74 反乱5
鬼から逃げた先に悪魔がいた。
つまり、ここは地獄か?
ソーントーンの屋敷から海に飛び込み意識を失って、次に目を覚ました時に最初に思ったことがそれだった。
リーの目の前にはあのガキがいる。リーの部下を皆殺しにした小人族の暗殺者だ。成長していても自分にはわかる。喚いて醜態を晒さなかった自分を褒めてやりたい。
(……なぜ、成長しているんだ?)
小人族は幼児の姿で成長は止まる。だが、あの暗殺者の面影を持つ男は十代半ばのように見えた。
(もしや、別人か?)
その期待は相手の言葉で脆くも崩れ去った。
「お久しぶりです。僕を覚えていますか? ムルマンスクでーー」
「忘れるわけねぇだろ。おまえみたいなヤバい奴をな」
上体を起こすリー。まな板に乗せられているような気分になるので寝ていたくなかった。
(?)
なぜかソーントーンに開けられた胸は綺麗に塞がっていた。
「こいつはおまえが?」
「ええ。応急処置はあなたを浜辺で見つけた村の子供がやってくれました。それがなければ死んでましたね」
「そうか。礼を言わなきゃな。そのガキにもな」
必死の努力で平静を装っているがリーの心臓は早鐘を打っていた。
目の前の小人族(?)の男は四年前よりも遥かにヤバい奴になっていた。
リーの『危機感知』スキルの警告は
"!? くぁwせdrftgyふじこlp!!"と意味不明な叫びを発している。
相変わらず何を考えているかわからない顔だが、小人族(?)の男がリーを警戒しているのは明らかだった。なぜ、おまえがここにいるのかと。
この男がその気になれば、リーはすぐに殺されるだろう。リーには正直に話す以外の選択肢はなかった。