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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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70 反乱2

 ブロランカ島の北部と南部を繋ぐ二本の道は長年、魔物と人間によって踏み固められ自然にできたものだ。


 整備されてできたものではないため、木の根や岩、大きな窪みが所々に存在する。


 それでも生贄奴隷たちの村が作られてからは、荷車が通れるぐらいには手が入れられている。


 村からディーグアントを運ぶため、あるいは食い物を村に運ぶためである。


 村から南に下れば大きな道に合流する。この道を北に行けば北部の森、さらに南に下れば石造りの砦が見えてくる。


 魔物の南部への侵入を阻むために建てられたその砦は、現在、エイグが率いるブロランカ島防衛部隊の詰所の一つとなっている。


「なに? 二の村の奴隷たちが?」


 報告を受けたエイグは砦の城壁に立ち、北に伸びる道を見る。


 二の村の奴隷、ほぼ全員がカーキ色の見慣れぬ服に身を包み、何か棒らしき物を持っている。


「ありゃ何だ?」


「さあ?」


 隣に立つ部下が心底わからないといったアホ顔で答える。


「おい、おまえちょっと行って村に戻るように言ってこい」


「へ!? あっしですか?」


「そうだ。さっさと行け」


 察しの悪い部下にエイグはイライラする。


 ここ最近、南部にディーグアントが出没し被害が出ていることでソーントーンや家令のジュリアに突き上げを食らったばかりだ。


 人的被害は出ておらず、襲われたのは牛や豚などの家畜だけだが、南部に出没したディーグアントは未だ討伐されていない。


 風向きや天候によってはディーグアントが二の村に行かず砦に来ることはわずかながらあった。


 だが、南部まで侵入されたのはこの実験が始まってから初である。それも一匹だけでなく、かなりの数に侵入されているようだった。


 ソーントーンは止むを得ず、実験が始まる前からある防備の整った村や港町のサラマに領民を避難させた。


 もうすぐ収穫期となる。それまでにディーグアントの討伐と、どこから侵入したかの解明を求められている。


 くそ忙しい時に生贄奴隷なんぞに手を煩わされたくなかった。


 アホ顔の部下が砦から出る。奴隷たちのもとに駆け出した瞬間ーー


 プシャ。


 アホ顔の頭がスイカのように弾け、飛び散った赤いものが砦の壁を染め上げた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なるほど、これはひでぇ」


 "銃"を構えるリーは、頬に流れる一筋の汗を拭いもせず、そう誰にともなく呟いた。


 銃は歪で細長い三角形のような台座を持ち、台座の底辺部分を肩に当てて固定する。台座の上には魔杖が設置され、杖の先端から<炎弾(フレイムバレット)>の魔術が飛び出す仕組みだ。


「おまえら、なんてもんを作りやがる。こんなもんが普及すれば戦争の常識が変わるぞ」


 リーに魔術スキルはない。なのに魔術が使えた。それはここにいる生贄奴隷の老人や子供たちも例外ではなかった。


 狙いをつけ、引き金を引くだけで誰でも魔術が使えるのだ。


 リーは並べられた"銃口"の前に立つ自分を想像しゾッとした。

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