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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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58 進化3

「巣穴から出た蟻は、伐採のため森に散開する。この時に風に運ばれたカダルア草の匂いに釣られて、一部の蟻が引き寄せられる。村やドラゴンの元にな」


 そして、他のディーグアントは伐採した枝葉を持ち帰るのだ。


「まだ信じられない。魔物が農業をするなんて。この白いのがディーグアントの主食なら、他の魔物や人間を襲って食べるのはおやつというわけ?」


「そんなところだろうな。雑食みたいだし。そしてそれが問題なんだ」


 グレアムは手に持っていた枝を捨てると、ディーグアントに跨り再び走らせた。


 主道に戻る途上で、ティーセが今まで見たことのないタイプのディーグアントとすれ違う。


「今のは?」


 姿形はワーカーだがサイズが小さい。ティーセが両腕で抱えて持ち上げることができるサイズだった。


「ディーグアントの幼体だ。一定量の餌を取ると見知ったサイズに変態する」


「今、すれ違ったのは、さっきの部屋に食事に行ったわけね」


「ああ」


「……すごいわね」


「同感だ。伊達に竜が蔓延る大陸で生き延びてきたわけじゃないということだな」


「私が言ってるのはあなたのことよ。宮廷の魔術師顔負けの治癒魔術に、魔物を意のままに操る手段と見識。あなた本当に何者なの?」


「ヒューストーム師匠の弟子さ」


「うそ。ううん。確かにそうなのかもしれないけど、それだけじゃないはず。そうでしょ?」


「そうは言ってもな」


 グレアムは肩を竦めた。


「いいわ。あくまでシラを切るというなら、せめてあなたのスキルを教えて」


 ティーセの質問にグレアムは平然と答えた。


「『スライム使役』」


「それこそ嘘。『スライム使役』だけで治癒魔術が使えるわけないわ」


「嘘じゃない。ソーントーンの家令に問い合わせればすぐにわかるさ。この島に連れてこられた時、改めて鑑定したからね」


 グレアムはそう言うと、ディーグアントの速度を緩めてタウンスライムを見せた。


 グレアムの手の平の上で様々に形を変えるスライムを見て、ティーセはため息を吐いた。


「訳がわからないわ。説明してくれる……わけないわよね」


「ああ、悪いがそれは企業秘密だ」


「……わかったわ。命を助けてくれた恩もあるし、もう聞かない。だけど、あと一つ教えて。王国に仕える気は無いの?」


「仕官しろと?」


「ええ、あなたなら厚遇されると思うわ」


「実力を隠さなければな。俺はこの力をなるべく秘密にしておきたい。それに……」


 グレアムはそこで言葉を止めた。また、余計な事を言いそうになったからだ。


「……お父様に仕える気にはなれないということね」


 だが、ティーセは核心を言い当てた。


「すまないがそうだ。誰かに仕えるのはいいが、せめて雇い主は選びたい」


「謝らなくてもいいわ。気持ちはよくわかるから」


 ティーセはそう言うと寂しそうに笑った。

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