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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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79 名付け

 アルジニア魔国が人類大陸を統一したのが千年前。


 そして、そのアルジニア魔国が滅びたのが四百年前である。


 滅亡期にアルジニア魔国は数十の国に分離、独立し、そこから百年をかけて、おおよそ今の三大国の礎が出来上がる。


 すなわち、


 アルジニア王国


 アルジニア聖国


 アルジニア帝国


 の三つである。


 三国はいずれも自国こそがアルジニア魔国の正当な後継国であると主張し、人類大陸の覇権をかけて相争っている。


 ◇


「弟子のネーミングセンスが酷い」


 そう言って、ヒューストームは自棄酒を煽った。


 ある時、二の村住民たちの間でアルジニア王国へと反抗する自分たちの隊名を決める話になった。


 そして、グレアムが出した案が「蟻喰いの戦団」である。


「森で見つけたからフォレストスライム、街で拾ったからタウンスライム、毒を持つから毒スライム、石の形をしているからロックスライム、そして蟻を退治するから"蟻喰い"か? おぬしのつける名前は安直じゃ。もう少しこう、何というか、ロマンあふれるような名前を思いつけんか?」


 毒スライムと名付けたのは俺じゃない。


 そう思いはしたが、他の名付けに関してはヒューストームの言う通りだった。


「ろ、ロマンなんかいらないんです。わかりやすい名前をつけることの方が重要なんですから」


 自分のネーミングセンスが酷いという指摘に少なくないショックを受けつつ、グレアムはそう反論した。


 システムやプログラム、リソースに付ける名前の重要性は元システムエンジニアとしてよく理解している。これらをよく考えもせずに名前を付けると後々になって響いてくるのだ。


 名前付けは重要。


 前世で部下に口を酸っぱくして指導してきた事柄に対して、尊敬する師に駄目出しされたことは少なくない衝撃をグレアムに与えていた。


「私はいいと思いますけど。『蟻喰いの戦団』」


 ミリーという少女がグレアムの案に同意する。


 彼女はグレアムが二の村に来た初日に、グレアムを庇って死んだ少年の妹で、年少組の副リーダーを務めている。


「他の案の『エターナル・フォース』とか意味がわからないし、『王国ぶっ倒し隊』だと直接的ですし、将来的にもイマイチな気がします」


「ミリーよ、それはないじゃろう。『フォース』は『軍』と『力』のダブルミーニングになっておってじゃな、そこに『エターナル』と合わせることで――」


「シンプルでいいじゃないか! 『王国ぶっ倒し隊』!」


 ヒューストームとオーソンが同時にミリーに反論する。


 二の村リーダー層のネーミングセンスは、五十歩百歩だった。


「ジャックスさんとドッガーさんはどう思います?」


「どうでもいい」


「好きにすればよい」


 ジャックスとドッガーは、それぞれ不具者組、老人組の副リーダーである。元衛兵のジャックスは銃を磨き、元彫金細工師のドッガーは銃の照準器の調整に余念がないようだった。


 結局、他に良い案も出なかったので、「蟻喰いの戦団」が多数決で採用されることになる。

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