹が立っていた。
「紫織?どうしてここに!」
「お兄ちゃん!どうしよう世界が……世界が止まっているよ!」
慌てて俺は窓の外を見た。飛んでいるはずの鳥が空で静止している。
《貴方達はこの世界が嫌いですか》
この声はどうやら紫織も聞こえているようだ。よく考える必要もない。俺はイエスと答えた。
《ではご案内しましょう、ようこそ新世界へ》
現実って生きづらいですよね。イジメを経験したりした人は誰しも考えたことがあるのではないのでしょうか?