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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
83/440

66 交渉2

 "領民全員が死んでも構わない"


 その短くも冷徹な意思にティーセは息を飲んだ。


「……そ」


「ただ、誤解してもらいたくないが、別に俺はブロランカの領民を恨んでいるわけじゃない」


 何か言おうとしたティーセの言葉に被せるようにグレアムは続けた。


「領民から石を投げられたとか、食い物を取り上げられたとか、そういうことをされたわけでもないからな」


 そもそもソーントーンは生贄となる奴隷と領民の接触を原則禁じていたので、奴隷と領民の間に直接的なトラブルが起きることはなかった。


「じゃあ、どうして?」


 どうして領民を見捨てるようなことを言うのか?


「俺たちはこの島で最底辺の存在だ。その最底辺が自分たちより恵まれた存在を救う。スジが通らないと思わないか? 領民を助ける義務と責任はまずソーントーンが果たすべきなんだ」


 奴隷は"労働"を搾取される存在だ。だが、一方的に奪われるというわけでもない。少ないながらも給金は支払われるし、犯罪奴隷でなければ、いずれは解放もされる。少なくとも王国の法では。


 だが、生贄奴隷は命を搾取される。命を奪われればいかなる対価も無意味だ。生贄奴隷は労働奴隷よりも酷い存在といえる。


「俺たちの価値は豚や鶏と同じ。人の腹に入るか、蟻の腹に入るかの違いでしかない。そんな俺たちに彼らを救えというのはスジが違う」


 ブロランカの領民は生贄奴隷の存在をいない者として扱う。いわば、人として扱われないのだ。人未満の存在が人を救うなど笑い話だ。


 グレアムの言葉にティーセは何も反論できなかった。一の村の住民の絶望に染まった目を見てきたティーセにはグレアムの言葉がストンと胸に収まってしまったのだ。


 ティーセの目から涙が溢れる。

 ただ、悲しかった。

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