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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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77 反乱8

「早く火を消せ!! 弓兵隊はこれ以上奴らを近づけさせるな!!」


 エイグが櫓の上から声が枯れんばかりに叫ぶ。


 第二次突撃隊が奴隷達が持つ謎の武器によって全滅させられた後、砦の防衛戦へと移っていた。


 城壁から五十メイルまで接近した奴等は、何かの液体が入った壺を投げてきた。


 砦の上で狙い撃たれたその壺は爆発し、燃える水が大量にエイグたちの頭上に降り注いだ。


 エイグは消化活動を指示し、一方で下げていた弓兵たちを城壁上に戻し奴隷達を攻撃させる。


 弓で撃っている間は、あの壺は飛んでこなかった、だが――


「隊長! ジバとナバランがやられた! シオメットもだ!」


 城壁の屋上部は凹凸上の壁面が並んでいる。弓兵隊は弓を射る時、壁面から顔を出すのだが――


 バシュ!


 また一人、その瞬間を狙い撃たれ城壁から落ちていく。


「くっ! 攻撃を続けろ!」


「だが――」


「一の砦から援軍が来るまでの辛抱だ! 見ろ! 奴らも、あれから一歩も動けていない! 奴らはこの砦を攻めあぐねているんだ! 守っていれば勝てる!」


 エイグはそう叱咤するが、部下は納得がいかないようだった。


 奴隷達の武器も砦の厚い石壁には効果は薄いようだったが、城壁の扉は金属で補強しているが木製である。


 奴等なら燃え破るのは容易に思えたが、奴隷達はあえてそうせず、城壁上の弓兵を攻撃している。


 無理に力攻めせず、こちらの戦力を削ることを目的としているのは明白だった。


 この無為で一方的な防衛戦が始まって、かれこれ一刻近くが経過している。


「砦を放棄しては!?」


 いかに奴隷達の武器が強力でも、魔物の侵入を拒み続けた強固な城壁の扉を破るには時間がかかるだろう。逃げる時間は充分にあると思えた。


「馬鹿を抜かせ!! 奴隷相手に逃げたと知られれば今後の俺達に出世の芽はないぞ!!」


 そんなものはとっくの昔に無くなっていると部下の一人は思う。三十人の奴隷相手に百人以上の味方が死亡。大陸に行ってもエイグの名で雇う者はいまい。


「いいか! 今、一の砦から二百の精鋭が全速でこちらに向かっている! そいつらと合流して全員で突撃すれば今度こそ奴隷どもはお終いだ!」


 栄達を望むエイグも自分の窮状は理解している。だからこそ、奴隷達を皆殺しにしてあの武器を手に入れる必要があると考えていた。


 あの武器を手に戦場に赴けば、エイグの汚名など瞬く間に吹き飛ぶことだろう。


 だが、エイグの傭兵団は防衛戦を苦手としていた。エイグの得意戦法は『戦気高揚』で部隊の士気を高め、敵に突撃する。単純だが戦果は大きかった。同時に被害も。


 七年前、勇猛果敢で知られるエイグの傭兵団はとある戦で大きなダメージを受け、エイグ自身も傷を負った。


 300名近くの傭兵団の立て直しが必要だった。そこで降って湧いたのが、このブロランカ島での仕事だった。仕事内容に不満は無かった。ディーグアントという未知の魔物は多少気になったが、奴隷どもを食べて動けなくなったところを処理するだけなので危険は少ない。


 奴隷達の反乱は頭にあったが、奴隷の数は少なく武器は与えていても防具は与えていない。反抗してもすぐに鎮圧できると考え、事実そうだった。そしてそれは良い戦闘訓練にもなった。とはいえ反乱を度々許していては餌になる奴隷がいなくなってしまう。


 そこでエイグの提案で獣人の奴隷を家族付で買うようにした。獣人は家族の絆が深い。家族を人質にすれば言うことを聞いた。


 そうしてエイグは島で傷を癒しつつ、島の内外から新規団員を募って戦力の拡充を図る。


 その努力は実り、団員は500名を超えた。そして来年、契約の終了と共に大陸に戻り、戦場に華々しく返り咲くつもりである。


 そのつもりであった。

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